ミニバンのミニ版?
オールラウンダーのミニバン、デリカD:5(以下、D5)のデザインをデフォルメしたのがデリカミニだ。ヲイヲイ、現行のD5にはちょっと距離があるゾ、とお思いのみなさま、似ているのは2019年のマイナーチェンジ前のモノ。現行D5の縮小版的なモデルはekクロススペースの方がより近かった。このように冒頭から貴重なキーワードが出てくるあたりは、さすがモノマガジンなのです。
人気のデリカミニ、ジツはekクロススペースの後継モデル。もっと言ってしまうと大幅なマイナーチェンジモデルと言っても差し支えはない。エンジンを筆頭にメカニズムはほぼキャリーオーバー。しかし4WDモデルに限ってはタイヤサイズの変更を受けている。D5のタフなイメージを受け継ぐミニバンのミニ版がデリカミニなのだ!
見ても癒される
試乗車はモデルのイメージリーダーでもある4WD車。グレードは豪華装備のT-Premium。何度見ても「可愛カッコイイ」印象は同じ。軽自動車でもいわゆるオラオラ系デザインのクルマが多いけれどデリカミニは違う。少しのヤンチャ系雰囲気がアクセントで、クルマのキャラクターを作っている。そのコワモテ感が筆者推定30%付近だから見ても癒しがあるのだと思う。
またD5譲りのギア感を醸し出すルーフレールは全グレードに標準装備。フロント周りは2代目デリカスターワゴンのバンパーガードっぽいデザインといい、あからさまにミニ化しました! 的ベクトルと違うのも魅力かも。脱力系カッコ可愛いと申しましょうか。現行のD5っぽい「ミニ」ならekクロスも控えているし、三菱さん、お上手! と扇子で額をパチンとしてしまいそうだ。
乗っても癒されるぅ
かようなデリカミニだが、乗っても癒しがある。スーパーハイト系ワゴンに属するから室内空間、特に頭上空間は広い。ただ「新発売!」という言葉に過剰な期待をしてはイケナイ面も。インパネはekクロススペースのデザインのままで各種スイッチも同様。しかしながら定評の豊富な収納は健在。助手席上段には箱ティッシュにジャストフィットなサイズの引き出しはあるし、インパネセンター下部にはゴミ箱にぴったりな取り外し可能なモノも用意されている。
またek時代にあった助手席側の車検証入れは助手席シート下の収納に移った。しかも車検証入れにもフタがついているのだ。
快適装備も抜かりはない。プレミアムと名のつくグレードには後席へエアコンの風を送るサーキュレーターは標準装備だし、左右リアサイドガラスのロールシェードやシートバックテーブルも同様。どこからでも来いや! 的な気温の夏場でも快適な空間になっている。またステアリングヒーターも同様。お買い得的な装備は前席のシートヒーターは全モデルに標準装備。唯一マイナス面を申し上げれば、ダッシュボード周辺にはUSBがなく助手席のシートバックに1箇所あるだけ。
しかしながら考えようによってはオトナ1人の趣味空間と割り切れば相当に使い勝手はいい。フロントシートは倒せて足を伸ばして休めるし、後席も同様。ただし後席を倒した場合は傾斜があるので車中泊を考えるなら一度確認しておきたいトコロだ。もちろん、室内空間は相当にあるから子育て中の家族層にもジャストフィット。
頼れるボディに萌えよ!
走り出すと柔らかめな乗り心地がいい。試乗車は前出の通り、デリカミニのデリカ風味を最も強く打ち出す4WDモデル。ジツはFFモデルより大きめな165/60R15のタイヤを履く。これに伴いダンパーを再設定し専用セッティングにしているのだ。専門誌的な話ならば縮み側は粘るように踏ん張る方向性を持たせ、伸び側は柔らかく反応しやすいモノ。この仕様はオフロード向けで、河原BBQやキャンプ場(と言っても未舗装路の場所も多い)へのアクセスを考慮したという。生活四駆といいながらもくだり坂で低速を保ってくれるヒルディセントコントロールや滑りやすい道での発進をサポートしてくれるグリップコントロールが装備されるのも4駆の三菱らしい。
フランス車のごとくコーナリングでは大きく深くロールするけれど懐の深いコーナリングを可能にし、普段では柔らかい乗り心地を堪能できる。もちろんこのようにサスをしっかり動かせるのはボディがしっかりしてるからこそ。
その頼れるボディを動かすのはターボ付きエンジンにマイルドハイブリッドで武装したモノ。パワーユニット自体は自主規制値いっぱいの64PSを誇り、加速時にはモーターがエンジンを補助する。組み合わされるミッションは7速MTモード付CVT。あくまでも軽自動車、という前提ならば全体的にパワー不足を感じる面はない。ただ高速への合流などでは車重の重さを感じることもあった。重さを調べたらリッターカー並の1060kg。軽自動車としては重量級だ。高速で100km/h巡行時は3000rpmを下回っているが、追い越しをかける時は踏む意思が必要。気にせず加速体制を作るのなら、3000rpmくらいは回したい。
ちなみに80km/hでは2500rpmを少し超える程度、120km/hでは4000rpmに届くか届かないかだった。筆者個人的には、高速なら90km/hあたりで流している方がクルマのキャラクター的にも似合うと思う。今回は400km以上と長距離にあてはまる行程。高速4割(うちオートドライブ1割)、交通量の多い街中3割、山越え1割、渋滞1割、交通の少ない街中1割だった。デリカミニは乗り心地もよく、マイパイロットも装備されている、いわば長距離も楽しいクルマなのだが燃料タンクが小さいと感じた。
撮影車両を借り受け、都内から自宅に戻り、そこから群馬(前橋周辺)往復だったのだが、復路で給油をすることに。ドライブ依存症68%気味の筆者には満タンで往復できないのが残念だった。ちなみに今回の燃費は13.7km/L。またメーターの瞬間燃費計通りならば、街中のバイパスで60km/h巡行をキープできれば16km/L以上は記録できるはず。
CMから頭が離れません!
デリカミニは販売台数で首位を走るホンダのN-BOXの価格帯を上まっているグレードが多い。しかもオーダーの半数以上はターボの4WDとしれっと200万円を超える高価格帯という。もしかしたら一番売れている高価格な軽自動車なのかもしれない。
その背景にはCM効果が絶大なのもあると思う。キャンディーズの大ヒット曲「年下の男の子」のメロディ、ちょこっとしたアウトドア風の演出しかり。筆者、運転しながらもCM曲が脳内に流れるのはもちろん、必要もなく、うぇーい! とやってしまった。何よりクルマのキャラクター犬(?)、「デリ丸。」もぴったり。この「デリ丸。」は「。」も含めたモノが正式名称という。オヌシは藤岡弘、かモーニング娘。か! カッコ可愛いデリカミニは癒しのミニ「版」だった。
デリカミニ
T-Premium(4WD)
価格 | 210万7600円から |
全長×全幅×全高 | 3395×1475×1830(mm) |
エンジン | 659cc直列3気筒ターボ |
最高出力 | 64PS/5600rpm |
最大トルク | 100Nm/2400-4000rpm |
WLTPモード燃費 | 17.5km/L |