菊池雅之のミリタリーレポート 陸自オスプレイ飛んだ! 木更津駐屯地祭


陸自のV-22は、米海兵隊とは違い機体全体を灰色と白、機体上部を濃紺と独特なカラーリングとしているのが特長。

木更津駐屯地(千葉県木更津市)は、東京湾に面した陸上自衛隊の航空拠点です。ここには、陸上総隊直轄の陸自最大の航空部隊「第1ヘリコプター団」が配置されています。

同部隊には、大型輸送ヘリCH-47JAチヌークを配備する「第1輸送ヘリコプター群」や内閣総理大臣をはじめとした政府要人等VIP輸送を行う「特別輸送ヘリコプター隊」、特殊部隊たる特殊作戦群の輸送を専門に行う「第102飛行隊」、固定翼機LR-2を配備する「連絡偵察飛行隊」などが編成されています。

部隊名に“ヘリコプター”を冠していますが、固定翼機も配備されており、多種多様な機体を取り扱っているのが木更津駐屯地の特長です。

木更津航空祭名物、第1ヘリ団所属機による異機種大編隊。会場上空を観閲飛行していく。

ここに新たに2020年より加わったのが「輸送航空隊」です。この部隊は島嶼防衛専門輸送部隊とも呼ばれており、陸自で唯一V-22オスプレイを配備しています。

「輸送航空隊」を細かく見ていきますと、隊本部及び本部管理中隊、第107、第108、第109飛行隊、輸送航空野整備隊という編成です。この中の第107、第108飛行隊がV-22部隊です。そして第109飛行隊のみがCH-47JAチヌークを配備し、高遊原分屯地(熊本県上益城郡)に配置されています。

ひとつの部隊がここまで離れた場所に部隊を配置してるのには理由があります。実は、V-22部隊の木更津駐屯地への配置は、あくまで暫定的なものなのです。早ければ2025年に開庁する佐賀駐屯地(佐賀県佐賀市)に移駐します。佐賀空港に隣接しており、滑走路を共有する官民共用使用の予定です。

特別輸送ヘリコプター隊のEC-225LP。そして第1輸送ヘリ群と輸送航空隊の第109飛行隊に配備されているCH-47JAチヌーク

もともと輸送航空隊は、最初から佐賀駐屯地に配置する計画でした。しかし、地元の理解を得られず、佐賀駐屯地の建設工事が出来なかったのが真相です。しかし急ぎ部隊新編の必要性があったので、ひとまず木更津駐屯地で編成完結したというわけです。

ちなみに陸自では、オスプレイの機首記号「V」に因んでヴィーナス、または略して「ヴィ」との愛称で呼んでいます。

観客の前の間をタキシングしていくV-22。陸自ではヴィーナスと呼んでいる。

このような特長ある木更津駐屯地において、2023年10月1日、「駐屯地創立55周年記念第49回木更津航空祭」が行われました。コロナ禍に入り、中止となったり、関係者のみの小規模開催となったりと、基本非公開で行われてしまい、フルスケールでの航空祭は実に5年ぶりとなりました。

これまで「輸送航空隊」及びV-22は、限定的に公開されてきましたが、制限なく多くの人が訪れたこの日が、初の一般公開と言ってもいいでしょう。晴れ渡った青空の下、多くの方々が詰めかけました。

航空祭では、各部隊に所属するヘリがすべて参加します。

会場上空をフライパスするV-22。エンジンナセルを水平に傾けた固定翼モードでの飛行。

圧巻なのは、大編隊飛行です。所属するすべての機体が会場をフライパスしていきます。改めて第1ヘリ団が様々な機体を運用しているのがよく分かります。

引き続き、第1空挺団も参加しての訓練展示が行われました。第1ヘリ団が得意とするヘリボン作戦により、空挺隊員が展開していきます。これまでのCH-47JAに加えて、V-22も参加し、次々と部隊を輸送していきました。

訓練展示において、第1空挺団のヘリボン作戦を支援する第1輸送ヘリ群のチヌーク。

間違いなくこの日の主役は、すっかり木更津の顔になったV-22でした。離陸を前に4機が並んでいる時から幾重にも人垣ができていました。そんなV-22もまもなく木更津駐屯地とお別れします。佐賀駐屯地新設に係る施設整備費671億円も計上され、着工を待つのみ。海苔漁期間中は生コンクリートの打設工事に伴う排水処理は行わないと言った環境対策も万全です。

“木更津と言えば日の丸オスプレイ”と定着してきたのですが、移駐の日は刻一刻と近づいているのです。

木更津航空祭では、ヘリコプターとともに第1空挺団の訓練展示が見られる。

  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

関連記事一覧