特撮ばんざい!第55回:芸術の秋だ! 特撮音楽まつり(前編) 

音楽不況も何のその。ここ最近、特撮サントラが活況だ。夏から秋にかけて魅力溢れる特撮サントラが多数リリースされたので、2回に分けてドーンと紹介してみたいと思います。君のマストバイアイテムはどれか!?

文/トヨタトモヒサ

●オリジナル・サウンドトラック「ゴジラ-1.0 完全盤」 佐藤直紀


RBCP-3547 価格4400円(税込)10月16日発売
収録内容詳細はコチラ

米国アカデミー視覚効果賞受賞も話題となった、山崎貴監督のヒット作『ゴジラ-1.0』。サントラ自体は公開当時にリリースされていたが、10月16日にリリースされる「オリジナル・サウンドトラック『ゴジラ-1.0 完全盤』」は、未収録曲10曲を加えたリニューアル版となる。劇中では同一曲が複数箇所で使われており、それらの別テイク5曲に加え、「Live」「Scar」「Incident」「Days」「Guilt」の5曲が初収録となる。なお、未収録曲で気になっていた敷島浩一が日常を過ごす場面の軽快な曲は「Days」となる。またアルバム構成も当時盤とは異なり、劇中での使用順に並び直されており、映画の感動と興奮を追体験できる。CD2枚組で、ボーナストラックとしてゴジラの足音と咆哮が収録される。音楽は「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなど、山崎との名コンビで知られる佐藤直紀で、伊福部音楽の流用に耳を持っていかれがちだが、それを引き立てるためにアンビエント系の繊細なサウンドで挑んだ音楽設計にも今一度注目してしかるべきだと思う。

●豪快な日本組曲~とリトミカとタプカーラ~/伊福部昭選集/男声合唱団アレンジ/24夏新作

G.R.F.045 価格3200円(税込)
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続いては同人音楽サークル「不気味社音楽応用解析研究所」から2枚。不気味社は無伴奏の男声合唱で、ありとあらゆる音楽を演奏しまくる団体で、そのレパートリーは「ガルパン」から「プリキュア」まで実に雑多。そんな中、彼らが力を入れているのが伊福部作品で、そのリリースは20年にわたって続いており、映画音楽&純音楽問わず既に50枚以上に上る。まず一枚目が「豪快な日本組曲~リトミカとタプカーラ~」で、「管絃楽のための日本組曲」(1991年)、「ピアノと管絃楽のためのリトミカ・オスティナータ」(1961年)、「シンフォニア・タプカーラ」(1954/1979年)と伊福部のオーケストラ作品を収録。いずれも過去にリリースされていたが、今回は新録となり、よりブラッシュアップされて、伊福部音楽の魅力に迫る。一風変わったたてつけではあるが、抜かりのない編曲と細部まで行き届いた解釈に伊福部演奏の最適解を見る。

●コントラバスの咆哮~日本組曲とゴジラ~/伊福部昭/コントラバスアンサンブル

G.R.CB-01 価格3200円(税込)
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そして、不気味社のもう一枚が「コントラバスの咆哮~日本組曲とゴジラ~」。現在、聴くことができる伊福部昭の第一作「日本組曲(ピアノ組曲)」(1933年)は、「管絃楽のための日本組曲」(1999年)、二面の二十五絃箏による「日本組曲」(1991年)、「絃楽オーケストラのための日本組曲」(1998年)と本人の編曲がいくつも存在するが、本作は河原田潤とウィアードコントラバス絃樂団によるコントラバスアンサンブルの演奏で、編曲は八尋健生。近年、編曲で取り上げられる機会の多い伊福部作品だが、原曲の魅力を見事に汲み取った類まれなる編曲と言えよう。残るは第一作『ゴジラ』から、これも八尋編曲によるPS、M1,M6、M10、M14、M20、M22、M23の10曲を収録。なおコントラバスの河原田潤は、1999年以降、使われているゴジラの鳴き声の素材音源となるコントラバスを担当しており、ブックレットにはその貴重な証言も収録。

●SACDハイブリット盤「伊福部昭SF特撮映画音楽の夕べ」実況録音盤

KIGC-37 価格4400円(税込)11月6日発売
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「SF特撮映画音楽の夕べ」は、1983年8月5日、東京・日比谷公会堂に於いて行われたコンサートである。伊福部昭が過去に手掛けた特撮映画の音楽を新しくオーストラ用に編み直して披露する一大コンサート企画で、「SF交響ファンタジー第1~3番」、そして映画でも聴き馴染んだ伊福部マーチの魅力が凝縮された「倭太鼓とオーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク」(※1972年の吹奏楽曲をオーケストラ用に編曲)が初演された。とりわけ「ゴジラのテーマ」を含む「SF交響ファンタジー第1番」は、40年を経た現在、人気のレパートリーとなり、プロアマ問わず全国各地のオーケストラで取り上げられている。

少々前置きが長くなったが、「SF特撮映画音楽の夕べ」は企画自体にレコード化も含まれており、初演後まもなくリリースされた後も、数度にわたってCD化されているが、この度、SACDハイブリット盤として登場。当時デジタルテープとアナログテープの両方で録音されていたが、今回はアナログテープを採用してSACD用に新たにマスタリングを実施。音の分離も良く、アナログならではの空気感がこれまでにない感動を伝える。SACD対応機種のみならず通常のプレイヤーでも再生できる仕様も嬉しい。

指揮は汐澤安彦、演奏は東京交響楽団。現在では、セッションレコーディングされた「伊福部昭の芸術4 宙」(広上淳一指揮/日フィル)など、録音状態の良い盤は他にも存在するが、何事にも代えられない歴史的な名盤である。「今後最低50年間は、伊福部ファンはどんな事があっても悲しみに耐えて生きてゆける事ができるであろう。このライブ盤がある限り」と本盤に寄せた特撮評論家の竹内博(※本企画のプランナーのひとりである)の言葉を噛み締めて是非耳を傾けて欲しい。

時代を超えて蘇る名盤。「SF特撮映画音楽の夕べ」LPレコードのジャケット。

取材・執筆

トヨタトモヒサ
フリーライター。WEBや雑誌、Blu-ray、CD、映画パンフなど、主に特撮界隈で活動中。企画・構成・執筆した「絶体絶命!ウルトラ怪獣 バトル・ミュージック・コレクション」(日本コロムビア)が発売中(写真)。趣味は日本人が手掛けたクラシック作品鑑賞と北海道旅行(魅力を伝える仕事がしたい)。

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