百貨店戦略が大当たり! 「トヨタHVカーがアメリカで爆売れ」の背景にある強みを探る!

トヨタはハイブリッドの百貨店

やったぜトヨタ! どうやらジドウシャの風はHVに追い風のようだ。~アメリカではEVよりHVが好評を得ておりその盟主がトヨタである~といった報道激増がそのきっかけとなっている。では「21世紀に間に合った」トヨタHVの特長とは? 現在の強みは? ラインナップの厚みは? といった気になる部分をモータージャーナリスト海野大介さんに解説いただこう!

かつて「21世紀に間に合いました」のCFで1997年にデビューした初代プリウス。量産車初のハイブリッドカーとして電動車だけに自動車殿堂の歴史遺産車にも登録されている金字塔だ。初代プリウスのメカニズムは1.5リッター直4エンジンに41PS(編集部注:後に45PSにアップ)のモーターを組み合わせたモノ。

1.5リッターながらも2リッターエンジン並のパワーとトルクにいたっては2.5リッターエンジン並のスペックを誇る。そして燃費は10・15モードで驚異の28km/Lを実現した。これは当時の同じクラスのクルマの約2倍に相当する。

そんな量産車初のハイブリッドカーであるプリウスの登場から20年以上が経過した2024年、トヨタのハイブリッドカーが激アツなのだ! 昨年の新車販売台数のトップ5には必ずトヨタのハイブリッド車がランクインしているし、今やトヨタはコンパクトカーからSUV、ミニバン、大型セダンまでほぼすべてのモデルにハイブリッドモデルをラインナップに擁している。いわゆる豊富な品揃えでココに行けば、欲しいモノが揃うデパートといっても過言ではない。

ハイブリッドは走りにも効くぅ〜

走りもハイブリッドカーの魅力のひとつ。スムーズに加速し静かに走れ、かつ燃費がいいこと。トルクの出方も細やかな制御ができるようになり、緩やかで安定したトルク特性は悪路の世界でもメリットがある。例えば昨年発表された悪路上等! なランドクルーザー250シリーズ。残念ながら日本には導入されないが北米、中国向けには2.4リッターガソリンターボにハイブリッドを組み合わせたモデルもある。

一方、クルマのキャラクターによってモーターを変えているモデルも。例えばクラウン。昔のロイヤルサルーン系豪華装備のGグレードのリアモーターは空冷式。これは普段はFFで走り、必要時にキチンと使えるよう考えてのこと。前後駆動配分は100:0から20:80まで。それに対してアスリート系に出自のあるRSは水冷式のモーターを採用する。コチラは普段から積極的にアシスト(フルタイム4WD)し動力性能に貢献するためだ。それでいて両モデルとも燃費向上のためにはブレーキ時などにエネルギーを回収して充電、再利用するいわば資源循環型がクルマの中で行われている。中島みゆきのヒット曲ではないが「回る〜回る〜よ、電気は回る」のだ。

目指せハイブリッドマスター!?

ひとえにハイブリッドカーというけれど、意外にその歴史は古い。1899年にはかのポルシェがEVの「ローナーポルシェ」を開発。しかし航続距離が問題となり、それを改善することも考えてガソリンエンジンを発電用に載せた「ミクステ」がデビューした。トヨタでは1975年の第21回東京モーターショーにセンチュリー・ガスタービンハイブリッド実験車を出展、次の第22回東京オーターショーではスポーツ800ガスタービンハイブリッドカーが展示された。

ラーメンに醤油や味噌や塩があるのと同じようにハイブリッドカーには種類がある。メカニズムで分類するとシリーズ式、パラレル式、シリーズ・パラレル式の3つがある。このあたりはよく試験に出そうなので赤マルをお願いしたいところ。

シリーズ式のエンジンは発電に徹して駆動はモーターで行う。具体的には日産のeパワーがあげられようか。次のパラレル式はエンジンの補助としてモーターを使用。俗にマイルドハイブリッドと呼ばれるモノで、国産軽自動車や海外メーカーに多い。

そして最後はそれら両方の特性を持つ。プリウスなどに搭載されるトヨタ・ハイブリッド・システム(以下THS)はこのシリーズ・パラレル式を採用。その基本システムはエンジンとふたつのモーターをプラネタリーギアで連結していること。そしてTHSの特長はモーターを発電機としても変速機としても使う点にある。乱暴にいえばエンジンの得意分野とモーターの得意分野はそれぞれで活用し、不得手な分野を補う、よくできた夫婦のようなモノ。かくありたいと思われた方、修理は早い方が安くすみまっせ。

5世代目の矜持とは?

さて。長らくハイブリッドカーを作ってきたトヨタ。THSも少しずつアップデートが施されている。白亜紀ジュラ紀で恐竜の生態が異なるのと同じだ。

初代プリウスに搭載したTHSを第1世代という。第2世代になったのは2003年の2代目プリウスから。メーカー呼称でいうなればTHS-II。この特長は時速55km/h以下に限り、という条件付きだがモーターのみのEV走行を可能にした点。そしてプリウスが3代目に切り替わる時に搭載されたのが第3世代。これは9割以上を新開発し、モーターの速度を調整することでよりパワーを出せるように。4世代目もプリウスのモデルチェンジで搭載。基本メカニズムは3世代のままだがシステムの細かい改良で燃費が向上。EV走行時の最高速が110km/hになっている。第5世代へは2022年のノア/ヴォクシーのフルモデルチェンジに合わせ、進化した。THSの特長的な「キーン」というような高周波音を改善した。

海外でも熱い視線

今月(3月)上旬の各社のニュースではアメリカ市場でハイブリッド車の販売台数がEVの代名詞でもあるテスラ社のEV販売台数を上回ったという。トヨタのHVは18万台、テスラは17万台、ホンダは前年同期比4倍(!)の8万台という。国内でも海外でも熱い視線のTHS搭載車。国内ではヤリスよりもアクアの方がお求め易い価格で199万7000円からのプライスだ。

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