特撮ばんざい!第28回:奇跡のコラボトーク全長版! 河崎実・藤井亮 二大天才監督「電エース×タローマン・でたらめでどうかしている」対談!


身長2000mの巨体で、東京タワーを武器にする電エースを作り出した河崎実監督(右)。そして、偉大な芸術家・岡本太郎氏の思想を反映し、真剣に命がけで遊ぶタローマンを創造した藤井亮監督(左)。常識を超え、常識を破壊する2大ヒーローの生みの親同士によるスペシャル対談の全長版。二大天才監督モノ・マガジンwebに現わる! 対談は爆発だ!

写真(対談)/熊谷義久 文/秋田英夫

電エースとは?
1989年にビデオマガジン『電影帝国』の1コーナーとして生まれたヒーロー。後に配信番組やDVDという形で、何度もシリーズ化される。電一(演:南郷勇一=河崎監督)が気持ちよくなると電エースに変身し、弟・電次郎(演:加藤礼次朗)の応援を受けて怪獣と戦う。2023年12月22日、35周年を記念するシリーズ最新作、映画『電エースカオス』が公開!
公式サイト

『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』とは?
第二次怪獣ブームにわく1972年、川崎テレビで全30話が放送された特撮ドラマ……の体で作られた2022年のNHKテレビ番組。芸術家・岡本太郎の遺した言葉をベースに、でたらめなヒーローが「奇獣」と対決する。地球防衛軍(CBG)の個性的な隊員も活躍した。
『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』番組公式サイト
2024年1月26日、Blu-rayDVD第2弾『「帰ってくれタローマン~TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇~全2枚」がリリースされる!

『モノ・マガジン』本誌にも二大天才降臨!
1-2・1-16合併号 発売中!

「養殖のでたらめ」と「天然のでたらめ」

河崎 藤井さんは僕のことを『いかレスラー』で知ってくれていたそうですけど『電エース』の存在はいつ知ったんですか?

藤井 『タローマン』を作り始めたころ、いろいろ調べていくうち『電エース』にたどりつきました。これは、同じ方向に行っては危険かなと思って、マネにならないよう意識していました(笑)。

河崎 わははは! 僕は『タローマン』大好きで観ていました。『電エース』とはぜんぜん方向性が違うから大丈夫ですよ。常識を破壊するという「芯」の部分では『タローマン』と『電エース』は同じじゃないかと思っています。『タローマン』は最初、どういうところから始まったんですか。

藤井 NHKのプロデューサーさんから、岡本太郎さんをテーマにした5分番組を作りたいというお話をいただいたのが最初ですね。何かないですかと聞かれて、これでどうでしょうと企画を出したのが『タローマン』でした。最初は、岡本太郎記念館から怒られるかなと心配をしていましたけど、なぜか通ってしまいました。さらには記念館からも「こういうのがやりたかったんです」と言われて……。そもそもの発想は「岡本太郎氏の言葉を完全に曲解した宇宙人が現れる」ってことだったんですけど。

――藤井さんは今回の映画『電エースカオス』をご覧になって、どう思われましたか。

藤井 すごいですよね。なんというか、へんな感動の仕方をしました。僕が作っていた「でたらめ」はつくりものというか「養殖」のでたらめですけど、河崎監督はまさに「天然」のでたらめ。さすが天然ものは味が違いますね。

河崎 ウナギじゃないんだから(笑)。僕は『ウルトラマン』(66年)を本放送で観て以来の大ファンなんですが「怪獣とプロレスをする巨大な宇宙人」という要素を突き詰めると、ギャグになるんじゃないかという考えで『電エース』を作ったんです。特撮怪獣ものをギャグとして扱うという部分では、『タローマン』にも通じるものを感じていますけど、アプローチの仕方は違いますよね。通常、ヒーローはピンチになると変身するけど、電エースは逆で、気持ち良くなると変身するし。

藤井 岡本太郎さんは「ここちよくあるな」と言ってますけど……。

河崎 電エースは「ここちよくあれ」なんです(笑)。

電エースのアロハシャツを着た河崎実監督。いつも底抜けに明るい河崎監督は1年中アロハなのだ!
タローマンTシャツを着た藤井亮監督。ウルトラマンイベントにも堂々と着て行ったのだ!

急に現代の高画質に切り替わってビックリ!

――『タローマン』は最新の撮影技術で作られているはずなのに、レトロな雰囲気を出すため画面に加工を加えてそれっぽく仕上げられていますね。藤井監督のレトロアニメ・特撮風味のCMなどにも共通する独特なテクニックがあるのでしょうか。

藤井 一度完成した映像をスクリーンに映写して、その画面を撮影するとか、VHSビデオテープに録画して画面を粗くするとか、あえて別なものを通すことによって味を出すようにしています。高画質でナマの素材がそのまま出てしまうような映像が苦手で、どうしても触りたがるところがあるようです。

河崎 僕の学生時代は、それこそ8mmフィルムで映画を作っていましたから、ぜんぜんナマっぽくなかったですよ。アマチュアの8mm時代から、テレビの16mm、アナログからデジタルへと、映像技術の変遷を見てきたんだけど、藤井さんの作り方ではわざわざ悪い画質に落として作るというのが、とてもいいね!

