2023年6月24日、北千歳駐屯地において、第1特科団創隊ならびに北千歳駐屯地開庁71周年記念行事が行われました。
この日の主役である第1特科団は、北海道全域の防衛警備を担当する北部方面隊直轄の野戦特科部隊です。“特科”という単語からは、どんな部隊か少々分かりづらいですが、大砲やロケットなどを扱う職種であり、旧軍でいうところの砲兵にあたります。
今、第1特科団は大きく変わろうとしており、“新生”の象徴として、古き装備が引退しようとしています。
それが203㎜自走りゅう弾砲です。
1950年代にアメリカで開発されたM110がベースです。日本はM110A2の採用を決め、1983年から国内でライセンス生産を開始しました。
巨大な砲が装軌式の車体の上にドンと置かれた武骨なデザインは、他の自走砲にはない特徴です。隊員たちは、その砲の脇に座って移動するというスタイルもなかなかユニークで、見た目の渋さからファンも多かった装備です。
寄る年に波には勝てないばかりか、特科火砲の削減計画もあり、徐々に数を減らしていき、現時点で運用しているのは、第1特科団第4特科群の第104特科大隊のみとなりました。
しかし、今年度末(2024年3月)をもって、すべて引退することが決まりました。それも部隊ごとです……。
第1特科団では、歴史的な大規模改編を断行している最中なのです。
第1特科団は、団本部及び団本部中隊、第1特科群、第4特科群、第1~第3地対艦ミサイル連隊、第301観測中隊という編成となっています。
この中で第4特科群が廃止になります。
第4特科群には、群本部及び群本部中隊、そして203㎜自走りゅう弾砲を配備する第104特科大隊、MLRSを配備する第131特科大隊が編成されていますが、前述の通り、第104特科大隊が廃止され、第131特科大隊のみが残ります。
しかし、その第131特科大隊は、第4特科群から第1特科群へと編成替えをして新たなスタートを切ります。これにより、第4特科群からすべての部隊はなくなり、部隊廃止となるわけです。
一方、第1特科群には、群本部及び群本部中隊、MLRSを配備する第129特科大隊が編成されています。ここに、第131特科大隊が加わり、結果的にMLRS部隊を集約することとなりました。
さらに、2023年3月16日、第3地対艦ミサイル連隊に第305地対艦ミサイル中隊が新編されました。そして2024年3月には、第1地対艦ミサイル連隊に第306地対艦ミサイル中隊が新編されます。
両部隊は、陸上から洋上を航行中の敵艦艇を攻撃できる88式地対艦誘導弾が配備されています。今後、この後継として新たに開発中の国産スタンドオフミサイルの配備が検討されています。これから我が国を守る上で非常に重要な部隊となる模様です。もしかすると、3桁のミサイル中隊を集約し、スタンドオフ部隊が新編されるかもしれません。
さて、今回の記念行事では、変わりゆく第1特科団がテーマとなりました。
それを象徴するように、第1特科団長かねて北千歳駐屯地司令・中村雄久陸将補は、203㎜自走りゅう弾砲に乗って会場入りを果たしました。通常部隊指揮官の入場は、黒塗りの車両が使われることが多い中、異例の登場となり、会場を大いに沸かせました。
そして各部隊による観閲行進が行われていきます。人員585名、車両70両が、威風堂々と来場者の前を通り過ぎていきました。
最後に、203㎜自走りゅう弾砲による別れの空包射撃が行われました。
胸に響く重低音、空気を伝わる振動は、まさに陸自最大火砲だからこその迫力でした。