菊池雅之のミリタリーレポート
創立15年を迎えた第11旅団


第11戦車隊(戦車大隊時代を含め)が配備してきた戦車には、砲塔に必ず「士魂」と書かれている。

北海道を防衛警備する北部方面隊の中において、道央及び道南を担当するのが第11旅団です。司令部を真駒内駐屯地(札幌市)に置き、北海道の政治・経済の中枢である札幌市を中心に56個もの市町村を守る重要な任務に携わっております。

第11旅団が新編されたのは、2008年3月26日のこと。よって、2023年の今年は創立15周年の節目を迎えました。

前身となるのが、1962年に新編された第11師団です。この部隊を縮小し、現在の第11旅団が誕生しました。また、司令部を置く真駒内駐屯地の歴史はさらに古く、1954年に開庁しています。

記念行事の開始を前にして観閲台前には国旗が掲揚される。君が代が流れる中厳かに国旗が昇っていく。

第11旅団の打撃力の中核となるのが、第11戦車隊です。師団時代は第11戦車大隊でした。90式戦車を配備し、北恵庭駐屯地(恵庭市)に部隊を置いています。この部隊の90式戦車は、砲塔に「士魂」と書き込まれています。

部隊番号である「11」を漢数字で縦に書くと「士」と読めることから、「サムライ魂」としたのです。その勇ましさから第11戦車隊は陸自ファンの人気が高い部隊でもあります。

第11旅団は、2019年に機動化改編し、新たな部隊を迎えました。それが第10即応機動連隊です。

整列していた隊形から観閲行進のための準備にかかる。各部隊が会場を駆け足で後にする。

それまで滝川駐屯地(滝川市)に所在していた第10普通科連隊を母体として新編されました。そして新装備である16式機動戦闘車を配備しました。

他の機動師団及び旅団では、即応機動連隊の新編とともに、戦車部隊を廃止する流れが出来上がっていましたが、第11旅団は、前述の第11戦車隊を残しました。よって、戦車と16式機動戦闘車が共存する初の機動旅団となったのです。

第52普通科連隊による行進。軽装甲機動車や高機動車が走り抜けていく。

これは、仮想敵であるロシアが、今も戦車を中心とした機甲戦闘大隊編成で戦うことが大きな理由です。そんなロシアが北海道へと侵攻してくるとなれば、こちらも戦車で対抗しなければなりません。

一見戦車にも見える16式機動戦闘車は、残念ながら打撃力では戦車にはかないません。そこで、北海道では、戦車部隊が残ることになりました。

訓練展示における敵役は第18普通科連隊が務めた。ヘルメットに赤いテープを巻いている。

かくして、2023年6月26日、真駒内駐屯地において、創立記念行事が行われました。

第11旅団の各部隊の車両や人員が観客の目の前を行進していきます。その中には前述の第11戦車隊や第10即応機動連隊ももちろん含まれ、90式戦車や16式機動戦闘車がうなりを上げて通過していきます。

会場を縦横無尽に走り回る第10即応機動連隊の16式機動戦闘車。この即応力、機動力は陸自の戦い方を変えた。

なお、2023年3月26日に新編されたばかりの第11情報隊も参加しました。この部隊は、無人偵察機「スキャンイーグル」を配備しています。

訓練展示においも、やはり90式戦車が大活躍を見せていきます。16式機動戦闘車と連携しながら、徐々に敵を追い詰めていきました。

大都市である札幌からも近いため、例年多くの来場者で賑わいます。ましてや今年は晴天にも恵まれ、より多くの市民が訪れたようです。

第11戦車隊の90式戦車と第10即応機動連隊の16式機動戦闘車による共闘。このコラボレーションが見られるのも真駒内駐屯地記念行事ならでは。
  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

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