昨年実施されたクラウドファンディングによりデジタル化された「ピー・プロダクション」4作品『快傑ライオン丸』『風雲ライオン丸』『鉄人タイガーセブン』『電人ザボーガー』のポジフィルムを、様々な形で商品化するオンラインストア「ピープロアーカイブストア」が4月6日(土)より始動する。今回は、ピープロ作品&アーカイブストアの魅力を、応援隊長に就任した声優にして特濃の特撮ファンでもある関智一さんに存分に語っていただいた!(前編)
聞き手・文 タカハシヒョウリ 写真/鶴田智昭(WPP)
後編はこちら
ピープロアーカイブストアとは?
応援隊長就任のきっかけは、「ピープロ作品が好きだから」
-- 今回、関さんが「ピープロアーカイブストア」の応援隊長に就任したのは、関さんがピープロ作品のポジフィルムデジタル化プロジェクトのクラウドファンディングを自主的に支援なさったことがきっかけという事ですが、クラファンを知って支援しようと思った経緯などお聞かせください。
関 そんなに大した援助はしていないんですが、単純にピープロ作品が好きなので、ネットでクラファンの情報を見つけた時に「何もしないのは気が引けるな」と思ったんです。それで写真のリストアップを手伝えるっていうコースがあって、お助けしたいなっていう気持ちもありつつ、写真を見たいなっていう気持ちもあって(笑)。
-- 実際にフィルムを前にした時はいかがでしたか?
関 それは興奮しましたよね。舞台裏の写真が残っているのも嬉しかったですね。あと画質がすごく良くて、引き延ばしても細部まで綺麗に見えるんです。詳細が不明だった写真もあったんですが、『風雲ライオン丸』とか全話見直しまして、この写真はこの場面のこのキャラだって見つけてお伝えしたりとか。ちゃんと責任は果たしました(笑)。担当の皆さんも結構楽しんでやってらっしゃったんで、楽しかったですね。
そういう感じで本当に一支援者として手伝いに行ったら、「声優の方ですよね……!?」ってなって、そういうところから盛り上がって今回の応援隊長に就任するということになりました。
最初は「なんだろう?このキャラクター」
ピープロアーカイブストアの商品のひとつ、大判の美しい写真でヒーローの雄姿を堪能できる「ジークレー額装」。イメージ:295㎜×295㎜ 額縁外寸:415㎜×415㎜ 8種 各価格2万8500円(受注生産)。購入すると下のように額装されて届く。家宝間違いなしだ。
-- 関さんの年齢を考えると(関智一さんは1972年生まれ)、『電人ザボーガー』(1974年放送)などはリアルタイムで見てらっしゃらないと思うのですが、ピープロ作品との出会いはどういうものでしたか?
関 ピープロ作品はリアルタイムじゃなかったんですけど、テレビ埼玉とかテレビ神奈川でめちゃめちゃ再放送してたんですよ。夕方はニュースしかやってない時間帯だったので、特撮作品の再放送を見るんですけど、そこで『電人ザボーガー』とか『鉄人タイガーセブン』を知ったっていう感じでしたね。みんなの知らないヒーロー番組を見てる、俺だけが知ってるみたいな、そういう雰囲気で楽しんでたのもありました。
-- 当時の周りの子供たちに、ピープロ作品について話が合うような子はいたんですか?
関 同級生にワタナベくんっていう男の子がいて、その子も特撮すごく好きでマニアックだったんですよ。 その子とだけはピープロ作品の話をできましたね。
-- じゃあ、もう本当に学年に2人ぐらいの感じですね。
関 そうです。そもそもキー局的なところでは放送してないから、普通には見られなかったですから。たまたま再放送を見たり、ケイブンシャの『全怪獣怪人大百科』を見て「なんだろう、このキャラクター」って思ったりとか。当時はビデオとかほとんどありませんでしたし、 あっても1話と最終話だけみたいな感じで、全話はなかなか見れなかったんです。
-- ピープロが経営していたビデオ屋(「ビデオショップピープロ」1983年~1989年に荻窪に存在した)に行ったら、希望の回をダビングしてもらえたっていう話もありますね。
関 そうなんですよ。そこにファンの人が行って、うしおそうじさん(ピープロ創業者の鷺巣富雄さん)と親交を深めてたみたいな話が、たまにXで出てくるんですよ。やっぱり、そういうおおらかな時代に物凄くハマってはいなかったっていうのは、ちょっと後悔があるんです。そんな体験もしたかったなっていう羨ましい気持ちはありますね
ピープロ作品の魅力は、アンバランスさにあり!
