栃木県警が配備するホンダNSXのパトカー。1999年に本田技研工業から寄贈された。
日本警察の任務のひとつに交通取り締まりがあります。これは47個の警察本部すべてで実施しており、「不本意ながらお世話になった……」という読者も多いことでしょう。
交通取り締まりを行う理由は、警察法第2条にしっかりと明記されており、道路交通法違反者を取り締まり、交通安全を守るためです。
こうした活動を行うのが、各警察本部の交通部です。交通警察とも呼びます。
かつていくつかの警察本部でも配備していた三菱GTO。今では新潟県警と愛知県警にのみ残る。しかしながらフェンダーミラー型の前期型は新潟県警のみ。
交通部では、執行隊として、“交機”こと交通機動隊と“高速隊”こと高速道路交通警察隊というふたつの部隊を編成しています。一般道路における交通取り締まりや交通事故の処置、交通安全教育等を行うのが交通機動隊です。そして高速道路や有料道路などの交通安全を守るのが高速道路交通警察隊となるのですが、こちらはそれだけではなく、例えばサービスエリアで発生した事故や事件、VIPの警護など、幅広い警察活動を行っています。
この他にも全国すべての警察署には、交通課が置かれ、そちらでは担当地域の交通取り締まりや交通安全教育等を行っています。
交通取り締まりには、専用のパトカーが使われます。町で見かける地域警察や警備警察とは少し異なります。カラーリングも白黒の警察塗装だけでなく、一般車を模した覆面パトカーもあり、取り締まり方法により使い分けています。
GTOのエンジンルームと車内。基本的に一般車と変わらない。
交通部の白黒パトカーは、実に多種多様です。大規模警察本部をはじめとして、スポーツカータイプのパトカーを配備しているケースが多く見られます。この車種が、カーマニアをうならせるラインナップとなっているのです。
パトカーの調達方法にはいくつか方法があり、(詳しくはコチラ)、自治体の費用で購入するパトカーを見てみると、かなり独自色を出しています。交通警察では、この自治体費という予算で、スポーツカータイプのパトカーを買っているのです。
警視庁が配備するフェアレディZ(Z34)。都費で4台購入した。
多くの警察本部にて運用していたギャランVR-4。もうほとんど見なくなってしまった。写真は茨城県警の車両。
しかし、スポーツカータイプのパトカーは決して安くはありませんし、2シーターなど、どう考えてもパトカーには不向きそうなものも含まれています。
それでも警察がスポーツカーを配備する理由が、実は見た目にあるのです。これを警察では「威力配備」と呼んでいます。
国費及び各自治体費でバンバン買い揃えられたインプレッサSti。金色のホイールがパトカーらしさを打ち消す。写真は埼玉県警の車両。
違反者に対し、「これは逃げられない」とか、「やばそうなので、減速しなきゃ」と、見た目で思わせることが目的でもあるのです。
もちろん、値段相応にスペックも非常に高いため、違反車両を追跡する場合も考えられています。
特にスピード違反車両の多くが、改造車であるため、通常のパトカーでは追跡不可能なケースもあります。かつて首都高にて時速200㎞越えでレースをしていた車両の取り締まりがありましたが、このようなケースともなると、やはり交通警察側も300馬力を超えるハイパワーパトカーが必要なのです。
日本広しと言えどレクサスLC500を配備しているのは栃木県警だけ。1500万円を超える高額パトカーであるが、個人から寄贈された。
また、見た目のカッコよさは、交通安全運動などの広報活動にも大活躍しています。こうした活動では、大勢の人を集めることが非常に重要です。スポーツカーのパトカーは花形として、募集広報、いわゆるリクルートにも一役買っているようです。
国費及び各自治体費により多くの警察本部に配備されたRX-7。写真は千葉県警の車両。
栃木県警のみが配備するR35型のGT-R。個人寄贈で2018年より配備開始。