アライヘルメット TOUR-CROSS V
モーターサイクルは趣味として人気になってきていると思う。そんな私もコロナ禍では、ひとりで移動し、誰にも会わずに、景色のいい山の中でマイボトルに淹れたコーヒーを飲むなんてことをソーシャルメディアにはいっさい出さずに、ひっそりやっていた。そんな人間は私くらいだと思っていたら、数人のライダーとすれ違うこともあり、山にはオフロードバイクのタイヤ痕があったり。体力が落ちてきても、山に登頂したような空気、風、景色が体験できるのはオフロードバイクの特権かもしれない。そんなライダーに待望のアライヘルメットTOUR-CROSS Vが発売。今回はこちらの偏愛っぷりを語りたい!
私は、アライヘルメットのTOUR-CROSS V(ツアークロスブイ)を愛している。なぜこれほどまでに惚れ込んだのか?
アライヘルメットは、1902年(明治35年)に、初代・新井唯一郎氏が東京の京橋に新井帽子店を設立したのが起源。そこでは、官公庁や軍事用の帽子や装備を作っている会社としてスタート。第二次世界大戦の敗戦と同時にその仕事も無くなり、代わりに建設用のヘルメット(日本初)を作り、売ることを生業としていた。その息子である新井廣武氏も同じく働いていたが、そんな彼が大好きだったのがバイク。「この乗り物は転倒したら頭が危ないな」と気づき、まだ義務化されていない時代だったにも関わらず、自分の為にバイク用ヘルメットを作成。日本のバイク史上初の試みだった。
そして、その安全性を確認し、戦後復興で増えつつあったバイクのライダーにも届けたいという思いから売り出したのがアライヘルメットの始まり。
アライヘルメットが脚光を浴びるまで
当時の一流ヘルメットメーカーといえばアメリカの『BELL』だった。今は、「アライヘルメット=世界的にハイクオリティなヘルメット」と認知されているが、苦戦を強いられた。試行錯誤した末、1977年に渡米。アメリカ最大のレース場であるデイトナなどに足を運び、レーサーに自社のヘルメットを使ってもらうよう契約の懇願をして回った。
よく知らないメーカーのヘルメットの話を聞いてくれるライダーなどそう居なかったが、たったひとり、テッドプーディ(ted boody)という当時若干18歳のライダーがフィット感の良さと新井氏の情熱によって契約を結ぶ。そのテッドプーディ氏が翌1978年のAMAフラットダートレースにてプライベーターながらトップチェッカーという大金星を上げ、話題となり、アライの名が世界に広まるきっかけとなったそうだ。
19歳、なけなしの金で買ったアライのオフロード用ヘルメットMX-Ⅲ
私がアライヘルメットと出会ったのは、19歳。当時は大学生だった。中学校のときに同級生だった友人が次々と二輪免許を取っていた影響を受けて教習所へ通う。大型自動二輪免許もすぐに取得。その教習所に置いてあったレンタルヘルメットが嫌だったので、人生で初めてお金を貯めて買ったヘルメットがMX-Ⅲというモデルだった。
もちろん私にとっては物凄い高級品だったが、アルバイトを死に物狂いで頑張った。私の友人のひとりであるI君のお父さんがセロー225に乗っていてMX-Ⅲを被っていて同じものが欲しいと思っていたからだ。また、当時GARRRRというオフロードバイク雑誌を譲ってもらっていて、いつかオフロードバイクに乗りたいとも思っていた。
当時ヤマハのTW200が大ブームだったが、それよりもオフロード走行ができるホンダのSL230を購入しようと決意する。
ツアークロス3が11年の熟成期間を経てV(ブイ)となった
MX-Ⅲはチンガード(口元の形状)が高くなっていて、シルエットが美しく、ゴーグルを付けるとモトクロスライダーのようになるので大好きだった。じつは今でも部屋に飾っていて、僕が死ぬ時はお墓に入れてほしいと思っているほど愛している。20代は、SL230の自走でエンデューロに参戦したり、世田谷レーシングというチームでモトクロスに出たり。林道ツーリングもキャンプツーリングも楽しんでいた。
その後、TX-モタード、ツアークロスと変遷し、ツアークロス3が2012年に発売。昔のモノとは比べ物にならないほど安全基準が高く、オフロードバイク用ヘルメットでありながらシールド付き、ゴーグルを装着することもでき、被り心地も良く、カラーリングも気に入っていた。そして、11年の時を経て、2023年に新しく誕生したモデルがこちらのツアークロスV(ブイ)だ。
丸みを帯びた形状にし「かわす性能」を向上
今回の最大の特長は、少しでも多くの衝撃をかわせるようになっている点だ。ツアークロス3でも安全基準は高かったが、さらなる滑らかなフォルムを追求し、ライダーの頭を保護するために、「かわす性能」を高めている。アライは、安心安全性のクオリティを常に研究しているので、進化している物に進化を付け足すのがお家芸でもある。しかしながら、安全性能というのは転倒してみないと分からない。
それ以外で、もっとビギナーに分かりやすいところはフロントバイザーだ。オフロード用のヘルメットには帽子のツバのような物が付いている。これは、元々モトクロスのレースなどで、前方を走っているライダーの土の塊や泥が上から降ってくるときにガードするためのモノ。エンデューロやモトクロスに出たことがある人なら分かるだろう。
また、夏の林道ツーリングに行った際は、木々や草が生い茂っているところも多く、バイザーがシールドを保護してくれる。さらに、冬場の日差しがキツイ山道では日除けにもなってくれる。なにより、見た目がオフロードバイクらしくてカッコイイ。
前モデルのツアークロス3は高速道路走行時で、バイザーが風を拾ってしまうケースが多かったが、今回のモデルでそれが大幅に軽減。近年、大型アドベンチャーバイクが増え、新東名高速の時速120kmまで引き上げなどもあり、高速走行化に対応。以前からドイツやアメリカでは日本の速度域とは違うので、きっと海外のファンも喜ぶだろう。さらに、オンロードでしか乗らない時はバイザーを簡単に外すこともできる。
フロントロゴダクトがデザインも機能も◎!
