リモートワークが導入され効率的に働くことが普通になった今だが、人々が働くビルそのものの効率化も進んでいるという。パナソニック・エレクトリック・ワークス社と福岡地所が共同で進める、「スマートビル」実現に向けた実証実験を取材した。
これが次世代のビルプラットフォームの共同実証実験だ!
そもそも建物の高機能化や設備管理の省力化のため、現在多くの建物には「BAS(ビル・オートメーションシステム)」とよばれるシステムが導入されている。しかしBASは、建物ごとのクローズドなシステムであることから、これまで柔軟なリニューアルやアップデートが難しかったという。
そこでこうした問題を解消するため、設備や環境、人といった様々な情報を、オープンなAPIとして提供する、次世代のビルプラットフォームの共同実証実験が、2023年12月に行なわれ、今年3月まで実施された。
具体的には、ビルOSを実装した建物の提供価値の検証で、建物内の設備やシステムに関わるデータを収集、蓄積、連携する機能を備え、複数拠点において、建物内の各設備が保有している様々なデータや制御などの管理ポイントを、クラウド上で統合管理する。
データを分析した後、新たなサービスとして活用され、遠隔監視、複数拠点の一元管理などを可能にするというもの。
様々な設備がオープンAPI化されたビルでは、利用者や管理者がアプリを通して、ビルを自分流に、快適に使うことができるというシステムだ。
実際に実験では、業務用エレベーター内にビーコンを設置し、清掃スタッフや管理スタッフが小型ビーコンを使用し、ゲートウェイとの組み合わせで、スタッフの所在地や作業状況、エレベーターの稼働状況などを可視化。
エレベーターの所在を把握することで、清掃スタッフは待ち時間を別の作業時間にあてるなど、効率的な仕事につなげることができる。
従業員用のエレベーターに設置された小型ビーコンや、従業員が身に付けたビーコンからの信号を、各所に配置されたゲートウェイで受信する仕組み。
将来的には、建物内のデータをオープン化し、サービスやアプリと自由に接続することで、テナント企業、ワーカーの利便性向上と建物や周辺エリアの価値向上を目指すという。
ビルのセキュリティーゲートからの来訪者の導線や、飲食店などテナント企業の従業員などにも対象を広げる予定だという。
福岡地所 建築部長の田代剛氏は「今回の実証実験は、ファーストステップです。ビル管理のタスク・サービスにおける有効性を検証した後、外部事業者などを念頭に置いたサービスの検討を進め、2026年には実建物への実装を予定しています。以降既存物件へ順次展開していきます」と、構想を語った。
さらにアドバイザーである、Kii代表取締役会長の荒井真成氏も「現在、様々な分野でオープンAPI化が進んでいます。私自身、米国や中国、インド、欧州などさまざまな地域で、DXソリューションに関わることで、アプリなどを作れるようなプラットフォームの実践が大切だと考えています。長年挑戦したい分野でした」と、意気込みを語った。
こうした流れは、スマートビルガイドラインと連携した業界全体によるもので、脱炭素化を目指す動きなのだが、今後ビルOSが一般的に普及すれば、ビル内の混雑の緩和や手続きの簡素化が進むだろう。
さらに、個人の目的や趣味・嗜好に合ったアプローチなども可能となり、より便利で暮らしやすい社会が目指される。
お客さんの熱気の高まりを可視化する演出とは!?
続いて今回は、パナソニック エレクトリックワークス社が手がける、街演出クラウド「YOI-en(ヨイエン)」を活用した、新たな取り組みも取材した。
「YOI-en(ヨイエン)」は、照明をクラウドで繋ぎ、新たな体験価値を生むコンテンツ。
佐賀県佐賀市にある「SAGAアリーナ」で行なわれた、佐賀をホームとするVリーグ「久光スプリングス」対「東レアローズ」(2月10日)の試合に、ユーザー参加型の演出を取り入れた、実証実験が行なわれた。
試合前の応援合戦と選手入場時に、ライトの色が変化するという照明演出で、チームカラーのライトで照らされた会場は熱気と興奮に包まれた。
まず来場者は、指定のQRコードよりスマホを連動させ、専用ウェブサイトにアクセスする。座席エリアや応援チーム、推し選手といった属性情報を入力し、応援ボタンを連続タップ。アリーナ内の照明と連動することで、簡単に会場の光演出に参加できるというものだ。
会場内で配布されたチラシをもとに、スマホを連動させる仕組みだ。
アリーナのコートの四隅に置かれたムービングライトは、タップ数が増えることで、白色だったライトが、久光スプリングスのチームカラーである青色に変化!
選手入場時の演出は、事前に登録した推し選手を元に、タップ数が一定数を超えると、照明演出もバージョンアップする。選手と来場客に一体感が生まれるのもポイントだ。
「今までの演出照明は見るということに、主眼が置かれていましたが、YOI-enは、操作し体感できるもの。体験価値をも提供できます」と話すのは、パナソニック エレクトリックワークス社ソリューションエンジニアリング本部ソリューション事業統括部パブリックエンターテインメントカテゴリー商品・サービス企画部街演出サービス企画課の上野山浩志氏。
久光スプリングス GM補佐の小早川武徳氏も「お客さんの熱気の高まりを可視化できるのは、バレーボールならではの演出です。SAGAアリーナは、広い会場でYOI-enとの相性も良く、色と音楽の掛け合わせで試合を一層楽しんでもらいたい」と期待を語った。
来場客に感動を届けるだけでなく、事業者の運用支援を行なうクラウド機能も搭載する「YOI-en」。今回は、既設設備を活用しながら、ユーザー参加型演出を実現するサービスとして実現した。今後Vリーグはもちろん、様々なスポーツ観戦の展開に期待したい!
問い合わせ先
パナソニックエレクトリックワークス社
☎03-6218-1131