キミはアルピナを知っているか? エンスージアスト憧れのブランドから高性能セダンとワゴンが登場!

BMWぢゃないのALPINAなの!

ALPINA(以下アルピナ)からBMW3シリーズ、4シリーズをベースにした最新モデル、B3 GT、B4 GTが登場した。B3 GTはセダンボディのリムジンとステーションワゴンのツーリングを用意するなどブランドの主力中核モデルになる。B4 GTはBMWブランド同様のクーペだ。

アルピナはドイツの自動車メーカー。その出自はチューニングパーツを主に作っていた生粋の技術屋になる。創立は1961年。驚くかもしれないが超初期のアルピナは事務機器メーカーとしての顔も持ち合わせ、タイプライターも製造していた。

この事務機器製造で名を馳せたアルピナの創立者の子供、ブルカルト・ボーフェンジーペンが自己所有していたBMW1500のキャブレターを2基に変更。これをさらに深堀りしてツインキャブレターキットを発売、これがブランドの始まりだ。そしてパワーアップしていても実用的なクルマであることは今も変わらないブランド哲学でもある。

このチューニングキットの出来の良さが当時のBMWの営業部長の目に留まり、BMWのディーラーからもその商品が販売されるように。そしてそのチューニングパーツを取り付けても他のBMW車と同じメーカー保証が継続された。

1968年にはモータースポーツへの参戦を開始、レーシングチームにはニキ・ラウダなどの超一流選手を集め、1970年にはドイツのすべてのチャンピオンシップで優勝、クルマだけでなくクルマ作りのパフォーマンスの高さを証明する。1977年にはレースから撤退し市販車の開発をアナウンス、翌年には当時の初の市販車B6 2.8をリリースした。その後アルピナはBMWのクルマをベースとしつつもあくまでもドンガラを使い、まったく別のクルマを作り続けているのだ。

らしさ全開のニューカマー

アルピナがBMW傘下になったのは2022年3月。え? 今までのブランドクオリティはどうなるの、と心配しそうだが、今回発表されたB3 GT、B4 GTはアルピナのブッフローエ工場で生産される。なお同工場での生産体制は2025年まで継続するとアナウンスされているから、「純」アルピナにこだわるユーザーは早めにオーダーした方が良いのかもしれない。

B3、B4はそれぞれBMWの3シリーズ、4シリーズがベースなのは前出の通り。そしてGTのバッジはアルピナブランドでも理想的なモデルにのみ付与される特別な証。

例えば高性能車のひとつのモノサシに0-100km/h性能がある。静止状態から100km/hまで加速するのに何秒かかるか、と言うヤツだ。B3 GTは一見ただのセダンに見えるのに3.4秒とポルシェ・カレラS並の加速を披露する。使い勝手に優れるワゴンのツーリングでさえ同3.5秒というから恐れ入る。

その俊足を実現するエンジンは3リッターの直6ツインターボに4輪駆動技術を組み合わせたモノ。世界中の自動車メーカーがイケイケだった頃は「排気量アップこそ使い勝手とモアパワーを両立させる」ことがアルピナ流だったが今は世間でいう「良識の範囲内」のパワーユニットに。このエンジンはアルピナでも高い支持を持っていたモノだが、GTバージョンではさらに34PS増しの529PSを誇る。もちろんハイパワー化に耐えられるようフロントフード内にはゴツい補強材が見られる。これはアルピナ独自の補強パーツ、ドーム・バルクヘッド・レインフォースメント・ストラットと呼ばれるモノで

ハンドリングに定評のあるBMWのソレをさらに磨きをかけたドライビングが可能。もちろんアルピナの美点でもある優れた乗り心地、操縦安定性は非常に高い次元で両立。可変レシオのスポーツ・ステアリングのセットアップも変更されている。

インテリアはGT専用と言っても過言ではないアルピナ最高級の「ラヴァリナ・レザー」がふんだんに使われ、ステアリングは当然手作業。驚くことにこのレザーはフロアマットの縁取りにも使われている。そして注目はBMW3シリーズや4シリーズでは廃されたシフトセレクターの採用だ。

控えめの美学

日本的美徳感にも通じそうな哲学を持つアルピナ。チューニングカーといえば、派手なエアロパーツで武装してひたすらにパワーを求め、強大なパワーのためには乗り心地をスポイルするようなガチガチな足回りにするのが想像に難しくないが、アルピナはそれをしない。あくまでも実用的で優れた道具に徹する。これも創業から変わらないアルピナのクルマ作りのコンセプトだ。それだけの性能を持ちながらも派手なエアロパーツひとつ装着していない。 フロントディフューザーに組み合わされる新デザインのリアディフューザーしかり。

このギャップもマニアにしたら萌え萌えなポイントのひとつなのだけれども。ある意味アルピナのブランドロゴは水戸黄門の印籠みたいなモノかもしれない。

そのクルマ作りはベース車を否定するところから始めない。むしろいい面はより伸ばす、育児教育のような感じだろうか。それぞれのパーツを高性能化するだけではなく、車両の機能すべてが高次元でバランスされる。それは走らせればすぐに感じ取れることで、例えば高速巡航中などでは路面に吸い付くような安定性を披露してくれる。その安定性も、ただサスが硬い恩恵とか空力を考えたとか、そんな単純なモノではなく品のいい安定感。そのためかアルピナのカタログには昔のポルシェのカタログみたいに最高「巡航」速度が記載されている。アウトバーンを速く快適に移動できるスーパビジネスエクスプレスなのだ。事実、ドイツのオーナーは13時に会社を出て、350km離れた場所の14時半の会議に参加するという。この安定した走りはアルピナの哲学でもある。

モノに個性を求めるモノマガ人のみなさま、アルピナは過去に パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーも受賞した優れた工業製品。人と被らないモノ、しかも手入れすれば一生モノで、とびきりの道具が欲しい方はアルピナにロックオンだ!

B3 GT

価格1600万円から
全長×全幅×全高4725×1827×1440(mm)
エンジン2993cc直列6気筒ターボ
最高出力529PS/6250-6500rpm
最大トルク730Nm/2500-4500rpm
WLTPモード燃費(ヨーロッパ参考値)9.52km/L

B3 GTツーリング

価格1670万円から
全長×全幅×全高4725×1827×1438(mm)
エンジン2993cc直列6気筒ターボ
最高出力529PS/6250-6500rpm
最大トルク730Nm/2500-4500rpm
WLTPモード燃費(ヨーロッパ参考値)9.52km/L

B4 GT

価格1600万円から
全長×全幅×全高4725×1827×1440(mm)
エンジン2993cc直列6気筒ターボ
最高出力529PS/6250-6500rpm
最大トルク730Nm/2500-4500rpm
WLTPモード燃費(ヨーロッパ参考値)9.52km/L

BMW ALPINA

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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