また、Araiのロゴマークが立体的になっていて、ここにエアダクトが収まっているのが特長だ。画像のように上に引き上げるとCLOSE。寒い冬場は、ここから空気の侵入を防ぐが、夏場はここから空気が入って行き後ろのダクトに抜けていくのでムレにくい。
シールドも前作と比べても視界が広くなっていて、ピンロックシールド(曇りにくくなるように二重にする)も付いていないかのようにスッキリしている。シールドを外せばモトクロスゴーグルを装着できるのでレース用にも使える。(激しい動きが多いレースでは、シールドだと曇ってしまうこともあるので)
以前のモーターサイクルツーリングと言えば、道を確認するために一度停まって、バックパックからツーリングマップルという本の地図を取り出して確認をし、高速道路では風切り音がBGMで、ひたすら哲学(考えごと)をしていたが、もう過去のものになった。
インカムを付けて、音楽、ラジオ、オーディオブック、講演会などの音を聴き、スマホと繋げれば電話もできる。最近は事務所からもLINE電話で仕事の連絡が来るので、モーターサイクル上で仕事もできる。ハンドルなどにスマホやナビをマウントすれば、地図アプリで目的地まで案内もしてくれる。道に迷うこともない。(あえて道に迷いたい時はツーリングマップルを使う時もあるが)電熱グローブで手も冷たくならないし、仲間とインカムで話ができればPAやSAに寄りたい時も手信号しなくていい、ETCもあるので料金所でグローブを外す手間もない。かつての修行のようなツーリングとは雲泥の差だ。
モーターサイクルの上で音楽やラジオを聴いたり、仕事の電話を受けたり、仲間同士で話せる時代に
じつは、ツアークロスVにはインナーパッドにインカム用のスピーカーを簡単に付けられるスペースが設けられ、チンガードのサイド部分もインカムが自然に付けられるようフラットになっている。安全性能の向上はもちろん、こういった分かりやすい機能性も付け加えてくれているのは嬉しい。
私は、20代の時からオフロードバイクで山に行く楽しさやキャンプと組み合わせてアウトドアフィールドモビリティとして愛でるライフスタイルや、オフロードバイクがファッションとしても楽しめる乗り物だということを各2輪誌、ファッション誌、モノ誌、WEBマガジン、ソーシャルメディアなどで発信し続けている。
これからも、安全基準の高いアライヘルメットと共に楽しんでいき、多くのライダーに安全を届けたいと願っている。
アライヘルメット ツアークロスV
価格: | 6万9300円 |
仕様 | |
【帽体】 | PB-cLc2(ペリフェラリー・ベルテッド・コンプレックス・ラミネート・コンストラクション・スクエア) |
【規格】 | スネル・JIS |
【シールドシステム】 | VAS-Aシールドシステムシールド(クリアー標準装備) ※曇り止めピンロックシートは別売 |
【内装】 | ハイフィッティング・アジャスタブル・FCS内装(抗菌・消臭・防汚内装) |
【重量】 | 約1800g(サイズ57-58) CARDOのインカム含む |
ファッションモデル山下晃和の偏愛モノ図鑑83
ファッションモデル山下晃和の偏愛モノ図鑑82
ファッションモデル山下晃和の偏愛モノ図鑑81
ファッションモデル山下晃和の偏愛モノ図鑑80
ファッションモデル山下晃和の偏愛モノ図鑑79
ファッションモデル山下晃和の偏愛モノ図鑑78