ピープロアーカイブストアで買える「A2ポスター」。用意された画像から選んで購入するオーダーメイド方式。素晴らしい絵柄が揃う。16種類。価格2500円。
-- 子供の頃に見たピープロ作品の印象はいかがでしたか?独特の味わいがあると思うんですが。
関 ちょっと変わってたんだなーっていうのは、大人になってからは思いましたけど、子供の時は普通に楽しんで見てましたね。特に『ザボーガー』が好きだったんですけど、主人公の大門豊の熱血キャラも、大人になって見たらちょっと無茶だなと思ったりするところもありますけど(笑)、子供の時は普通にカッコよく思ってました。「僕もザボーガーみたいな言うことを聞くロボットの仲間が欲しいな~」みたいな事を思ってましたから。
-- ピープロ作品の独特の魅力っていうのはどういう風にお考えですか?
関 ちょっと合ってるかわかんないんですけど、すごく漫画っぽいと思うんです。アニメをそのまま実写化したみたいな雰囲気があって、ザボーガー基地とかも今見るとアニメに出てきそうですよね。ザボーガーだと、後半になってきてからの方がよりその色が増してくるんですよ。大門の衣装も、後半で派手に変わったりとか。合体するのもゲッターロボっぽくて、なんか理屈はわかんないんだけど「合体したんだな!」っていう説得力はある。
第1話で死んでしまった大門が生き返って、病院の先生が「どうして生き返ったんだ!?」みたいな事を言うんですけど、心臓に電極回路を埋めたって言ったら、お医者さんが「わかりました」って。何がわかったのか!?っていう(笑)。でも、なんか納得しちゃうんですよね。後半で、子供が死んじゃった時も、大門が剥き出しの電極回路をポッケから出して、 「これをあの子に埋めてあげてください」みたいなこと言うんですけど、そんなポッケに入れてるようなもんで命を懸けて良いのか!?っていう(笑)。でも先生も「やってみましょう」みたいなこと言って、ケロッと生き返っちゃう。トンデモ理論みたいなものでも、パッションは伝わってくるんですよ。
ピープロ作品じゃないですけど、『仮面ライダーストロンガー』で、敵が「なぜ毒ガスが効かなかった!?」みたいな事を言ったら、ストロンガーが「そんなこと俺が知るか!」って言うシーンがあるんです。そういうのが好きなんですよ。悪者にいちいち理由なんか言う必要ないもんね(笑)。そういうダイナミックさも、魅力だと思います。
-- 大人になったからこそ、あらためて振り返ってみてのピープロ作品の魅力というのはありますか?
関 『タイガーセブン』なんかは特にシリアスで、ヒーローの苦悩とか葛藤みたいなものをしっかり描いてますよね。有名な話ですが、「変身した後のバイクってどうなるんだ?」っていう疑問に答えを出しちゃったじゃないですか(※コントロールを失ったバイクが子供を轢いてしまう)。今はそういう視点の作品も多いですけど、それをいち早くやってらっしゃったのかなっていう感じがしますよね。ヒーローに改造されたけど、急に余命を宣告されて、やっぱり期限があったんだとか。なんか「人生」って感じもします。
だから、そのバランスが面白いっていうのもありますね。アニメや漫画のようなディティールで撮っているけど、中身はすごくシビアだったり。
あと、これはピープロの作品に限らずかもしれないんですけど、昔の作品って「ちゃんと人が死んでた」からこそ危機感を感じたっていうのもあると思うんです。最近は、なかなか人の死を描くことが難しいですから。別に犠牲者が出ることを喜んでるわけじゃないんですけど、危機感があるからこそヒーローに助けてもらえることの意味が感じられると思うんです。ムー原人もね、結構えげつないじゃないですか。悪ノ宮博士たちもね、やっぱりヤバい奴らだし、そういうところも良かったと思いますね。
複雑な思いと葛藤があってこそのピープロ愛
-- なるほど、すごく良くわかります。ピープロ作品のデザインについてはいかがですか。ピープロ作品のキャラクター造形の魅力などもお聞かせください。
関 なんか好きなんですよね。何が好きなのか自分で分析したことはないんですけど。あんまり悪く言ってるように思われちゃうと嫌なんですけど、やっぱりちょっとダサカッコイイみたいなところはあるんですよね。あんまりスタイリッシュな物が好きじゃないのもあって、温もりのある感じというか、中に入ってお芝居してらっしゃる方の演技も相まってトータルでカッコよく見えるっていうのが良いんです。
-- 特に好きなキャラクターはいますか?
