すごいオールシーズンタイヤタイヤがデビュー! ダンロップ・シンクロウェザーで走ってきたゾ 〜夏編〜

うっソーー!? な新技術

タイヤブランド「DUNLOP」(以下、ダンロップ)で知られる 住友ゴムがまったく新しいオールシーズンタイヤ、「SYNCHRO WEATHER」(以下、SW)を発表した。このタイヤのスゴイところはあらゆる路面に対応できるアクティブトレッドを採用していることだ。

それは水に触れたり、低温になったりするとゴムが柔らかくなるのが特長。どーゆーことなのか。一言でいうならば、夏タイヤの扱いやすさと冬タイヤの安心感を併せ持つモノ。

アクティブトレッドは天候や路面の変化に応じてゴムの性質を切り替えられる技術。そんな都合のいい、否、夢のようなモノが今回発表されたニュータイヤ、シンクロウェザーに搭載されているのだ。住友ゴムの山本悟社長は「タイヤは環境に合わせて履き替える。これが今までの常識でした。この常識を覆せないか? このようなことを考えて研究開発を続けてまいりました。

しかし大きく発想を転換し、そもそも滑る原因である水や氷を味方につけることはできないか? そんなところから始まりました。今までのタイヤの常識に挑み、それを覆すことができたら、ユーザーにより豊かなモビリティライフを提供できると考えました。そのような思いから試行錯誤を重ね、生まれた技術がアクティブトレッドです。」とコメント。

変身するタイヤ?

一般的にオールシーズンタイヤは、雪道も走れる夏タイヤの延長的ポジション。冬での使用を前提に作られるため柔らかいゴムを使う。これは雪や氷などの微妙な凸凹に対応するためだ。その柔らかさが夏場になると、路面に対してタイヤ表面の剛性が不足しがちになってしまう。このため夏場は燃費やグリップ面などでサマータイヤに一歩劣る、というのが今までの常識。

ところがダンロップは夏タイヤ並のドライ、ウェット性能を持ちながらも不安なく冬道を走れるタイヤをリリースした。これがSWなのだ。

SWは冒頭にあるように新技術を採用。アクティブトレッドのスゴイところは水に触れたり温度が下がったりするとゴムが柔らかくなる。その結果アンカー摩擦だの粘着摩擦だの云々で滑りにくくなる。いわば敵に応じて変身して戦う変形ロボみたいなモノ。温度の高い夏場は当然その逆の性質を持つ。

タイヤは骨格を形成するポリマーとその骨格を補強するシリカ、加硫剤や添加剤などの調味料的素材で作られる。それらはラグビー日本代表のスクラムのようにがっちりと結びついているのだが、ダンロップはイオンを使ってポリマー間の組み付きをほぐれる技術を開発、ガッチリ状態だったスクラムをほぐせ、タイヤ(接地面)柔らかくする。これがアクティブトレッドなのだ。

中学校以来苦手教科の筆頭に物理化学を掲げている筆者、そんな都合のいいタイヤ、あったら欲しいじゃないか!! と思ったが商品として実際に登場してしまった。しかし体験してみないと、いわゆる「主催者側発表」で終わってしまう。そうすると「言うほどでは……」となる場合もある、いやむしろ多い。そうやって人生斜めに見ていた筆者にお試し可能企画をいただいたので試走会に参加。時系列では冬の方が先だったが、今の季節は夏ということで夏編からご報告。

見せてもらおう、次世代タイヤの実力を!

岡山のテストコースで待っていたのはFFのカローラツーリング。タイヤサイズは195/65R15。SWだけだと比較にならないので、比較用として夏タイヤのルマンV+(以下5+)、スタッドレスタイヤのウィンターマックス02(以下WM02)を履いた同じクルマが用意されていた。試走はウェット路面を数周旋回するスキッドパッド、高速周回路(直線に用意されたレーンチェンジを含む)、その周回路の両側のバンク(110Rと150R)の高速コーナリング、大きくクネッた走安路と多岐に。また安全を考慮してスキッドパッドでは60km/h、高速では100km/h、110Rは70km/h、150Rは80km/hと速度制限が設けられていた。

