約5年ぶりの大型新製品! “カメラのニコン”の技術を応用した眼鏡レンズの実力とは。


今年の6月、ニコン・エシロールから新しい老眼対策レンズが発売された。その名は「Zシリーズ」。カメラ好きなら、この名前にピンとくる人もいるのではないだろうか。そう、このレンズは、ニコンが誇るカメラの開発技術を初めて眼鏡レンズに応用した新しいアプローチの製品なのだ。

文/伊藤美玲

コントラストの向上にアプローチしたレンズ

眼鏡店に足を運ぶとき、購入するフレームのイメージはある程度思い描いていたとしても、レンズのメーカーや種類まで目星をつけてから行くという人はそう多くはないだろう。そうしたなかこの老眼対策レンズZシリーズは、カメラ好きを中心にすでに指名買いも多いというから、期待の高さがうかがえる。

老眼対策レンズZシリーズの大きな特長は、視界の「コントラスト向上」にアプローチした老眼対策レンズであること。コントラストが向上するとは、簡単にいえばクッキリ見えるということで、小さい文字も見やすくなる。さらに、従来の遠近両用レンズに比べて手元のクリアに見える範囲が広くなっているのも特長のひとつだという。

手元のクリアに見える範囲が拡大。さらにコントラストが向上し、小さな文字もよりクッキリと見える。

そのコントラスト向上を叶えたのが、“カメラのニコン”が誇るコントラスト解析技術の「MTF」である。このMTFを初めて眼鏡レンズの指標とすることを実現し、ニコン独自の新しい光学設計エンジンを開発。見え具合を定量的かつ直接的に評価できるようになったことで、シーンに応じて最高の見え心地の眼鏡レンズを提供できるようになったというわけだ。

ニコンのMTF解析をもとに収差や度数を新次元でチューニング。コントラスト向上を実現。

少々話が難しくなってしまったが、百聞は一見に如かず。ということで、この老眼対策レンズZシリーズのレンズで眼鏡を新調してみることにした。

メーカー直営の眼鏡店で老眼対策レンズZシリーズを体験

ニコンメガネの店内。中央には大きなソファがあり、ゆっくりと眼鏡の相談ができる。

今回足を運んだのは、表参道にある「ニコンメガネ」だ。メーカー直営の眼鏡店とあり、ニコンのレンズに関する知識はピカイチ。スタッフは全員、国家検定資格である眼鏡作製技能士1級の所持者でもある。

今回担当してもらったのは、店長の佐藤勝彦さん。接客は、まずカウンセリングから始まる。なぜなら新たに眼鏡を作るときは、“その眼鏡を使う環境”や、“自分の好みの見え方”に合った設計、そして度数設定にしてもらってこそ、レンズの性能を最大限に生かすことができるからだ。

そのためには、“これから作る眼鏡は、どこを見るために使いたいのか”、“手持ちの眼鏡ではどんなときに見えづらさを感じるのか”、“どんな見え方を好むのか”など、自分の情報や希望をなるべく伝えておくことが重要だ。現在使っている眼鏡やコンタクトがあるなら、その度数データも参考になるため、ぜひ持参したい。

カウンセリングが終わると、測定へと移る。ニコンメガネには国内でもまだ数少ない最新の測定機器が揃っているのも特長だ。

筆者が覗いているのは「WAC700」というエシロールルックスオティカ社の最新機器。中央の光を覗くだけで、度数だけでなく角膜形状や波面収差の測定が可能。その隣には「ACCOMOREF2」という目の調節機能を解析できる機器も。

私は同店で数回測定を経験しているので、以前のデータと他覚検査のデータをもとに自覚検査(視力表を使用し、どこまで見えるかなどを答えていく検査)がスタート。私はライターという仕事柄パソコンを使う時間が長く、本やスマホなど手元を見る時間も長い。一方で、遠くの景色もある程度くっきり見たい。そうした好みも加味しながら度数をチューニングしていく。

測定室の様子。最新機器の導入により、スタッフが別室から遠隔操作にて度数を測定する「リモート検査」を実現している。

約40分ほどじっくり測定をしたら、今度は導き出された度数でテストレンズを装着する。今回レンズは老眼対策レンズZシリーズのなかでも、遠方の見え方を重視したアクティブタイプに決定した。店内には、日常のシーンに近い状態でテストレンズを試すことができる体験コーナーが設けられており、自分の見たい距離がしっかり見えるかをリアルに確認することができる。

