粋だぜシボレー! コルベットE-Ray ファンの前で鮮烈デビュー!!

コルベット史上初の電動モデル

コルベットといえば今や少数派となった自然吸気の大排気量エンジンを載せ、後輪を駆動する生粋のスポーツカーでもある。その「御神体」へのこだわりも半端なく、サーキット走行などで有利とされるエンジンを高回転化しやすいDOHC方式を採用せず、コルベット8世代に渡り採用され続けるOHV方式のモノを載せている。年季が違うって、と聞こえてきそうなほどブレない漢として、武士は食わねど高楊枝を決め込む数少ないクルマなのだ。

しかーし。そのコルベットもついに世界的な電動化の流れを受け、ついに電動化を果たしたコルベットE-Ray(以下E-Ray)を発表、予約受付を開始した。

ブレた? ブレてない?

E-Rayはコルベット史上初の電動化による全輪駆動モデル。電動化にあたっては当然モーターを積む必要がある。ミッドシップレイアウトの現行モデルはフロントアクスルにそれを搭載、モーターは前輪を、エンジンは後輪を駆動する全輪駆動を採用した。この全輪駆動方式はインテリジェントeAWDシステムと呼ばれ、路面状況や車速、ステアリングの角度を常にモニタリングし、前輪と後輪の動力配分を瞬時に最適化する賢いモノ。

電動化にあたり、エンジン搭載位置などのレイアウト変更はなし。1.9kWhの駆動用バッテリーはセンタートンネルに置かれ、通常モデルと同様の積載性や快適性を持つのが特長。

「コルベット、ついにお前も電動か(化、失礼)」となりそうだが、組み合わされるエンジンは信念を通すOHVのV8。それはZ06を除く他のモデルと同じ6.2Lの排気量から502PSを誇るモノだ。そしてこのユニットは今や貴重なNAエンジンでもある。これを聞いてしまったら、「日和ったな、コルベットも」とは思わないはず。結果的には電動化によって加速力に磨きがかかり、OHVの奏でるサウンドや振動は健在と良いことづくめなのだ。いわゆる「へのツッパリはいらんですよ」(編集部注:ゆでたまご先生の国民的人気漫画、キン肉マンのセリフ)というモノスゴイ自信作なのだ。

またブレずにパフォーマンスを追求している同車のパフォーマンスを享受できるようドライブモードは専用のモノを含め8つ。特にステルスモードはモーターのみの走行を可能にし、早朝ドライブや住宅街での隠密行動に有効。その最大航続距離は4.8〜6.4kmで最高速度は約72km/h。モーターのみの走行ではFWDとしての側面をも持つ。あまり遭遇するオーナーは多くはないと思うけれど雪道などでの発進には非常に便利でもある。このモード名はさすがボディデザインのインスピレーションがF-35戦闘機にあるだけのことはあると頷いたのは筆者だけではないはず。

エンターテナーの国のパフォーマー

アメリカ人のDNAとも言えるOHVのV8のパワーは、よぉーくわかったからモーターはどうなのよ、となるのは人情。モーターの出力もエンジン同様、デカさが正義! 的なアメリカンそのモノなのだ。モーター単体の出力はコンパクトカー並みの162PS。V8エンジンと合わせたシステム合計出力は664PS!

バッテリーは外部充電を持たず、時速26km/h以上での走行時や減速時にモーターを通して発電する。そのため走っていれば必要な時にバッテリー残量がなくイマイチ(といっても500PSオーバーのエンジンがあるけれど)な加速がないのも魅力。

ヲイ、バッテリーやモーターを載っけたらクルマが重くなるじゃないかい、とご心配のオーナー予備軍のみなさま。確かに車重自体は通常の3LTの1670kgに対してE-Rayのソレは1810kgと重くなっている(ちなみにハイパフォーマンスモデルZ06は1720kg)けれど、時速60マイル(約96km/h)までの加速は2.5秒、0-400mは10.5秒とまさにスーパースポーツ級。その速さに対応するブレーキは熱にも強いカーボンセラミックブレーキを採用。サスペンションは専用チューンが施されるなどGT的要素からサーキットマシンまで幅広い魅力を持つのがE-Rayなのだ。

右ハンドルのみが設定されるインテリアデザインは通常モデルと同じモノ。シートは快適性とホールド性が高い次元で両立したGT2バケットシート、ステアリングはスポーティーなビジブルカーボンステアリングを標準装備。E-Rayらしい装備といえば、センタースクリーンに配されたインフォテインメント内のAppだ。これは走行中のモーターとエンジンの動きといったパフォーマンスデータをリアルタイムで表示するモノ。

コルベットは1963年のC2と呼ばれる2代目モデルがシャープなデザインなどで「赤エイ」(海鷂魚)を意味するスティングレイと呼ばれたが、21世紀のモデルはどうやら赤エイではなく「シビレエイ」に進化したようだ。

ここは富士のシボレー畑か!?

E-Rayの発表は「CHEVROLET FAN DAY 2024(シボレーファンデイ、以下ファンデイ)」の会場で行われ、プレス向けの発表会後すぐにお披露目。会場にはシボレーファンが500人以上押しかけており、粋なファンファーストの発表になった。E-Rayでサーキットを走ったシボレーの若松 格社長もクルマの出来に頬が緩んでいた。

同イベントはゼネラルモーターズ・ジャパンの主催。E-Rayはお披露目だけでなく、デモ走行も目玉の一つ。ピットロードからコースインするときの無音で走るコルベットの雄姿に会場のどよめきの方がクルマの音よりも大きいくらいだったが、長い富士のストレートを疾走している時のV8サウンドに聞き入っているファンも多数(筆者もその一人だったが)いた。

全国から249台のシボレー車が集まった会場は壮観。映画「翔んで埼玉」の挿入歌として注目を浴びた、歌手さいたまんぞう氏の「なぜか埼玉」の、♪右も左もすべて埼玉♪といった歌詞のごとく右も左もすべてがカマロやコルベットといったシボレーのクルマで会場は埋め尽くされた。

サーキットで行うイベントだとスポーツ走行やクルマの特性を実際に学ぶドライビングアカデミーなど乗り手だけが楽しめるモノと思われがちだが、

会場は電動キッズカーやレザークラフト体験といった各種アトラクションが多数用意されており、家族で来ても退屈知らず。フィナーレは参加者によるコースをまわるパレードラン。また来年! の掛け声とともにイベントは終了したのだった。

関連記事:シボレー・コルベット3LT

コルベット
E-Ray 3LZ

価格2350万円から
全長×全幅×全高4685×2025×1225(mm)
エンジン6156ccV型8気筒
最高出力502PS/6450rpm
最大トルク637Nm/5150rpm
モーター最高出力162PS
モーター最大トルク165Nm

シボレー
コルベットE-Ray
問GMジャパン・カスタマーセンター 0120-711-276

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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