『帰ってきた あぶない刑事』劇場版最新作公開記念 おかえり! タカ&ユージ。横浜を騒がした、あのふたりが乗ったクルマを紹介!!

あのふたりが帰ってくる!?

港町、横浜の街を守る港署。そこには型破りな刑事がいた。舘ひろし演じる鷹山敏樹(タカ)と柴田恭兵演じる大下勇次(ユージ)、ふたりの刑事を中心に港署の活躍を描いた「あぶない刑事」シリーズ(以下、あぶデカ)。1986年に放映が始まった同シリーズは軽妙なやり取りと豪快なアクションが見所で何本も映画されるほどの人気作品だ。そしてあぶデカは派手なカーアクションや意外なクルマの登場などクルマ好き的な視点からも見ていても楽しい。そして5月24日には劇場版最新作『帰ってきた あぶない刑事』が公開決定! 様々な業界でプレイベントも行われるなど公開前から盛り上がりを見せる同作品、予習も含めてタカとユージが乗ったクルマをご紹介。

昔の恋人に出会った気分だぜ

あぶデカで俳優並に活躍するのがレパードだ。作品に登場するのはF31型。レパードとしては2代目になり、デビューは1986年。それまでの4ドアモデルから一転、2ドアクーペのみのラインナップになった。なお4ドアの初代モデルの系譜はその後登場するセフィーロに引き継がれていくのだが、あぶデカでは仲村トオルが演じた町田刑事が乗り回すことも考えると、やはりあぶデカはレパード抜きには語れない。映画『さらば あぶない刑事』では出世した町田刑事に勝手に乗らないよう注意されていたユージが「レパードまで用意してよく言うぜ」と気の利いたセリフを言っている。

さてレパードだが当時このカテゴリーはトヨタ・ソアラが市場でのメーン。その牙城を崩すべく日産が送りこんだ刺客とも言える。F31型は7代目スカイライン、R31型と基本コンポーネントを同じにし、スカイライン開発のレジェンド、伊藤修令氏も開発に携わっていたモデル。高価格帯のハイソカーということもあり、レパードはすべてのモデルにV型6気筒エンジンが搭載されていた。エンジンバリエーションは3リッターNAの185PSを頂点にターボとNAの2リッターの3つ。トップグレードには超音波で路面状況を把握して減衰力を変化させるスーパーソニックサスペンションが採用されていたのも注目したいメカニズムだ。

後期型になるとトップエンドモデルに搭載される3リッターエンジンはターボで武装し、255PSまでパワーアップされた。このパワーユニットはマニアックな話になるが大ヒットしたバブルカーの異名を持つ初代シーマに搭載されたVG30DETそのモノである。この過剰なまでのパワーアップはあぶデカの作品中でも見られ、ドリフトシーンがより迫力のあるモノに。

また派生モデルも作られ、北米では通常のラインナップにオープンモデルがラインナップしているほか、イタリアの名門カロッツェリア、ザガートと日産のオーテックが共同開発したオーテック・ザガート・ステルビオが限定販売された。ステルビオはフェンダーミラーをボンネットデザインに同化するなどこだわりのデザインを持っている。

多くのファンが応募した劇中車!

1996年に公開されたリターンズでふたりの愛車となったのは、イタリアの名門アルファロメオがリリースするセダン、164だ。同車のデビューは1987年。アルファロメオは前年にフィアットが買収。もともと164は後輪駆動のモデルで開発していたらしいのだが、フィアット傘下のランチア、サーブと基本を同じにするティーポ4プロジェクトに従うカタチでのデビューになった。

買収され、親会社のプロジェクトながらもアルファロメオは、エンジンは自社製にこだわりそれを突き通した漢でもある。そのティーポ4プロジェクトで生まれたのは164以外にランチアからはテーマ、サーブは9000、フィアットはクロマになるが統一的なクルマと思いきや、テーマにはフェラーリ308のV8エンジンを搭載した8.32をラインナップに加えるなど、それぞれの個性を残しているのも特長。話は164に戻るが、クルマをデザインしたのはかの名門、ピニンファリーナが担当。

日本へは3リッターのV6エンジン搭載車が導入され、ハイエンドモデルはアルファロメオのレースシーンで活躍した四つ葉のクローバー、クアドリフォリオを冠するスポーツモデルもあった。後期モデルになると排気量が3リッターから3.2リッターへ引き上げられ、ドイツ・ゲトラグ製の6MTを装備した四輪駆動のQ4もラインナップに。

