昨年度から今年度末にかけて、大改編を実行中の第3師団(千僧駐屯地:兵庫県伊丹市)は、近畿2府4県の防衛警備を担当し、首都圏に次ぐ重要な経済圏を守る重要部隊です。
昨年度末(2023年3月)には、74式戦車を配備する第3戦車大隊が廃止になりました。これは、現在陸上自衛隊が断行している全国に15個ある師団及び旅団改革のひとつです。
それは、沖縄エリアを防衛警備する第15旅団を拡大改編し、がっちりと防衛警備する体制を構築し、残り14個の師団及び旅団を機動化していくというものです。
第3師団については、もともと地域配備師団としての改編計画があったのですが、さらに機動師団に匹敵する即応機動力をも求められることになりました。
第3戦車大隊は消滅したものの、第3偵察隊と統合し、新たに第3偵察戦闘大隊が新編されました。同隊は、本部及び本部管理中隊、そして旧第3戦車大隊を前身とした戦闘中隊、旧第3偵察隊を前身とした偵察中隊という編成になります。戦闘中隊の主たる装備となるのが、16式機動戦闘車です。
2023年3月16日、今津駐屯地(滋賀県高島市)にて編成完結式を執り行い、新しい隊旗が授与され、第3偵察戦闘大隊は正式に発足しました。
第3師団の中核となるのが、第7、第36、第37普通科連隊だ。この3個普通科連隊も堂々たる行進を見せてくれた。
こうして生まれ変わった新生第3師団が、初めて一般公開されました。
それが、5月21日、千僧駐屯地(兵庫県)において執り行われた第3師団創立62周年及び千僧駐屯地創設72周年記念行事です。第3偵察戦闘大隊についても師団としてのお披露目はこの時が初めてでした。しかしながら、先んじて、4月に信太山駐屯地祭等で第3偵察戦闘大隊及び16式機動戦闘車は公開されております。
観閲行進では、他の師団隷下部隊とともに、第3偵察戦闘大隊が行進していきました。
昨年まで74式戦車が行進していたあの場所で、今年は16式機動戦闘車が威風堂々としていました。来場者のお目当ても、やはりこの新装備だったようです。“元祖”装輪戦闘車でもある87式偵察警戒車や82式指揮通信車もしっかりと脇を支えていました。
16式機動戦闘車の初お披露目にふさわしく段ボールの壁を突き破って登場するド派手なデモンストレーションも行われ、その後、高速でありながらも滑らかに走りまわる姿を見せてくれました。
訓練展示は、一連の戦闘状況を分かりやすく見せてくれました。前進する普通科連隊を火力支援するのは、第3特科隊の155㎜りゅう弾砲FH70です。実は、第3師団最後の改編となるのが、この第3特科隊の廃止です。
しかしながら、後方地域から射撃し、最前線で戦う部隊の頭上を飛び越え、敵の最前線へと砲弾の雨を降らすことが出来る野砲は、戦術上欠かすことができません。ウクライナ情勢を見ても、ウ露軍双方において、火砲やロケット砲などを扱う野砲部隊の火力支援が戦局を左右しています。そこで、第3特科隊なき後、この任務を引き継ぐことになるのが、中部方面隊直轄の中部方面特科隊(松山駐屯地:愛媛県松山市)となります。
こうして、FH70の火力支援を受けながら、16式機動戦闘車などが敵を叩き、見事勝利を収めたところで訓練は終了となりました。
みなさまも今回を機に改編過渡期にある第3師団にご注目頂き、新生第3師団を応援していきましょう。