GT-R(R35)にレクサスLC500!? 栃木県警が配備するゴージャスパトカー、 なぜ高級レア車種ばかり……の謎に迫る!


車体は他のパトカー同様に白黒に塗られているが、正面のレクサスマークに驚愕。毎週、県内の交通安全イベント等に引っ張りだこ。

日本警察において、防犯活動、事件や事故の対処など、治安維持のために必要な様々な事案に対処するヴィークルがパトカーです。警察官の足として使われるだけでなく、街中を流すだけで、犯罪の抑止にも繋がります。まさにパトカーの存在そのものが警察官と同じ役割を果たしているのです。

日本は、自治体ごとに警察本部を置いています。首都警察である東京都は別格であり、「警視庁」と名乗っていますが、その他は「神奈川県警察」「大阪府警察」「北海道警察」……といった具合に自治体名を冠しています。

それぞれの警察本部にパトカーが配備されています。車体には、警察本部名がきっちりと記されています。

そのパトカーですが、大きく分けて3つの方法で調達されています。

まず「国費購入」です。これは警察庁がパトカーを調達し、全国の警察本部に配備する方法です。例えば全国どこでも見ることが出来るトヨタ・クラウンのパトカーは、国費購入の代表格です。

そしてもうひとつが「自治体費購入」です。これは各自治体の予算で購入します。そのため、警察本部ごとに運用方法を考慮し、それに見合ったパトカーを選ぶので、独自色が現れます。
最後が「寄贈」です。自動車メーカーなどが、警察活動への協力として、パトカーを寄贈する例があります。

この「寄贈」という方法で、変わり種パトカーを次々と配備している警察本部があります。それが栃木県警です。

2020年、栃木県警はあるパトカーを配備したことで話題となりました。

それが「レクサスLC500」です。標準販売価格1500万円もする高級車がパトカーとして登場したのですから、注目されないわけがありません。

車体の前と後ろにはレクサスのエンブレム。後部にはグレードを示すLC500も。

白黒カラーリングとなったことで、厳つさが増したLC500。イベントだけでなく、交通取り締まり活動も行っているとのこと。

もちろん、警察庁がこの車種を選び、我々の税金を使って購入したわけではありません。さすがに、財務省も納得しないでしょう。当然ながら栃木県の予算で購入したわけでもありません。財政がいかに潤沢な自治体であろうと、県民を納得させるのは至難の業でしょう。

ということで、この車両は寄贈という方法が取られました。

2020年9月18日、栃木県庁前にて、「栃木県警察レクサスLCパトカー寄贈式」が執り行われました。ここで、福田富一県知事に大きなレプリカキーを手渡したのは、NPO法人に類する団体でも企業でもありません、なんと“個人”です。その方は、県内在住の中村和男さんです。警察マニアの間では非常に有名な方であり、もはや栃木県警には欠かせない人物となっております。

このように国産高級車をパトカーとして個人が寄贈するというのは、全国的に見ても非常に珍しい例です。同式典にて、原田義久栃木県警本部長(当時)より中村さんへと感謝状が手渡されました。

この日引き渡されたLC500は、その後交通部交通機動隊へと配備されました。さすがにパトカーだけあり、詳細なスペックは非公開です。市販車ベースに見ていくと、V型8気筒5.0リッターエンジンを搭載している2WDのガソリンエンジンモデルです。今では、交通安全イベントに引っぱりだこです。このLC500目当ての来場者も多く、栃木県警のシンボルとなりました。

実は中村さんが高級車をパトカーとして寄贈したのはこれが初めてではありません。

2018年には、驚きのGT-R(R35)を寄贈しました。こちらはなんと約1800万円もします。これまでもスカイライン時代のGT-Rを配備する警察本部はいくつかありましたが、R35を配備したのは栃木県警のみとなりました。この年、日産栃木工場が創業50周年を迎えました。日産側にとっても非常に名誉な事だったでしょう。

まさかのGT-R(R35)パトカー。東北自動車道での交通違反の取り締まり中の姿の目撃情報も多い。

配備先は“高速隊”こと、交通部高速道路警察隊で、東北自動車道の鹿沼インターチェンジの横にある鹿沼分駐隊です。

さらにメーカーからの寄贈もありました。それもなかなかマニアックな車種です。

それが2007年に日産から寄贈されたフェアレディZ(Z33)と、1999年にホンダから寄贈されたNSX(NA2)です。いずれも現役です。なお、NSXにつきましては、2代目となります。初代NSX(NA1)は1992年に寄贈されましたが、取り締まり中に事故にあって廃車となりました。

日産から寄贈されたフェアレディZ(Z33)。車体後部からみるとnismoのロゴが輝く走り屋仕様がカッコイイ。

ホンダから寄贈されたNSX(NA2)。この車種をパトカーとして運用しているのは栃木県警のみ。

さらにさかのぼると、1973年にJA共済連栃木が、マスタング・マッハ1を寄贈しました。1984年まで現役でした。

かつて東北自動車道をブイブイ言わせていたマッハ1。今は引退し、栃木県免許センターに保存されている。

改めて、栃木県警のパトカーラインナップには驚くばかり。それも高級車やスポーツカーが次々と寄贈される不思議な環境です。

これらは、県内で行われる交通安全イベント等に積極的に参加しており、目にする機会も多くあります。栃木県警のホームページにイベント予定がアップされていますので、皆様もこれらレア車種に直接触れてください。

  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

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