年に1回、防衛省自衛隊が一丸となって行う演習があります。それが「自衛隊統合演習」です。英語表記のJoint exerciseからJXと略して呼びます。陸海空自衛隊に加え、米軍も参加しますので、国内で行う演習の中では最大規模を誇ります。
1979年に第1回目が行われ、それ以降ほぼ毎年(指揮所演習含む)実施しています。2006年に統合幕僚監部が発足してからは、17回(実働演習9回、指揮所演習8回)実施してきました。
令和5年度につきましては、2023年11月10日から20日にかけて行われました。演習の正式名称は、「令和5年度自衛隊統合演習05JX」です。陸海空自衛隊から人員約30,800名、車両約3500両、艦艇約20隻、航空機約210機が参加しました。これに加え、アメリカからも陸海空海兵隊等人員約1万人が参加しました。
演習の目的は、自衛隊の統合運用能力を向上させることにあります。日本各地の駐屯地や演習場、さらには空海域で大小さまざまな訓練が行われました。
ここ数年、JXのシナリオは、日本南西諸島部における「島嶼防衛」となっています。そこで、種子島や徳之島など一部実際の離島が使われてきました。しかしこれら島々には、自衛隊の演習場や施設がないため、日出生台演習場(大分県)などを“日出生台島”などと想定して主となる演習を実施してきました。演習場外を海として、そこから侵攻してくる敵を想定し、“日出生台島”に部隊を配置して防御するというシナリオです。
しかし、その方法では現実的ではありません。島の大きさや地形だけでなく気象なども本来守るべき島嶼地域とは大きく異なるからです。
そこで05JXでは、これまでのJXにはないリアルさを追求するため、これまで以上に生地訓練(実際の地形を使った訓練のこと)にこだわりました。具体的に申しますと、徳之島がそのまま演習場となったのです。
徳之島をがっちりと守った防御部隊が第8師団(司令部:北熊本駐屯地)です。それ以外にも北海道や本州などから様々な部隊が展開してきました。
第42即応機動連隊は、16式機動戦闘車を中心に、島内各所に機動展開していき、最終的に黒畔海岸に陣地を構築しました。また西部方面戦車隊の10式戦車は、恋慕岬に陣地を構築し、侵攻してくる敵を待ち構えるため、砲口を海岸線に向けて、狙いを定めていました。敵の着上陸を阻止するためであるのは間違いありません。「徳之島ちゅっきゃい節の碑」の前には第8偵察隊がいました。
徳之島の北に位置する手々海浜公園や徳之島町総合運動公園、伊仙町運動公園は、ヘリポートとして使われました。このように普段は、観光客や地元の方々の憩いの場となる景勝地や公園に各部隊が続々と配置されていきました。
演習のクライマックスとなったのは、徳之島着上陸作戦です。まず、水陸機動団が、輸送艦「おおすみ」「しもきた」より、AAV7を使い花徳浜へと上陸しました。さらに兼久地区において、第1空挺団がC-2やC-130輸送機から空挺降下訓練を行いました。
こうのようにして徳之島では、“リアルな戦場”が再現されたのです。
兼久地区へと降下する第1空挺団。C-2(写真の機体)やC-130を使い、サトウキビ畑へと降下した。