織本知之のデジカメ紳士録
これはスタンダード界のフラッグシップです!
【富士フイルム X-S20】


モノ・マガジン誌の長期連載「織本知之の電子写真機恋愛」がいよいよモノWEBに登場! 最新機種から懐かしのレトロ機種まで、掲載当時の熱量真空パックでお届け。誰もが立ち寄れる「デジタル一眼レフ、ミラーレス一眼情報の道の駅」だぞ!

写真と文/織本知之

FUJIFILM/X-S20

富士フイルム/X-S20

こんなトコロに戀をする!

こんな機能を手に入れました

どうですかみなさん! このダイヤルにきらめくVlogモード! いまをときめくブイログ撮りのための動画モードを搭載しました。「じゃあなんか商品説明動画撮らないと!」などと難しく考えずにかわいいお嬢ちゃんお坊ちゃん、お子様たちを囲んだファミリーのセルフムービー撮るのに便利だな……くらいのお気軽な感じでぜひレッツ、ブイログ!

こんなにドデカイ大容量バッテリー!

X-H2やX-T5と同じでっかいバッテリーにしようぜ! と誰かが言い続けたおかげなのでしょうか? このたびめでたく大容量バッテリーNP-W235採用。先代のS10の撮影可能枚数350枚から一気に倍増の快挙。800枚からの撮影が可能になったのであります。これにより動画記録時間も6.2Kで最大120分、Full HDで150分と大幅にUP!

Xシステム単焦点最広ワイドレンズができました

こちらも発売前から人気沸騰の超ワイドレンズXF8㎜F3.5 R WR。 Xシリーズの単焦点レンズでは最広角の換算12㎜相当。対角画角約121°の超ワイドレンズながら質量約215gの小型軽量レンズ。この携帯性の高さにより、風景や旅行でのスナップ撮影など幅広いシーンをワイドに収めることができましょう。このレンズ、恐ろしいほどの解像感も見逃せません。

こんな寫眞に戀をする

XC15-45㎜F3.5-5.6 OIS PZ

お気軽スナップから激渋ドキュメンタリーまで余すことなく描写する標準ズーム XC15-45㎜F3.5-5.6 OIS PZ。富士フイルムの標準ズーム系では一番ワイドな換算23㎜からスタートのズームで望遠側は69㎜相当をカバー。広角端でも高い接写性能も備え、レンズ先端から5㎝の接写では最大撮影倍率0.24倍。電動パワーズームで動画撮影との相性もすこぶるよろしく、このレンズが“サバ”けるシーンの幅広さに驚かれると思います。写真は鯖です。

【撮影DATA】
シャッター速度:1/170秒/絞り:f4.5/撮影感度:ISO3200/フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード

XF8㎜F3.5 R WR

単焦点のこのワイドな感覚。シャープな解像力。そして色乗りグラデーションの豊かさと富士フイルムのレンズとカメラでなければ表現できない景色があります。いまあなたの写真にもうちょっとコクがあれば、なにかこうこってりというか深みがあるというか味わいの奥深さが欲しいのですよ……そんなもどかしさを胸に抱いている方にこそぜひ富士フイルムX-S20とXF8㎜が織りなす極上の色彩を体験してほしいのであります。

【撮影DATA】
シャッター速度:1/280秒/絞り:f8/撮影感度:ISO80/フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド

X-S20を使ってみた!

富士フイルムのXシステムラインナップでは新しくスタンダードクラスの担当となるX-S20の登場です。しかしスタンダードクラスとゆめゆめ侮ることなかれ。小さく軽くたってこれが相当な実力の持ち主、軽量コンパクトでも最上位機種に迫る性能を秘めているのでございますX-S20。例えば高校時代部活動の団体戦初戦で小柄な先鋒選手に油断して連続撃破されて「ぐはっ! これが強豪校の実力なのか!」な感じと思ってください。少年ジャンプならピンチからチャンスに! これからはじまる弱小運動部奇跡の大躍進、諦めたらそこで試合終了ですよ的な展開になりましょうが、monoWEBではこれから奇跡のスペックを語ります。

