お酒博士・橋口孝司の酒千夜Vol.31 今年150回目の開催! ケンタッキーダービー公式ドリンク「ミントジュレップ」とは?


★今回おすすめのお酒(カクテル)★
「ミントジュレップ」

今回の主役であるカクテルを飲みながら、記事をお楽しみください。歴史や背景を知ると、より味わい深くなるかも。

■ミントジュレップとは?

出典:https://www.kentuckyderby.com/

ミントジュレップは、バーボンウイスキーをベースに、ミントと砂糖、に水またはソーダを加えて作るシンプルなカクテルです。ミント香りが爽やかで、特に春から夏場のカクテルとして人気があります。

ミントジュレップの原型が誕生したのは、18世紀頃アメリカ南部だといわれています。当時はラムやブランデーがベースで、現在のように、バーボンウイスキーをベースにするようになったのは19世紀後半になってからだなのだそう。

毎年5月にバーボンの一大生産地でもあるケンタッキー州で行われる競馬のレース「ケンタッキーダービー」の公式ドリンクとして広く知られるようになりました。

ケンタッキーダービーが開催されるチャーチルダウンズ競馬場では、オークスが行われる前日も含めた2日間でなんと12万杯ものミントジュレップが提供されるといわれています。ミントジュレップを作るために使われるバーボンウイスキーはなんと1万本!その数の多さには驚きます。

ケンタッキーダービーで行われる独特の習わしにも「ミントジュレップ」は登場します。出走馬が本馬場入場する際に、観客は「ミントジュレップ」を飲みながら、ルイビル大学のマーチングバンドの演奏のもとで「ケンタッキーの我が家(My Old Kentucky Home)」歌います。そしてレース後の優勝セレモニーでは勝者と州知事が銀のカップに注がれたミントジュレップで乾杯するのが伝統になっています。

日本でも、ケンタッキーダービーにちなんで、5月に開催される日本ダービーの会場である東京競馬場に、「Woodford Reserve Bar」が登場し、ミントジュレップなどが販売されたこともありました。

■ケンタッキーダービーとは?

「ケンタッキーダービー」は、例年5月最初の土曜日にアメリカクラシック三冠の最初のレースとして、ケンタッキー州ルイビルにあるチャーチルダウンズ競馬場で行われる競馬の競走です。ちなみに、アメリカクラシック三冠とは5月から6月にかけて開催される3歳限定競走のことで「ケンタッキーダービー」「プリークネスステークス」「ベルモントステークス」の3つを指します。

今年(2024年)は第150回目の開催となり、5月4日(土)※現地時間 に行われます。総賞金は500万ドル(約7億2,500万円)で、ケンタッキーダービー創設以来の最高額となっています。

アメリカの競馬の数ある競走の中でも最高峰のイベントとされ、ブリーダーズカップなどをしのぐ視聴率や観客動員数を保っています。スポーツイベントとしても非常に知名度が高く、“The most exciting two minutes in sports(あらゆるスポーツの中で最もエキサイティングな2分間)”と称され、国民的なスポーツイベントとなっています。また優勝馬にはバラのレイが掛けられることから、「ラン・フォー・ザ・ローゼス(Run for the roses)」とも呼ばれています。

ケンタッキーダービーが創設されたのは1857年。ケンタッキーダービーの行われる時期には2週間にわたって競馬場のあるルイビルでは「ケンタッキーダービー・フェスティバル」が盛大に催されます。
ケンタッキーダービーのオフィシャルメインスポンサーは、2006年以降はヤムブランド社(ルイビルに本社をおくケンタッキーフライドチキン、ピザハットなどの親会社に当たるアメリカ大手の外食チェーン)、2018年からはウッドフォードリザーブ(ブラウンフォーマン社)です。そのため、対外的なケンタッキーダービーの呼称は「Kentucky Derby presented by Woodford Reserve」となっています。

ケンタッキーダービー当日のチャーチルダウンズ競馬場 出典:ウィキペディア

ケンタッキーダービー公式サイト(英語)

