TM NETWORKの名盤2枚がステレオサウンドによってまさかのSACD化! こいつは事件だ。


こいつは事件だ! 俺達モノマガ世代が胸を熱くしたTM NETWORKの『Gift for Fanks』『Carol』が、35年以上の時を経てなんと初SACD化! 仕掛けたのはオーディオの老舗出版社ステレオサウンド社。なぜTM NETWORKなのか? なぜこの2枚なのか? なぜSACDなのか? そしてその反響やいかに? ソフト部門責任者も務める『ステレオサウンド』誌の染谷 一(そめや はじめ)編集長に、その「なぜ?」を質問。ズバリ回答いただいたぞ! 

写真/青木健格(WPP)

(mono編集部)
質問①

TM NETWORKのSACD化、中でも『Gift for Fanks』と『Carol』を選択した理由は?

Gift for Fanks

1987年作品。SACD/CDハイブリッドディスク仕様。価格5500円。
ヒット曲「GET WILD」「SELF CONTROL」を含む全14曲を収録したセレクション・アルバム。TM NETWORKとして初のオリコン1位を獲得した記念碑的作品。CD収録時間いっぱいまでたっぷりと曲を詰め込み、ヒットによりあらたに獲得したファンたち=Fanksに対するギフト的性格をもつ。

質問②

サウンド面ではどのような特長がありますか?

一般的にレコード会社が制作するものは、原則としてどんな装置(テレビやAMラジオ等)で聴いても音楽の重要な要素がしっかり聴き手に届くような音づくりになっていると思われます。なんと言っても対象にしている聴き手の数が我々とはケタ違いですから。いっぽうで、ステレオサウンド社の場合は、聴き手を音質に関心がある人に限定できますので、調整の行き届いたしっかりとしたオーディオ装置で聴いたときに、もっともいい音で鳴ってくれる、ということを目標に制作しています。TM NETWORKの場合も、その方針に沿っています。

具体的には、「マスターテープに記録されている音をなるべく加工をせずに、そのままデジタルのSACDという大きな器に移して欲しい」と、エンジニアの鈴木浩二さんに要望を伝え、作業にあたっていただきました。また、今回のTM NETWORKのSACD化において、特に恵まれていたのは、レコード会社の全面協力が得られたことにより、一般的にマスターテープと呼ばれるカッティングマスターよりも、一世代上流にあたるトラックダウンマスターを使えたことです。そして、そのカッティングマスターの状態がとても良かったため(ソニーミュージックのテープ管理体制は本当に凄いです)、より生々しい音をディスクに封じ込めることができたのではと思います。

なお、『Gift for Fanks』で実施したオーディオ的なアプローチとしては、アルバム全体として音を統一するマスタリング(調整)を一切施さなかったということも挙げておきます。ヒストリーCD(オフィシャルではベスト盤ではないとのこと)ということもあり、収録曲の録音期間が約3年間にわたり、曲によって音の感触がかなり異なっていましたが、それぞれの楽曲が持つ個性を最大限尊重し、音質を揃えるイコライジングはまったく行ないませんでした。そのため、1枚のアルバムとして通して聴いたときには音が揃っていない印象を受けるかもしれませんが、各曲の雰囲気がよく伝わってくるはずです。マスタリング作業時、スタジオには収録曲全曲分(10本以上)のトラックダウンマスターが集められていましたので、TM NETWORKのファンが見たら、倒れちゃうのではと思うほどの贅沢な光景でした。

「Gift for Fanks」のデジパックを開いた状態。

質問③

本作の先にアナログ化などの可能性もありますか?

CAROL ~A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991~

1988年作品。全13曲収録。SACD/CDハイブリッドディスク仕様。価格5500円。
「GET WILD」でブレイクを果したTM NETWORKがその勢いそのままに作り上げたトータルコンセプトアルバム。かっちり構築されたコンセプトアルバムながら、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』主題歌「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」や、『ぼくらの七日間戦争』主題歌「SEVEN DAYS WAR」などシングルヒットを収録、聞かせどころも満載。TM NETWORKの最高傑作とも評される一枚だ。

質問④

2023年末のコミックマーケットでの先行発売におけるセールスやユーザーの反響などは?

ブースではSACDプレーヤーとヘッドホンを設置して、来場者に実際に音を聴いていただいたのですが、作品を聴いていた当時のことを思い出されたのか、涙ぐまれる方までいらっしゃったのが印象に残っています。いっぽうで、SACDを知らない方がこんなに大勢いるのかと落ち込むことにもなったのですが、そうした方々に口頭で直接ご説明できたり、「このディスクはCDプレーヤーでも再生可能ですよ」と伝えて、SACD層だけでなくCD層の音も実際に体験いただけたのは大きな喜びとなりました。親御さんに対する、テッパンのコミケ土産という想定外のリーチを含めて、セールスも良好でした。

「Carol」のデジパックを開いた状態。

質問⑤

モノ・マガジンWEB読者へのメッセージを!

TM NETWORKの2タイトルは、SACD/CDハイブリッド盤でのリリースなので、通常のCDプレーヤーでの再生も可能です。SACDプレーヤーをお持ちでない方のことも重要視し、CD層の音質にもこだわって制作しています。今回、マスタリングエンジニアを務めていただいた鈴木浩二さんは、SACDやCDの記録方式である、DSDやPCMの扱いが世界で一番うまいと僕が感じている方です。その鈴木さんに存分に腕を振るっていただいたのが、今回の2タイトルですから、実は大変な自信作でもあります。SACD層と同じ音が聴くことができるとは言えませんが、CD層でもSACD層と同傾向の音を味わっていただけるように、一切の手抜きはしておりません。SACDプレーヤーをお持ちの方はもちろんSACD層の音を、SACDプレーヤーをお持ちでない方は関係ないとは思わずに、ぜひともCD層の音を聴いてみてください。

『ステレオサウンド』染谷編集長

モノマガWEB編集長前田はこう聴いた

『Gift for Fanks』は生まれて初めて自分で買ったCDだ。買ってもらったばかりのCDコンポを前に、考えに考えて選んだ一枚だった。ゆえに今回のステサン盤の試聴には仕事以上の興味をもって挑んだ。

いま手元にある1996年発売の『TIME CUPSEL~all the singles~』と、2012年発売の『ORIGINAL SINGLES 1984-1999』の数曲と比較した。

1996年盤はいわゆるドンシャリ。2012年盤は音源がちょっとお疲れ気味な印象だ。

以上に比してステサン盤は、フレッシュネスがまるで違う。歌の厚み、ビートの明瞭さ、高音域の伸び、その違いは一聴してわかる。鮮度向上は2枚共通ながら、より劇的なのが『Carol』だ。まるで、録音と寸分たがわず演奏するプレーヤーたちの極上のライブ演奏を体感しているような臨場感すら得られたのだ。CD層でコレなのだから、SACDフルスペックで聴いたらさぞや……と思わせる。

ステサン盤はいずれも税込5500円と値はいささか張るが、TM NETWORKデビュー40周年イヤーの幕開けを飾る素晴らしいギフトと言える。みなさんの心の中のTM NETWORKを、より鮮やかに蘇らせる一枚として、ぜひ入手いただきたいと思う。

お求めは全国のオーディオショップまたは、ステレオサウンドストアにて。

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