楽チンATを侮るな! スバルBRZ STI Sportに乗ったゾ!

見て楽しいスポーツカーは乗っても楽しい

スポーツカーが絶滅危惧種で気分的にも保護の対象にしたい昨今、フロントエンジン、後輪駆動、2ドアクーペの王道スタイルを持つクルマがスバルBRZだ。トヨタブランドの86と兄弟車でもある。そんなイカした(死語?)マシンでドライブを敢行。雨天でも十分すぎる楽しさに打ちひしがれた次第。

現行型のBRZは初代のデビューから7年ぶりの2021年にフルモデルチェンジ、2代目になる。また同車はスバルブランドの量販車としては初のFRレイアウトを持つ。エンジンは先代の2リッターから排気量が2.4リッターにアップされ、中回転域でのトルク不足を改善するなどグッと動力性能に磨きがかけられた。

コクピットの雰囲気もシンプルながらもスポーティ。後席のスペースは個々人で賛否両論だが、トランクスペースはふたつのゴルフバッグは積載可能という。

スポーツカーでATだと!?

試乗車は装備てんこ盛りのSTI Sportグレード。この「えすてぃあいすぽーつ」という言葉の響きだけで思わずうっとりしてしまいそうだ。しかもフロント、リアには赤いモータースポーツ直系のロゴがさん然と輝く。

また、ブレンボのキャリパーが、コイツはただモノではない感を醸し出している。ドアを開けると、STI Sport専用のレッドステッチが入ったドアトリム。これで気分が高揚しないわけがない。しかし試乗車のミッションは硬派スバリスト達から敬遠されがちな6速の自動変速機。スポーツカー=MTの前時代的なイメージの筆者だが、乗るとコレ、いいかもと思えてしまった。

ちなみにMTの話はコチラ

楽チンでも楽しさ健在!

スポーツカー=MT派はよぉーくわかる。しかし気持ちよく走れる環境は少ない。それは筆者が身を持って体験してしまった。撮影当日の待ち合わせ時間に盛大に遅刻してしまったのだ。それも寝坊とかではなく、渋滞という理由で。一応、それを見越してプライベートで出かける時よりも30分早く出たのだが、その日に限って2時間半もゴーストップの繰り返し。途中いくつもの坂道発進を繰り返す。その時はATで良かった! とココロから思った。

またスバルの先進安全技術、アイサイトの存在も忘れてはイケナイ。特に中、長距離をこなすドライバーには全車速追従クルーズ機能は魅力。そのほか衝突軽減ブレーキ機能、ペダル踏み間違い抑制機能といった安全運転支援機能も見逃せない。

そしてクネッた道へ突入してもこのミッション、なかなかにカシコイ。スポーツモードをポチっとなと押すとドライバーのみならずクルマもやる気十分な雰囲気。Dレンジのままでもアクセルの踏み方によってシフトアップの回転数をクルマが判断してくれる。コレが意外にいいモノなのだ。若干のズレはあるものの、シフトダウンも意に沿った感じに。減速して、コーナーへ進入、そして立ち上がりとなかなかなモノだった。

ステアリングにはシフト操作を可能にするパドルシフトが備え付けられている。そんな気分のズレを嫌うならば、自分でパドルシフトを操作すればいいだけのこと。それを積極的に操作すればカ・イ・カ・ン♡と大昔の成人雑誌の見出しのごとく気持ちいいドライブが可能。ただ、未確認で恐縮だけれど、シフトダウンするときはエンジン回転数が4000rpm以下でないとクルマが受け付けてくれない場面が多かった。公道ではいいかもしれないが、サーキットユースを考えるユーザーはマイナスポイントかもしれぬ。

余談だがAT車にはスノーモードも用意され、こちらは2速発進に設定され、クルーズコントロールも使えなくなった。

アクセルで曲がる楽しさ健在

高速移動中では風切り音も少なくスポーツカーと身構えるほどでもなかった。少しばかりクネッタ道へ。強雨コンディションだったが、旋回中のリアの動きはまったく不安を感じない。もちろんラフにスロットルを開ければテールスライドを誘発するのは簡単だろうけれど。

よく比較される兄弟車、トヨタの86とサスのセッティングは若干異なる。フロントは86に対して硬めで、リアはソフトになっている。フロントの方が硬いため、ステアリングの反応はしっかりとしたフィーリングに。またリアのソフトな味付けは安定感や接地感を高めている印象。特にタウンスピードなどでは86よりもBRZの方が快適傾向とされる。専門誌的な話で恐縮だが、逆説的な話ではコーナー進入でしっかりとフロントに荷重をかけないとタイヤに負担をかけるコーナリングになるのがBRZなのだ。

一般道では、よほどのハイペースでなければアクセル操作だけでコーナーをクリアできる。フロントには高さも重心も抑えられるボクサーユニットが収まっているのだからして。確かに低速コーナーが続く場所ではブレーキを踏まなかったくらい。

改良モデルが発表

生粋のスバリストは心配しなかったと思うが、BRZは一時期受注を中止していた時があった。にわかな筆者はもしかして……と思ったが、7月12日に改良モデルが発表され一安心。しかも走りの質がかなり高められたモノというから期待大だ。スーパー耐久に参戦しているTeam SDA Engineeringの取り組みで得られた知見から生まれた技術を新たに採用という。コレってレース技術のフィードバックとなればコーフンしてしまいそうだ。

MT車には専用の「SPORTモード」を採用。SPORTモードは、全回転域でアクセル操作に対してエンジンが忠実に反応するセッティングとすることで、アクセルコントロール性が向上。また、聞かせるエンジン音のアクティブサウンドコントロールの音量が切り替わり、ドライバーの高揚感を盛り上げてくれる。

AT車のマニュアルダウンシフト制御においては、ドライバーの操作や路面状況などから総合的に回転数制限範囲を判定する設定とし、オーバーレブの危険性がない状況ではドライバーの意思でダウンシフトができるように回転数の領域が拡大。さらに、R、SおよびCup Car Basicグレードのダンパー減衰力特性と、全グレードの電動パワーステアリングのアシスト特性を最適化したことで、スポーツカーらしい操縦安定性および乗り心地が実現。すぐわかるところではウィンカーレーバーの操作方法が一般的なロック式に変更とよりクルマの魅力が増している。また意外に知られていないことだが、BRZはボクサーエンジンのB、後輪駆動を意味するR、究極(Zenith)を意味するZの頭文字が車名の由来。明日から友人知人に広めてあげよう!

スバル BRZ
STI Sport(AT)

価格381万7000円から
全長×全幅×全高4265×1775×1310(mm)
エンジン2387cc水平対向4気筒
最高出力235PS/7000rpm
最大トルク250Nm/3700rpm
WLTPモード燃費11.7km/L

スバル
BRZ
問 SUBARUコール 0120-052215

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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