■ウッドフォードリザーブ蒸溜所

ウッドフォードリザーブ蒸溜所は、現存するバーボン蒸溜所の中でも最古のひとつとされています。蒸溜所自体は1812年にオールド・オスカー・ペッパー蒸溜所として創業しました。蒸溜所はケンタッキー州ウッドフォード郡ヴァーセイルズという牧草地帯が広がる場所にあり、周辺にはウイスキーの仕込み水にも使われるライムストーンウォーターが流れています。この地域の牧草はミネラルが豊富で、強いサラブレッドが育つ場所としても世界的に有名で、蒸溜所の周辺には数々の名馬が育つサラブレッド牧場も点在しています。

サラブレッドにも縁が深い『ウッドフォードリザーブ』は、1999年から「ケンタッキーダービー」のオフィシャルバーボンになり、2018年からはオフィシャルメインスポンサーとなっています。ケンタッキーダービーでは、ウッドフォードリザーブを使って作ったミントジュレップが提供され、毎年限定デザインラベルの「ケンタッキーダービーボトル」が発売されます。(日本未発売)さらに今年は150回開催を記念したバカラボトルに入った「KENTUCKY DERBY 150: BACCARAT EDITION」も発売されています。(日本未発売15,000ドル)

ウッドフォードリザーブ ケンタッキーダービーボトル(2024年)出典:https://www.brown-forman.com/
KENTUCKY DERBY 150: BACCARAT EDITION(2024年)出典:https://www.brown-forman.com/

ウッドフォードリザーブは、「クラフトバーボン」「スモールバッチ(少量生産)」と呼ばれ「手造り、小規模、高品質」にこだわり昔ながらの手法でウイスキー造りをしているのが特徴です。

例えば、発酵工程では一般的に使われているステンレスタンクではなく、フロリダ産サイプレス(糸杉)の木桶発酵槽で時間をかけてじっくりと発酵しています。また蒸溜ではバーボンでは珍しく、モルトウイスキーの蒸溜に使われる銅製ポットスチルを使用しています。熟成樽の天板と底板にチャー(炎で焼き焦がすこと)を施すのも、ウッドフォードリザーブならではのこだわりです。

日本での正規輸入代理店は2024年4月からブラウンフォーマンジャパン株式会社となりました。

ウッドフォードリザーブ蒸溜所の蒸溜器 出典:ウィキペディア
  • 株式会社ホスピタリティバンク代表取締役 ホテルバーテンダーから料飲支配人、新規ホテル開業準備室長、運営などをてがけ26年間ホテルに勤務。2008年より株式会社ホスピタリティバンク代表取締役に就任。バー開業コンサルティングなどを手がけ酒類関連団体の顧問、理事を歴任し国内外で講演、セミナーを行っている。ウイスキーバープロデュース・運営(2017-2019)を行う。 シャンパーニュ騎士団「シュバリエ」、ベルギービールプロフェッサー、日本伝統濁酒学博士などの称号を持つ。 2015年からは「橋口孝司 燻製料理とお酒の教室」にてセミナーの開催や、ウイスキーを愉しむイベント「ザ・シークレットバー」も銀座と西麻布にて定期的に開催している。 「ディスティラリーパッケージ1992」を皮切りに、「ウイスキーの教科書」「カクテル&スピリッツの教科書」「本格焼酎名酒事典」「ビジネスエリートが身につける教養 ウイスキーの愉しみ方」などを執筆、「世界のウイスキー図鑑」「世界のベストウイスキー」「ハリウッドカクテル日本語版」などを監修。ウイスキー、カクテル、スピリッツを中心に酒類に関する執筆・監修は26冊以上。 Webでは、「たべぷろ」にて執筆(https://tabepro.jp/author/hashiguchi) 「江崎グリコ お酒の話」を監修(https://jp.glico.com/osake/index.html)
  • https://www.hospitality-bank.com/

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