藤井 あんまり映像が鮮明になりすぎると、平坦になってしまいますしね。ミニチュアを本物のように感じてもらうためにも、画質をあえて落とすのは効果的かと思います。

河崎 僕の師である実相寺昭雄監督も「フィルムによる特撮映像で重要なのは、空気感だ」とよく話していました。藤井さんのそんな話を聞くと、実相寺監督の言いたかったことがよくわかりますね。『電エースカオス』では、家庭用ビデオカメラで撮った第1作目の『電エース』が冒頭に出てきます。あの画質の粗さは狙ったものではないけれど(笑)、今では35年前のあのころをふりかえる貴重な映像資料となっているみたいです。

藤井 あの第1作『電エース』を観たとき、おおっ、この映画はこの画質で行くのか……と身構えていたら、急に現代の高画質に切り替わってビックリしますね。

『電エースカオス』より。身長2000メートルの電エース。
「巨大な異星人が地上に出てきたときの気味悪さ」が狙いのタローマン。

常識を超えた男たち!

河崎 タローマンは『ウルトラマン』でスーツアクターを務めていた古谷敏さんを彷彿とさせる細身で長身の人が演じていて、あえてヒーローらしからぬ奇妙な動きをするのがいかにも宇宙人っぽくて、好きなんです。

藤井 本家のウルトラマンがカッコいいですから、その部分で勝負をしても勝てないと思いまして、巨大な異星人が地上に出てきたときの気味悪さを打ち出そうと考えました。タローマン役は、コンテンポラリーダンサーやパントマイムの方に来てもらって、オーディションをやりました。ちゃんとオーディションを行ったのはタローマン役のみです。あとのキャスティングは、写真を見て「昭和っぽい顔」の人を決め打ちで選んでいます。だから、来てもらったはいいけどぜんぜん芝居ができない人とかもいました(笑)。

河崎 素朴な疑問ですが、『タロウマン』じゃなくて『タローマン』になったのはなぜですか?

藤井 岡本太郎さんにまつわる資料を調べていくと、タロウよりもタローと書かれていることが多い、という単純な理由です。あと、タロウといえばなんといっても『ウルトラマンタロウ』という偉大なるヒーローがいますので、そちらから怒られないようにという配慮もありました。

河崎 そちらはタローですが、こっちは『エース』ですから。

藤井 そうか。今日はエースとタロー対談なんですね(笑)。

河崎 以前は『電エースタロウ』というシリーズも作りましたし(笑)。

藤井 電エースはむちゃくちゃシリーズがあるところが魅力ですね。『タローマン』も「タローマン2号」がいるからシリーズ化してもいいのかな。岡本太郎さんは「同じことをくりかえすくらいなら、死んでしまえ」という言葉を残しているから続編はなしかと思っていたんですけど、まったく同じじゃなくて、ちょっと部分を変えて出せばいいのかもしれない(笑)。それにしても、河崎監督は30年以上も作品を作り続けてこられたのがすごいと思います。自分でも、この先どこまで続けられるのかなって考えてしまいますから。

河崎 それはもう、浮き沈みってのは絶対にあるわけで、キツかった時期は何度も経験しましたよ。浮上したときは『いかレスラー』や『日本以外全部沈没』とか、思いっきりやるし、沈んでいるときは次に上がるまで潰れないように力を維持していくのも大事です。

タローマンなんだこれは入門(小学館入門百科シリーズEX)税込3300円

自分自身に常識がないと、常識を超えられない。

藤井 なるべくなら、ずっと長くバカなものを作っていきたいと思っています。

河崎 藤井さんならこれから20年は軽くやっていけるんじゃないですか。

藤井 ありがとうございます。すでにもう、ファッション系のCMであるとか、カッコいい案件の依頼が来なくなってきました(笑)。これまで、非常にふざけた内容のCMをたくさん作ってきて、多くの方に面白がっていただいたのですが、それでもどちらかというと「地雷を踏まないような」歩き方をしていると思います。その点『電エース』はタブレット純さんがムード歌謡をフルコーラス歌い切らないと変身しないとか、思い切りすぎた演出がすごい。しかもそれを2回もやるなんて(笑)。

河崎 「怪獣」と「笑い」の融合は『キングコング対ゴジラ』(62年)や実相寺昭雄監督の『ウルトラマン』第34話「空の贈り物」とか、成功例がいくつもありますから、あの路線を引き継いでいきたい。藤井さんのCMも大好きだけど、企画を通すときはたいへんだったんじゃないですか。冗談の通じないクライアントがいたりして。僕も昔、CM会社にいたのでそのあたりはよく知ってますから。