こちらは、デスクワークを想定した体験コーナー。ノートパソコンやデスクトップのモニターの見え方などを、リアルに確認することができる。

じつは、このテストレンズでの確認は大変重要だ。もちろん、スタッフは測定の結果を踏まえて最適な度数を提案してくれているが、その度数で本当に快適かつ好みの見え方になっているのか、その正解は自分のなかにしかない。ここで見え方に違和感あがるのなら、遠慮せず必ず伝えて、改めて度数を設定してもらおう。そのための“テスト”であるのだから。

テラスに出て、遠くの見え方も確認。

度数が決定したら、ここでフレーム選びへ。ニコンメガネでは、測定後のフレーム選びを推奨している。近視が強い人や遠近両用を希望する人などは、先に選んだフレームが必要なレンズに適さない場合があるからだ。

今回私は手持ちのフレームを持参し、レンズを入れてもらうことにした。そのフレームを自分の顔に合うよう調整してもらったら、今度は「FP-FIT MAX」という機器の前に立ち、オーダーメイドレンズをあつらえるのに必要となるフレームのカーブ角度やレンズと目の距離などのデータを精密に測定する。

正面が鏡状になった機器の前に立つだけで、内蔵のカメラにより瞬時に測定値が得られる。

これで、一連の行程は終了だ。所要時間は約90分。来店時は事前に予約をし、時間に余裕をもって訪れたい。

眼鏡が完成! 見え方はいかに!?

左上が完成した眼鏡。その下のカードの裏面には、レンズの製品名や自分の度数のデータなどが記されている。

出来上がりまでは約10日間。受け取ったものを店内で掛けてみて、まず1番に感じたのがやはり小さな文字の見やすさだ。フレームと一緒に渡されたレンズデータのカードの文字の輪郭が鮮明になり、スマホの文字もこれまでより濃くしっかりと見えたのが印象的だった。

仕事で近くを見ることが多いことを考慮し、今回遠方の度数は手持ちのものより少しだけ下げたのだが、コントラストが高くなっていることで遠くの景色もピシっと見える。反対に加入度数は、+0.25上げたのだが、足元はもちろん、歩きながら周囲の景色を見てもユレや歪みを感じることはなく、階段もスムーズに降りることができた。

私は仕事柄各種メーカーの遠近両用レンズを試す機会を得ているが、このZシリーズの魅力はやはり宣伝文句通りの「手元クッキリ」だと感じた。この原稿は眼鏡を受け取ってから2週間後に執筆しているのだが、すでに細かい文字の資料や雑誌を読むときには欠かせない存在となっている。一生懸命見ようとせずとも、小さな文字まですっと目に入ってくる感覚が心地いい。

まだ加入度数が+1.25なので、同製品の長所を存分に享受できていない部分はあるかもしれないが、視線の移動もスムーズで、自然な姿勢でパソコンやスマホを見ることができている。もちろん手元だけでなく遠くもクッキリ見えるため、1日中この1本で快適に過ごすことが可能。クッキリとした視界が好みなら、きっと快適に使えるはずだ。

最後に。自分の見え方に合う高性能なレンズを使えば、視界をアップデートできる。これは、ぜひ多くの人に知ってほしいことだ。見え方の質は、生活の質にも関わってくる。自分が老眼になること、そして遠近両用眼鏡を使うことに抵抗がある人もいるかもしれないが、ここは抗わず眼鏡に頼るのが吉。手元の見えづらさを感じたら、この老眼対策レンズZシリーズを体験してみてはいかがだろう。

老眼対策レンズ
「Zシリーズ」製品ページ
ニコンメガネ
住所:東京都港区南青山5-5-4 LUCE南青山2F
電話:03-6427-4850
営業時間:11:00AM~19:00PM (月曜・祝日は休業)

  • 眼鏡ライター。眼鏡専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、モノ雑誌やWEB媒体にて眼鏡にまつわる記事やコラムを執筆している。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では眼鏡の世界の案内人として登場。眼鏡の国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査委員も務める。
  • https://twitter.com/mireiton

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