菊池雅之のミリタリーレポート
第1空挺団
令和6年降下訓練始め


島嶼部へと上陸してきた敵に対し、陸自とイギリス軍がともに戦っていく。

陸上自衛隊の中で、唯一パラシュート降下を行い、地上戦を戦う空挺部隊が存在します。それが第1空挺団です。

その第1空挺団では、毎年年明けすぐに「降下訓練始め」という行事を執り行います。これは、1年間の降下訓練の安全を祈願する目的で行われています。一般公開もされており、毎年多くの見学者で溢れます。

ちなみに、本連載では、2022年に行われた降下訓練はじめの様子をレポートしておりますので、あわせてどうぞ。

米空軍の輸送機C-130Jから次々と降下する第1空挺団。この他、空自のC-2輸送機も使われた。

2024年については、「令和6年降下訓練始め」として、1月7日に実施されました。場所は変わらず習志野演習場(千葉県船橋市ほか)です。第1空挺団の拠点となる習志野駐屯地に隣接しており、住宅街のど真ん中にある珍しい演習場です。

なお、今年は、1月1日に発生しました「能登半島地震」の影響を受け、規模を縮小して行われました。

もともと部内行事に端を発していることもあり、基本的に参加部隊は第1空挺団のみでした。しかし、年々規模が大きくなるにつれて、第1師団や富士学校、さらには米軍など他部隊も参加するようになり、陣容はだいぶ変わっていきました。これに加え、2023年には、イギリス陸軍及びオーストラリア陸軍が参加して大きな話題となりました。

降下訓練が始まる前に、観覧席へと集まる各国軍兵士たち。日本でこれほどいろいろな迷彩服を見る日が来るとは思いもしなかった。

海外勢が参加するようになったのには理由があります。

この「降下訓練始め」に合わせ、「国際空挺指揮官会議」が行われるようになりました。文字通り、空挺部隊を指揮する空挺部隊や特殊部隊の指揮官が集まり、情報交換をする場です。この会議が終わると、最後に降下訓練始めを見学するという流れが出来ました。

しかしながら、遂に「令和6年降下訓練始め」からは、見学の枠を大きく超え、各国が部隊を派遣し、一緒に訓練することになったのです。

次々と大空にパラシュートの花が咲く。今年は能登半島地震の影響で、参加規模は小さいものとなったがなかなか壮観だ。
機関銃を装備したUH-1と対戦車ヘリAH-1が進出してきた。降下訓練始めでは、空挺降下のみならず、ヘリによる戦闘訓練も派手に行われ、これを見に来る人も多い。

今年の会議参加国は、米英のほか、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、インドネシア、カンボジアの8か国でした。ここからカンボジアを除いた7か国より、空挺部隊や特殊部隊が来日。第1空挺団と共に空挺降下を行うことになったのです。

この裏には、安全保障や外交において日本と考え方や目的を同じくする「同志国」との連携強化を図ろうとする動きがあります。

ここで言う共通する考え方や目的とは、「自由で開かれたインド太平洋」の事を指します。インド太平洋地域を力で支配を進める中国に対する連携なのです。

地上で警戒する第1空挺団の真上を低空で飛びぬけるAH-1。空地一体の攻撃が繰り広げられていく。
機甲教導連隊の10式戦車。実は74式戦車が最後の花道としてくる!? という噂もあった。

空挺降下については、航空自衛隊の輸送機の他、米空軍の輸送機も使われました。そして降下後は、島嶼防衛というシナリオの元、敵の着上陸部隊を次々と撃破していきます。

最終段階として、各国軍が登場しました。5機の陸自大型ヘリCH-47JAチヌークに分乗し、演習場へと展開してきます。着陸すると、後部ハッチが開かれ、そこから異なった迷彩服の兵士たちが、弾かれるように飛び出していきました。日本でこのような光景が見られるなど、10年前では想像すらできませんでした。

訓練終了後、各国兵士たちは笑顔で握手を交わし、互いに労をねぎらいました。

同志国の絆は確実に深まっているようです。

昨年3月に新編された第12偵察戦闘大隊から16式機動戦闘車がやってきた。
訓練終了後、撤収するドイツ軍。手には東京マルイの89式小銃のエアガンを持つ。次回は是非本国より武器も携行してきて欲しい。

陸自のCH-47JAチヌークから降りてきたのはイギリス軍。かつての日英同盟と肩を並べるパートナーとなるか!?

  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

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