まずは高速周回路を数周。最初に試したのがWM02。直線から高速コーナリングまで可もなく不可もなくなのだが、ロードノイズは低速域(20km/h前後)でも高速域(100km/h)でも車内に入ってくる。これはスタッドレスだから致し方ないところ。またブレーキも同じ踏み方だと制動距離が伸びるのもスタッドレスならでは。もちろん止まらないことはないし、夏場なら少し踏み足せば十分なのだが。加えて舗装の荒い場面ではゴムの塊的な突き上げ感も多い印象だった。

次に5+。高速周回路からレーンチェンジ、コーナリングすべてが自分のクルマに対する操作のレスポンスはさすが。またWM02からすぐの乗り換えだったため、より静粛性が高く感じられた。内部に吸音スポンジを持つ5+とWM02を比較するのは酷かもしれないが。

そしてSWだ。トレッドパターンが冬道対応というデメリットがある割にはかなり静か。コーナリング中は音が感じられたけれど、基本はサマータイヤ並。加えて路面の荒い場所ではかなり乗り心地がいい。感覚的には5+といい勝負と思う。高速コーナーではタイヤの柔らかさを感じる場面もあるが、それは5+と比較した場合。ただこの柔らかさはレーンチェンジをした場合も感じられた。しかしWM02のように生粋のスタッドレスと比較するとSWはほぼサマータイヤなフィーリングだし、ブレーキングもスタッドレスのようにあえて早めに踏まなくても大丈夫だった。

次に試したのはウェット性能。乾いた路面からコースイン。結構深くなっている水面で旋回開始。もちろん、舵角は一定。ええ!? まだ大丈夫なの? というのがSWの第一印象。公道でこの状況ではやりたくない操作をしてみないと伝わらないと思うので(筆者注:職務熱心&編集部注:遊びたいだけでは……)、わざとアクセルを突然抜いたり、ステアリングを大きくきり足したりしたが、軽い修正だけでクルマの挙動は安定傾向。想定のラインより膨らんでも5+並かそれ以上に懐の深さを感じられ、しっかりイン側に進んでいく。タイヤの柔らかさは感じるけれど挙動の大きな乱れはない。WM02は速度が他のタイヤよりもメーター読みで10km/hくらいは低く、アクセルオンだと膨らんでいきクルマの姿勢制御システムが介入した。しかしながら。ウェット路面が苦手なイメージのあるオールシーズン、スタッドレスタイヤにありながらもSWは夏タイヤ並だったことにびっくり。

ウチとソトでは違う顔?

最後に用意されていたプログラムはSUVで一般道の試走。クルマは、メルセデス・ベンツGLC、アウディQ5、レクサスNXといずれも人気のSUV。逆に考えると、それらは静粛性能に定評のあるクルマだし、車重がかさばるモデルでもある。つまりタイヤの静粛性能や剛性がキチンとしてないとイケナイのだ。そんなことを考えながら冬と同じAWDのGLCをチョイス。

試乗車のタイヤサイズは235/60R18とSUVでは一般的なモノ。テストコースで時折見せるタイヤの柔らかさはこのサイズのクルマで大丈夫かしらん、と思っていたのだが実際走るとそんな心配は杞憂だった。

コースから一般道に出るとクネッた道がまず待ち受ける。ステアリングの切り返しの続くのだが、そこにコースで感じた柔らかさは皆無。むしろ重い車重のSUVをしっかり支えるだけでなく、路面からのインフォメーションもキチンとステアリング、シート越しに伝えてくれる。早い話が走りやすいのだ。またタウンスピードでは硬めな傾向にあるメルセデスの乗り心地も快適なモノに。コースで感じた柔らかさは乗り心地にも一役買っているようだ。

またロードノイズも想像以上に少ないどころかサマータイヤです、と言われたら信じてしまうくらい。

これはまさしくホンモノのオールシーズンタイヤではないか、と筆者は強く思った。撮影などでずっとエンジンがかかった状態だったので、純粋な燃費の計測はできなかったが、メーカーによると低燃費タイヤと同等性能を有するという。また耐久性、特に冬場での性能も一般的な使用であれば3シーズンは大丈夫という。そして、冬の性能は……。後編に続く

雪道編はこちら

ダンロップ
シンクロウェザー
問ダンロップ■0120-39-2788

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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