このX-S20のボディサイズは幅が127.7㎜となり、先代S10よりもほんのわずか2㎜弱ほど大きくなりました。質量も約491gと約26g増大しましたが、これはバッテリーがより大容量のモノに見直されたことによる重量増大と思われます。そしてこのバッテリーにより、従来機種に比べて撮影枚数がなんと倍。先代のS10の公称325枚からS20では一気に約750枚、エコノミーモードなら約800枚の撮影可能枚数と大幅アップの大容量バッテリーNP-W235 を採用。例えばあたくしの場合、雑誌記事1Pもしくは2Pぶんの取材撮影では200から400カットほど撮影しますので取材が2件あっても1日もちます。充分プロユースに耐えるバッテリー容量と思われます。

そしてさらに手厚く機能アップしたのが動画撮影性能。豊富な動画記録モードは6.2K、4K、DCI、FHD、FHD LP、240フレームの最大10倍スローモーションなどなど実に多種。とくにハイエンド動画機レベルの6.2K/30P 4:2:2 10bitでのカメラ内カード記録や4K/60Pや1080/240P記録といった小型軽量ボディのスタンダードクラスとは思えない動画機能の充実。カメラ内のSDカードに記録のほかにもHDMI出力も選べ、動画クリエイターもニッコリ。このようにX-S10から引き継いだ高性能だけどわかり易い静止画撮影力&細かく手厚い動画撮影記録機能といったフォト&ムービー両面を強化しているようです。

スチール性能もクロップ1.25倍になりますが高速プリ連写30コマ/秒や、ディープラーニング技術によって磨かれた高精度な被写体検出AF機能を搭載。X-S20のオートフォーカスは人物の顔、さらには瞳までバチピン、そして動物、鳥、自動車、二輪車、飛行機、鉄道、昆虫、ドローンに至るまでAIで検出します。狙った被写体を自動的に追尾フォーカスし続けるフラッグシップクラスのAF性能を惜しげもなく投入し、クラス最高レベルの被写体認識AFを搭載しました。

搭載する撮像素子は、約2610万画素のAPS-C裏面照射型センサー「X-Trans CMOS 4」。このセンサーを最新の画像エンジン「X-Processor5」で処理。この強力な画像エンジンは「X-H2S」「X-H2」、人気の「X-T5」と同じ最新鋭の第五世代エンジンであり、スタンダード機種という位置づけながら頭脳はフラッグシップ機種と同じハイパフォーマンスとなっているのであります。これでもまだスタンダードクラスと言い張るのかX-S20!

ならばよし! レンズを装着して実写でその正体を明らかにしてやろう。というわけでやはり発売前からすでに名玉とウワサのフジノンXF8㎜F3.5 R WRを用意。見るからに写りの良さそうな雰囲気をもっている換算12ミリ画角のワイドレンズであります。これは私個人の意見ですがF値が半端なレンズは名玉の予感がしてくるのです。根拠はございません。で、このレンズもやはり画面の隅々まで描写ばっちりシャープ! 色乗り良し! やはり珠玉の名玉でした。長らく超ワイド不在だったXシステム単焦点に素晴らしい超広角の誕生です! フジノンファンのみなさまおめでとうございます!

スチール写真家目線ばかりでレンズを選ぶのは不公平ですね。ここはスチール&ムービーカメラマンも満足のキットレンズも試してみましょう。

XC15-45㎜F3.5-5.6 OIS PZです。気の置けない廉価なキットレンズですが電動パワーズームです。フジノン標準ズーム群の中では最広角の35㎜判換算で23ミリから69ミリに相当するズームレンズであり、意外と広角側の1ミリの違いの大きさとレンズの軽さってフットワークに影響を及ぼすんだということが身に染みるキットレンズなのであります。パワーズームなのでムービー撮影との相性も良し、スチール撮影でも軽快なレンズワークでついつい撮影枚数が増えてしまう気軽なズームを1本用意しておくと後々良いことづくめ。

1台で動画&静止画両方の良いところを押さえた万能ミラーレス、おひとついかがでありましょうか?

※本企画の情報、コメントはすべて、機種発売当時のものです。ご了解ください。

  • フォトグラファー。1972年千葉県出身。1999年平凡社動物写真アニマ賞の最年少にして最後の受賞者、撮影テーマは「ニホンザル」。以降、カメラ誌、情報誌、タウン誌、ミリタリー誌など幅広く撮影・執筆。私鉄協会誌「みんてつ」表紙などを長年担当。monoマガジンではこれまで150機種300本を超えるデジタルカメラ、交換レンズをレポート中。甘党下戸。You Tubeの「サバ三ちゃんねる」@sabasan 鋭意更新中!

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