観葉植物を飾りたいけど手間がかかりそう……。そんな人にこそおすすめしたいのが枝物(エダモノ)だ。花木の枝や葉を草花のように飾るもので、花や実がついた枝もありその種類は季節によりさまざま。1本でもボリュームがあり、シンプルなフラワーベースに挿すだけで部屋の雰囲気をガラリと変えられる存在感がある。今回は、公私ともに枝物を愛してやまない『青山フラワーマーケット』たまプラーザテラス店 店長の緒方渉さんに聞いた。
写真と文/パンチ広沢
都会暮らしでも自然の中の芽吹き、新緑、紅葉まで感じられる枝物
粋な和食店やレストラン、オーセンティックなバーでもよく見かける枝物。見事な枝ぶりなので拙宅の狭いリビングには不釣り合いだと思っていたのだが、生花店には多種多様の枝物が豊富に揃っている。「店で常時取り扱っていますが、自宅でも普段から枝物を飾っています」という緒方さんに、店舗へお邪魔して枝物の魅力を聞いてみた。
「枝物の魅力は、やはり芽吹き、新緑、紅葉まで季節を感じられるところですね。人工物では表現できない枝の曲線美や、実のついた枝なら葉と実の色彩の変化も楽しめます。枝物にもいろんな種類があるので、季節や形などからまずは好きなものを飾ってみてください。基本的には花瓶に差しておくだけでいいですし、ものによっては切花よりも比較的日持ちがするんですよ」。
枝物好きの緒方さんが店長を務めているせいか、『青山フラワーマーケット』内でも枝物の種類を豊富に取り揃えているたまプラーザテラス店。店内のディスプレーを見せてもらうと、取材当日は秋の枝物が多数入荷されており、なかには紅葉しているものもあってなかなか趣深い。しかも、1本数百円から高くても2000円程度。1本でサマになるならブーケや鉢植えの観葉植物よりお得感もある。これは植物に詳しくない人こそ取り入れやすいかもしれない!
部屋に枝物を飾って四季を感じる。なんて風流なんだ!
とはいえ、どれを選べばいいかわからない。「まずはパッと見て好きなものを選ぶのがいいんじゃないでしょうか。お花と同じで枝物にも旬があるので季節で選んでもいいですし、長く飾っていく間に花の蕾が開いたり、新芽が成長するとか、葉が紅葉していくなど日々変化していくのを見るのも楽しいですよ」。
緒方さんに好きな枝物を尋ねると「アオモジ、ツルウメモドキ、姫リョウブは特に好きですね」と答えてくれた。
なお、季節ごとの代表的な季節の枝物は以下の通り。
【春】
桜、梅、ミモザ、桃、コデマリ
【初夏~夏】
ドウダンツツジ、スノーボール、スモークツリー、ブルーベリー
【秋~冬】
紅葉ドウダンツツジ、シンフォリカルポス、バラの実、ヤシャブシ、ユーカリ、ロシアンオリーブ
秋は1年のうちでも個性的な枝物が揃う時期だ。「枝の流れが面白い『雲竜柳』は料亭などでも重用される品種ですし、実がかわいい『バラの実 センセーショナルファンタジー』などは和室に合うと思います」と、緒方さんは話す。
「男性に人気のシルバー系は『ユーカリ・ポポラス』、『オリーブ』、紅葉を楽しみつつ実もついてより季節感を強調する『紅葉ヒペリカム』は、どんなシチュエーションにも合う万能さがあります」。
どれも表情豊かで、部屋に飾ったらほっこりさせてくれそうだ。
枝物を買ってきたらすぐ下処理。これだけは必須!
続いて手入れ方法についても触れていこう。枝物は水が濁ってきたら変える程度で、毎日の世話が必要ないのがいいところ。ただし、買ってきた当日は下処理が大切だ。「枝が水に浸かる部分の葉を切り落とし、底の切り口にハサミで縦に十字の切り込みを入れてください。これは枝が水を吸いやすくするためです」と、緒方さんが実践してくれた。
買ってきた当日はたっぷり水を吸うので花瓶の4分の3くらい水を入れる。そうすると重石にもなり、花瓶の転倒を防ぐこともできる。それから飾り方にもポイントがある。
「枝には“顔”があるんですよ。これはフローリスト用語なのですが、つまり、表と裏があるんですね。やはり、表を正面にして飾っていただいた方がいいです」。
お気に入りの枝物を飾れば、自然の風景を切り取ってきたかのよう。いつもの部屋に1本の枝物を飾るだけで、きっと生活にも潤いを与えてくれるだろう。
青山フラワーマーケットたまプラーザテラス店
「Living With Flowers Every Day」をコンセプトに、花や緑に囲まれた心豊かなライフスタイルを提案するフラワーショップ。日本各地はもちろんのこと、パリとイギリスにも店舗を展開する。
神奈川県青葉区美しが丘1-1-2 たまプラーザテラス1F
10:00〜20:00
不定(施設に準ずる)