陸上自衛隊と米陸軍及び米海兵隊による日米共同訓練は、毎年かなりの回数が行われています。
例えば、米陸軍との「オリエントシールド」や米海兵隊との「レゾリュートドラゴン」、「フォレストライト」、米本土で実施している「ライジングウォーリア」などなど、いずれも定例化しており、基本的に毎年開催されております。
これら訓練に陸自から参加する部隊は、その都度異なります。
そんな中において、日本版海兵隊こと水陸機動団と米海兵隊により毎年行われているのが「アイアンフィスト(Iron Fist)」です。略して「IF」と表記します。
ヘリボーン訓練には、CH-53Eスーパースタリオンも使われた。
遡ると、水陸機動団の前身となる西部方面普通科連隊が担当する訓練でした。
冷戦終結とともに、世界はテロや地域紛争の時代に突入します。そんな中で、アジアでは、中国が覇権主義的海洋進出を進めていき、南シナ海や東シナ海を自分たちのテリトリーであると主張し始めていきます。
日本も尖閣諸島を筆頭とした南西諸島部が奪われる事態となってしまいました。これに対抗するため、陸上自衛隊は、2000年頃より、島嶼防衛強化を打ち出しました。そのひとつの手段として、2002年3月に西部方面普通科連隊を新編したのです。敵が侵攻した島々へと渡り、ゲリラ戦を展開して奪還するという陸自初となる部隊です。
しかし、日本には、海から島へと渡る水陸両用戦のノウハウがありません。そこで、ゼロから米海兵隊に学ぶ道を選びました。
こうして、2005年より日米共同訓練「アイアンフィスト」がスタートしました。米本土にあるキャンプペンドルトン(カリフォルニア州)及び周辺の演習場等にて、第1海兵機動展開部隊とともに訓練をしつつ、水陸両用戦を教えてもらうことになりました。
それは、迷彩服や装備を身に着けたまま泳ぐ「着装泳」や「ボート操法」など、米海兵隊にとって基本の「き」である戦術から始まり、水陸両用車AAV7やMV-22Bオスプレイを使った着上陸訓練へと、年々ステップアップしていきました。
こうして2018年に水陸機動団が創設されたのです。
引き続き、さらなる戦術技量の向上のため、「アイアンフィスト」は続きます。ですが、2023年より、日本国内で開催されていくことになりました。
こうして日本開催第1回目となった「アイアンフィスト23」は、2023年2月16日から3月12日に渡り実施されました。
訓練の舞台となったのは、まさに水陸機動団が守るべき九州・沖縄エリアです。これまで第1海兵機動展開部隊がお相手となっていましたが、在沖米海兵隊である第3海兵機動展開部隊へと代わりました。
さらに、より島嶼防衛強化を図るため、第1空挺団も新たに加わることになりました。
様々な訓練が行われていく中、2月18日に日出生台演習場(大分県)で行われたヘリボーン訓練が公開されました。CH-53EスーパースタリオンやMV-22Bオスプレイを使い、米海兵隊員が「日出生台島」へと進出していきます。
水陸機動団もV-22を使い高遊原分屯地から展開してくる予定でしたが、天候不良で取りやめとなりました。そこでAAV7を使い「日出生台島」へと着上陸してきた部隊が、米海兵隊と合流し、島にいる敵を制圧していきました。
そして訓練の舞台は実際の南西諸島部へと移っていきます。(後編へ続く)