偵察のみならず、攻撃を行うこともできるドローンは、現代の戦争では欠かせない戦力です。その攻撃方法も、爆弾を投下するだけでなく、目標に向けて突っ込んでいく自爆型もあり、狙った獲物は逃さない恐るべき兵器ともなっています。
ウクライナ情勢を見ても、ウ露両軍はドローンを使って戦っており、まさに戦場のゲームチェンジャーとなりました。
陸上自衛隊では、海空自衛隊に先駆けて、情報収集用に各種ドローンを配備しました。
そして空自もRQ-4Bグローバルホークの配備を決め、2022年12月15日、初の無人偵察機部隊である「偵察航空隊」が発足し、同機を3機配備しました。
遅ればせながら、ようやく海自も無人機導入を決めました。
しかし、即配備という形は取らずに、まずは試験運用を行います。選ばれたのは、MQ-9B「シーガーディアン」です。
この機体は、米軍が運用する偵察及び攻撃型無人機MQ-9リーパーをベースとしており、基本的にシルエットは同じです。24.08mもあるかなり長い特徴的な翼を有し、レーダーやセンサー類が収められた機首は丸みを帯びていて愛らしくもあります。
その機首下部には、可視赤外線カメラが搭載されており、富士山ぐらいの高さから地上を走る車を撮影しても車種が特定できるほどの高解像だそうです。全長は11.8mあり、その胴体の後部側にエンジンを配置してます。下にある大きなふくらみは海洋監視用レーダーです。そして、お尻の部分に推進力を得るためのプロペラがあります。
海自は、「シーガーディアン」を本採用したわけではありません。2023年5月9日から2024年9月までの間、約2000時間の飛行を行い、さまざまなデータを収集し、実用化できるか検討します。具体的には、1回6~24時間程度の飛行を週2回行っていくそうです。拠点とするのは八戸基地(青森県)です。
実は、海自よりも一足早く、海上保安庁が「シーガーディアン」の配備を決め、2022年より2機配備しました。早速パトロールに用いています。その拠点となっているのも八戸基地です。今後、海自と海保で情報共有していく考えも明らかにしています。
運用方法も実に画期的です。現在は、第51航空隊に編成されている調査研究隊無人機作業室が運用部隊となるのですが、実際に運航するのは「シーガーディアン」の開発製造元であるGA社のスタッフとなります。
海自側は指示を出し、それに対し、民間企業が保有する機体を民間企業が運航するという「Co-Co(Company Owned Company Operated)」方式というこれまでの海自にはない方法で運用します。
あくまでパトロールを専門に行い、戦闘は考えられていませんので、民間企業でも問題ありません。万が一攻撃されるような事態となっても、人的被害も出ません。海自側はあくまで情報だけを受け取る形となります。
八戸基地の第1格納庫内にSGOC(Sea Guardian Operation Center)があります。プレハブ型の白い大きな建物です。海自と海保それぞれの区画に分けられています。
中には、シーガーディアンの操縦を行う地上管制ステーションGCS(Ground Control Station)があります。操縦席が2つあり、モニターを確認しながら、衛星通信を用いて遠隔操縦します。ここで直接操縦するのは民間人となります。
そして運航を管理する民間側のMOS(Mission Operator Station)と海自側のMIS(Mission Intelligence Station)が向かい合わせに配置されています。集められた情報を分析するのが海上自衛官となるわけです。
将来的にP-1及びP-3Cといった哨戒機で行っている警戒監視任務の一部を無人機に任せようと考えています。これにより、哨戒機の機数を大幅に減らすことができます。またそれに関わる人員も削減することもできます。
いずれ、日本の領海内をパトロールするのは無人機だけという時代が来るのでしょう。