関 どれも好きなので、選ぶのは難しいですが……、『ザボーガー』だとやっぱりキングアフリカは好きですねぇ。ブルガンダーも好きで、ソフビも買いました。ザボーガーのソフビも集めているんですが、ストロングザボーガーのミサイルのソフビ(「スーパーメカニック ストロングザボーガー」ブルマァク)は持ってないんですよ。プレミアが付いちゃって、滅多に出てこないし物凄い高いんですよね。
『タイガーセブン』の黒仮面の声は、増岡弘さんですよね。マスオさんの声なのに怖い(笑)。増岡さんは僕のお芝居の先生でもあったので、怖いんですよ。
-- 当時、『ザボーガー』で王女メザを演じている堤光子さんが、『ウルトラマンA』の南夕子を演じていた星光子さんだというのは気づいていましたか?
関 あ、気づいてましたね。僕は、どっちかというと王女メザの方が好きですね。
-- 子供の頃に好きだったピープロ作品に、大人になってから再注目するきっかけというのはあったんでしょうか。
関 いや、もうずっと好きなんですよ。毎日ピープロのことを考えてるかって言ったら、そんなことはないんですけど(笑)。もちろん仮面ライダーやウルトラマンも好きですけど、やっぱりピープロ作品は「ちょっと特別な物を好き」っていう気持ちがあるんです。だから、なんかこうやって広めたくないって思う部分もあるんですよ。僕だけのものにしておきたいっていう(笑)。ちょっと偏ってるんですけど。
-- なるほど(笑)。その気持ちは凄く分かります。
関 もちろん僕より詳しい人とか好きな人もいっぱいいるとは思うんですけど、それでもピープロ作品って大衆化してない感じがするじゃないですか。だから応援隊長みたいなことを言ってますけど、本当はあまり宣伝したくない気持ちもあるんです(笑)。
-- 相反する2つの思いの間で揺れ動いてるんですね(笑)。
関 そうなんです。それこそタイガーセブンじゃないですけど、「俺は何のために応援隊長をやるんだ、俺は知られたくないのに、でも宣伝してる」みたいな気持ちで(笑)。
-- 『タイガーセブン』最終回の葛藤のようなものを今感じているんですね。でも好きだからこそ、応援したい気持ちもあると。
関 そうです。だから、さっきから「ダサカッコイイ」って言ってるんですけど、かと言ってバカにされるのは嫌なんですよ。
-- はいはいはいはい!!
関 『ザボーガー』とか結構ちゃんと見ずにネタみたいに扱われるんですけど、それは嫌なんですよね。
俺が茶化す分には、愛を持ってやってるから良いんですけど、なんか知らない人に茶化されるのは嫌だなと思うんです。
-- すごい複雑な想いを抱きながら、ピープロを愛してらっしゃるんですね。
関 そうなんですよ。
プロフィール
関智一(右)
声優、俳優。1972年生まれ。東京出身。94年『機動武闘伝Gガンダム』の主人公ドモン・カッシュ役を担当し、以降数多くのアニメ、特撮作品に出演。05年よりリニューアルされた『ドラえもん』にてスネ夫役を担当。業界屈指の特撮ファン、コレクターとしても知られる。
インタビュアー・構成
タカハシヒョウリ(左)
ミュージシャン・作家。ロックバンド「オワリカラ」、特撮リスペクトバンド「科楽特奏隊」のボーカル・ギター、また作詞作曲家として活動する。その様々なカルチャーへの偏愛と造詣から執筆、番組・イベント出演など多数。テレビで初めて見たガンダム
は『機動武闘伝Gガンダム』。
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