モータースポーツってやっぱり楽しい!
話は筆者のスピンのように4耐に戻る。公式の練習走行では若山サン、哲ジイはラップごとにタイムを上げていく。予選アタッカーの哲ジイは19番手をゲット。なんだブービーか、と言わないように! 今回の我々の最大の使命は完走して記録を残すこと。決して順位でも表彰台でもない。4耐はその筋のスペシャリストが揃っていても簡単に勝てないのが面白いところでもあるし、難しいところでもあるからして。それに何と言ってもマツダも謳う今回のメーンテーマは「仲間と祝う」で、最も長く続くワンメークレースとしてギネス世界記録に挑戦し、会場にいるすべてのメンバーでレースを完遂して喜びを分かち合うこと。つまりチームで完走すれば、なんとギネスブックに載ってしまうのだ! どうだどうだ。
「初代ロードスター」が登場した1989年に始まり今回で35回目を迎えるワンメークレース。いよいよ決勝である。
決勝前にあたり4耐の簡単なレギュレーションを申し上げると、レース時間は4時間。ドライバーは4、5名。1人のドライバーによる連続運転は52分、合計運転時間は100分まで。助っ人ドライバーとしてプロの編入も可能なのだが、助っ人ドライバーは合計運転時間が42分と短い。
またクルマと同様に大きな変更点として今年度から前述のカーボンニュートラル燃料を使用する。スタート時は40Lの満タン。レース中の給油は20Lまで可能の合計60L。ドライバー交代などでピットインした時は必ず1分以上、給油時は3分以上の停止義務がある。
クルマは前述のNR-Aをベースにしたパーティ仕様。安全装備以外にタイヤはブリヂストンのポテンザ・アドレナリンRE004、エンドレス製のブレーキパッドMFE1、エンジン、ギアオイル共にガルフ製のモノ、ブレーキフルードはエンドレス製と統一され、それ以外の変更は認められず、完全なイコールコンディションになる。唯一、チームで変更できるのはタイヤの空気圧くらい。
さて1stドライバーは御年75歳の哲ジイ。オープニング数周はクルマの様子を見るように順位をキープ。チームの作戦でエンジンの回転上限を決めてあるので、その回転域だとそのくらいだねぇ、とチームで話をしていたところ3周目から急激にタイムが上がりだす。19位スタートであれよあれよと言う間に一時期は7位まで順位アップ! それにしても哲ジイの激走ぶりは脱帽モノ。ジツは哲ジイ、1週間前まで手術入院していたというのに予選アタッカーを勤めただけではなく、燃費も考慮してエンジン回転に縛りをつけているにもかかわらず毎ラップ、タイムを上げ、順位も上げていく。この走りにチームのテンションは爆上がり。ドライバー交代でピットに戻った哲ジイは「いやぁ、チョー楽しい! もう少しプッシュしようと思えばできたけど、先を考えて抑えたヨ」とおっしゃるではないか。恐るべき後期高齢者。安定したラップとタイムはほとんどプロの領域だった。
2ndドライバーは若山さん。哲ジイの順位をキープしつつ周回を重ねるが、力みすぎて最終コーナーでスピン!! コースアウトはなんとか免れ、レース続行。繰り返すが我らのチーム目標は順位ではなく、完走あるのみ。レースを続けられることが重要なのだ。最終コーナーで赤旗を出した筆者からしたら、よくゾ、コース内に留まってくれました! と拍手モノのテクだ。
六感を刺激してくるー
いよいよ筆者の出番。順位を気にしないことは気分的にも楽なので、レース自体を楽しめる。ジャングルジム様のロールケージを縫うようにして入りシートへ。フルハーネスのバックルがカチャリと音を立てる。この緊張感と高揚感の入り混じった瞬間はモータースポーツならではと思う。そしてコースイン。シフトが小気味よく決まる爽快感に加え、コーナー侵入でのGをキレイな流れにできた時はなんともいえない満足感。ここでラップタイムも上がると充実感は抜群。スポーツカーって楽しいと心底思う。そして今度はスピンしないようにDSCをサーキット走行に適したトラックモードに。こういうトラックモードはいつ使うの? 今でしょ! 的にボンクラな筆者の腕でも本格的にヤバイ時以外は介入しないし、安定したサーキット走行にもってこい。
3周目を超えたあたりで燃料の残量警告灯が点灯。ムムムっ! 開始から約1時間半。想定より少し早い。ピットに指示を仰ごうと無線で話そうとするが通じない!! 即サインを出してピットに入るか、もっと回転を落として燃費を稼ぐか、の2択に迫られる筆者。筆者に交代したばかりだし、完走がメーンテーマかつ20Lの給油も残っていると考え、サインが出るまでペースを落とすことに決定。遅くてもいいの、みんなで作るレースだから、と自分勝手な事を思いつつ、周回を重ね、30周近くなったところでピットサインが。ジツはピットサイン、数周前から出ていたそうで、一番やってはいけないサイン見逃しまでしてしまったのだ。ピットで20Lの給油をし、再び出て行く我らがロードスター。クルマを降りるとそれはなんとも言えない開放感。
最終ドライバーは石川さん。この時点では雨足が強くなり、完全なウェット。それでも周回ごとにタイムを上げていくのはさすがプロの仕事。ところがここでオーガナイザーから監督の呼び出しが。なんでもドライバーの運転時間に違反があったらしく166秒のペナルティに。石川さんをピットに戻し166秒のピットストップだ。ここで衝撃の事実が判明。なんと石川さんはすべての電子制御をオフにしていた!! 氏曰く「路面コンディションもあるけれど曲がるたびに後ろが出るから大変だった」と。それでも神がかったあのタイムをラップ毎出してくる。筆者のサンデーレース的、いや草レース的レベルともはやかけ離れた違うステージで戦っておられる。これからは石川センセーと呼ぼう。
規定の4時間まであと3分……この3分が長い!
ペナルティを消化し、再びコースイン。今回はDSCのトラックモードを使っての走行だ。より乗りやすくなったようで見ていて気持ちのいいくらいタイムが上がる石川センセー。この時点で激速な上位チームの一部がガス欠でリタイヤ。規定の4時間まであと3分、ラップにして2周くらいだろうか。この3分が長い! まさに相対性理論。あと40秒。20秒。ピットのデジタル時計でもあと5秒。4、3、2、1……。ついにチーム「モノ・マガジンTV」はチェッカーを受けた!! 当初の目標である記録に残るレース、完走を達成セリ!! よる年波で涙腺の脆くなった筆者は思わずウルッときそうだった。完走扱いになってもチェッカーを受けられなかったり、ガス欠リタイヤだったりと厳しいレースだったがチームの公式記録は20チーム出走で15位と大健闘!!
そしてレースのチェッカーを持ってして、この第35回メディア対抗ロードスターレースは「最も長く続いている自動車のワンメークレースシリーズ」としてギネスワールドレコーズに認定されたのだ。
モータースポーツに興味はあるけれど、なかなかねぇ、とお思いの皆さま。燃える闘魂の故アントニオ猪木も言っているではないか。「迷わず行けよ、行けばわかるさ」と。モータースポーツは楽しいゾ!
マツダ
ロードスター
第35回メディア対抗ロードスター4時間耐久レース
ブレインモータースポーツ
ギネスワールドレコーズ
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