164に搭載されるV6エンジンはクルマ好きにはひとつの頂に位置し、生きモノのような官能性を味わえるユニットとしても知られる。忘れてはイケナイのが164にはF1のエンジンを載せたプロカー選手権(編集部注:残念ながら実施されませんでした)用のレースカーも作られている。

作品中では年齢を重ねていい大人だけれども熱血漢なふたりにぴったりな1台として描かれており、また日本には設定のない特別色というこだわりもチェックしたいところ。なおこの劇中車は視聴者にプレゼントされたとか。

渋いふたりにベストマッチなオトナのクーペ

1998年公開のフォーエヴァーではマセラティ・ギブリが採用された。このクルマのチョイスはあまりに劇中のふたりに似合い過ぎと思ったファンも少なくないはず。同車は1992年に発表され、ギブリとしては2代目になる。

キレのあるエッジを持つデザインはもちろん、ガンディーニの手によるモノ。1960年代のスーパーカーのネーミングを復活させただけのことはあり、こだわりの動力性能を持っている。当時経営難に陥っていた時にキャラの濃い経営者であり、スーパーカーの名前にもなっているデトマソがマセラティの舵を担い、業績を回復させたモデル、222シリーズの後継になる。そのためエンジンを始めとする基本コンポーネントはほとんどがキャリーオーバーされている。

パワーユニットはもちろんビトゥルボ。ビトゥルボは2つのターボを意味し、事実ギブリも日本のIHI製のターボチャージャーで武装し、285PSの最高出力を誇る。日本へは2.8リッターのMTとATモデルが導入され、MT車は当初5速だったが、最終モデルは6速になっている。

そしてこの時代のマセラティといえばインパネセンターに位置する金時計が有名。この時計はスイスのラ・サール社のモノ。モデル末期にはワンメークレース様のギブリカップが限定販売された。余談だが、劇中ではAT車とMT車の2台が用意されていたという。

日本人がデザインしたイタリアンセダン登場!

2005年公開の『まだまだあぶない刑事』でもイタリアの伊達男御用達ブランド、マセラティを採用。モデルはクアトロポルテ。前作では2ドアクーペだったのに対して今作ではアルファロメオ164以来の4ドアモデルになった。フラッグシップセダンのクアトロポルテとしては5代目を数え、デビューは2004年。先代よりも一回り以上大きくなったボディは全長で5mをオーバーする堂々としたモノ。ボディデザインはピニンファリーナなのだが、デザイナーは日本人。当時ピニンファリーナに在籍していた奥山清行氏の手によるクルマなのだ。

パワーユニットはフェラーリF430のそれをベースに開発されたV8。最高出力400PSを誇り、フロントミッドに搭載されるそれはライバルメーカーのモデルよりも一回り以上軽快な走りを提供した。

あぶデカはやっぱり日産車に限る?!

『さらばあぶない刑事』(2016年公開)ではふたりのクルマは日産GT-Rに。それまでのスカイラインのネーミングが外れたR35型。デビューは2007年。エンジンは現在まで一貫して3.6リッターのV6ツインターボだが細かい仕様変更によって当初の480PSから大幅にアップし、今ではNISMOの600PSを誇るに至っている。駆動方式はハイパワーを確実に路面に伝える4WDで雨天や雪道でも楽しめるオールラウンドスポーツカーとメーカーも謳う。

2019年にはGT-Rの誕生50周年記念モデルが登場。その生産を担当するのは名デザイナー、ジウジアーロが立ち上げたイタルデザインで輸入車扱いに。デザインも通常モデルとは違い全長で94mm、全幅で97mm拡大され、全高は54mm低くなっている。ベースは当時のGT-R NISMO。この限定車はデザインだけでなくエンジンにも手が入り、720PS、780Nmと大幅にパワーアップした。世界で50台のみが作られ価格は1億4530万円からとなっており、ボディカラーによっても価格が異なるスーパーなモデルだ。

そしてGT-Rのパトカーなんていかにも映画の世界の中の話と思いがちだが、2018年には実際に栃木県警が交通警察隊のパトカーとして採用されている。なお劇中に登場するモデルは2011年以降の中期型。

歴代のタカ&ユージが乗ってきたモデルはいずれもふたりのイメージをそのままにしたしたクルマ。ふたりの活躍以外にも最新作のクルマも要チェックだ!

東映
帰ってきたあぶない刑事

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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