藤井 たいていは上手くいくんですが……。一度、企画書をバサーッと投げて激怒したクライアントがいましたね。横にいた営業の人がマッハで土下座しようとして、あの光景が強烈すぎて、今ではどんな企画だったか覚えていません(笑)。

河崎 すごいなあ! 自分自身に常識がないと、常識を超えられない。藤井さんがとてもマジメだからこそ『タローマン』みたいな作品が生まれるんですね。

藤井 河崎監督も同じだと思うんですけど、マジメにバカなことを考えないと、バカな作品は生まれてこないんですよね。

河崎 さすが、わかっているなあ。

藤井 『電エースカオス』は観ている間、頭の中でどうしようもない混乱を感じ続けていましたね。ちょいちょい、観客のほうが「置いて行かれる」感じとか、混沌の具合が凄かったです。

河崎 だから『電エースカオス』なんです。混沌の使者(笑)。

プロフィール 河崎実
かわさき・みのる 1958年生まれ。「有限会社リバートップ」代表。『地球防衛少女イコちゃん』(87年)で商業デビュー後『日本以外全部沈没』(2006年)『突撃!隣のUFO』(2023年)など一貫して特撮コメディ映画を作り続ける「バカ映画の巨匠」。

映画『 電エース カオス』
12月22日より池袋シネマロサ他で全国順次公開!!
電エース誕生35周年記念として、初の劇場映画として製作された作品。電エースキック=電五十郎(演:小林さとし)、電エースQ=電五十二郎(演:タブレット純)が、SNSに蔓延する人間の悪意に戦いを挑んでいく。
公式サイト

『電エースカオス』あらすじ:SNSで幸せな投稿をした人々にクソリプクソコメが殺到し、失踪する事件が多発。これは、人類の邪悪エネルギーが好物のムクリタ星人の仕業だった。五十郎と五十二郎は星人に立ち向かうが、人間たちの邪悪エネルギーを吸った最強の星人には敵わない。果たして地球はどうなる!?
大超獣もたまげる濃厚キャスト陣。小林さとし、タブレット純、西恵子、佐野光洋、ちかまろ、永野希、破李拳竜といった『電エース』ファミリーが結集し、現代の怪奇を暴く!
演出と出演の二刀流の河崎実監督。
ハリウッドザコシショウ、藤波辰爾など、常識も想像も飛び越えたゲストに爆笑!
『怪奇大作戦』(1968)で、科学捜査研究所・SRIの三沢京助を演じた勝呂誉(中央)が出演。思わず「ギャーッ!」とのけぞる役柄なのだ!
『ウルトラマンA』の「三億年超獣出現!」の久里虫太郎役や、『超新星フラッシュマン』のリー・ケフレン、実相寺昭雄監督作品の名優・清水綋治(右)が悪の色気と貫禄たっぷりに強敵を演じる!

サメムービークラファン展開中!

河崎実監督の新作映画『松島トモ子 サメ遊戯』の製作が決定! クラウドファンディングによる制作支援者募集中! アクセスよろしくお願いします!
■キャンプファイヤー『松島トモ子 サメ遊戯』 製作支援者募集!

河崎監督作品の配信が続々スタート!

2023年12月よりAmazon Prime Videoにて『電エース中野』『電エース下関』ほか、河崎実監督作品が見放題対象作品に!また2024月1月よりAmazon Prime Video、U-NEXTほかにて『タヌキ社長』『超伝合体ゴッドヒコザ』『突撃!隣のUFO』などの最新作の配信もスタート!以後、続々配信開始予定‼

プロフィール 藤井 亮
ふじい・りょう 1979年生まれ。愛知県出身。「株式会社豪勢スタジオ」代表。「滋賀県・石田三成」「日本建設工業シリーズ」などユニークなCMで評判を取る。2023年『TAROMAN』で放送文化基金「第49回放送文化基金賞」脚本・演出賞を受賞。

1月26日発売!
「帰ってくれタローマン~TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇~全2枚」(Blu-ray/DVD)

販売:NHKエンタープライズ 
価格 Blu-ray 7480円、DVD 6380円。
『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』番組公式サイト

特撮ファンを驚愕させたヒーローの活躍が映像ソフトで甦る。新作ディスク2 枚組は、伝説の秘蔵映像集「帰ってくれタローマン」をはじめ、タローマンの歴史に迫った「タローマンヒストリア」や「おやすみタローマン」、特別番組などを多数収録。

Blu-rayジャケット
DVDジャケット

すべてのタローマンマニアへ贈る、完全保存版‼
お楽しみに!

ⓒリバートップ2023 ⓒ2023 NHK・藤井亮

ライタープロフィール 秋田英夫
あきた・ひでお フリーライター。『宇宙刑事大全』『大人のウルトラマン大図鑑』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『上原正三シナリオ選集』など特撮書籍・ムックの執筆・編集に携わる。CD『必殺シリーズオリジナルサウンドトラック全集』(1&9)『ザ・ハングマン燃える音楽簿』の構成・解説も担当。

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