史上最大の作戦、ならぬMINI MINIカントリーマンS ALL4に試乗!

昔の名前で出ました!

MINIのSUVを担うクロスオーバーが2023年にフルモデルチェンジ。これに合わせてネーミングもワールドワイドな、いや伝統のカントリーマンに名称変更。

小林旭の名曲ではないけれど「昔の名前で出ています」なのだ。もうクロスオーバーでいいやん、と思いがちだけれど「長モノ」は、やはりカントリーマンかトラベラーじゃなきゃねぇ。カントリーマンは商標を日本の某専門店が持っていたためデビュー当初は使えず、2008年のパリモーターショーで発表されたコンセプトカーのネーミングであったクロスオーバーを日本市場向けだけに使っていた、らしい。

そんなオトナの話よりカントリーマンである。全体的にボリューミーで、その中にエッヂを効かせたデザインのエクステリアだけをみるとなんとなくレンジローバーJr.とかレンジローバーMINIっぽく感じてしまうほどのカタマリ感がある。カタマリ感もそうだがボディサイズも大きい。現行モデルはそれまでのクロスオーバーよりも大きく、MINI史上最大をうたう。

ジツは変化したデザイン

BMWが商標を獲得し、2001年に復活を遂げた現在のMINIブランド。そのデザインは1959年から40年以上フルモデルチェンジすることなく生産され続けたクラシックMINI(以下、旧ミニ)をオマージュしている。旧ミニと比べると全く違うのはよぉーく分かるけれど一目見てMINIと分かるのはデザインが優れているから。しかしクロスオーバーとどこが変わったの? という皆さま。画像をご覧ください!

一番奥がブランド初の4ドア、SUVスタイルでデビューした初代クロスオーバー。間違い探しのようだけれどまったく異なるデザインになっている。とはいってもスタイリングは「やっぱりMINIだよね」と思える。いや、新世代のMINIシリーズそのモノだ。今回はその4輪駆動モデル、カントリーマンS ALL4をご紹介。

大きくても「MINI」

新世代MINIはデビューしてから好事家や専門店から「MINIじゃない」と言われ続けながらも人気を博してきた。うーん、確かにサイズはMINIではないけれどクルマはMINIだよねぇ、というのが第一印象。もはやサイズではなくオーラなのかもしれない。前述のようにカントリーマンはMINI史上最大のサイズで、全長は先代のクロスオーバーより13cmも大きいし、全幅も185cmを少し欠けるくらいで、全高は6cm以上高い。デカイけどMINIなのだ。らしさはドアを開けた瞬間にも感じる。

それはセンターディスプレイ。より薄く24cmサイズになったソレが一際目を引く。目を引くなんてモノではなく目立つ! まるで大きな鏡のようだ。そしてこのサイズの鏡といえば神社の御神体ではなかろうか。それまでクルマの御神体といえばエンジンとなっていたが、電動化の進む昨今、御神体=頭脳=コンピューターでそれを操作できるモノが御神体ってコトかもしれぬ。もちろんこの「ご神鏡」はナビから空調、インフォテインメントシステムなど情報系、操作系を集約している。

インテリアはシンプルなんだけれど、品のいい雰囲気はやはりMINIだ。室内のシンプルさは旧ミニにも通じるモノが多い。そういえば1980年以前の旧ミニはセンターメーターだった。またカントリーマンのエンジン始動もその頃の旧ミニっぽくセンターに設置されたキー状のツマミを捻るようになっている。

現在ならボタンにしてしまうモノをあえてこのようなデザインにして、一手間を楽しむのがオトナの嗜みってヤツかもしれない。遊び心の機能美は車内随所に。ステアリングはやはり旧ミニ同様の基本的に2本スポークだが、センターの3本目はダミーのベルト。このベルトはセンターコンソールの収納にも合わせられている。

カントリーマンは現在のクルマらしく収納やモノ置きも豊富で使い勝手はいいし、先代より2cm長くなったホイールベースで後席の足元スペースも広く快適。また後席は4:2:4の分割可倒式で簡単なリクライニング、スライドも可能。

テーマパークいらずのアトラクション?

なんとも太くたくましいステアリングを握り、 走り出すと「余裕」の言葉が脳内をめぐる。先代の元気さを前面に出した走りに対してコチラはどことなく上品さが前面にある気がする。試しに加速してもまだまだパワーの奥深さを感じる。試乗車は2リッターの直4ターボで204PS、300Nmのスペックなのだがトルクの出方などちょうどいいタイミングなんだと思う。ミッションがDCT化されたのもあるのかもしれない。シフトショックすらほぼ感じないのだ。

MINIといえばダイレクトなハンドリングが身上。さすがにゴムのラバーコーンサスの旧ミニとはまるで違うけれど背の高いカントリーマンも負けてはいない。走行モードを「ゴーカート」にするとダイレクト感がすごい。紛れもなくテーマパークのアトラクションに近くなる。それでいて乗り心地は硬くない。では柔らかいかというとそうでもない。ちょうどいい感じだ。高速からクネッタ道でもその唯一不満をあげるのならステアリングにパドルシフトがないこと。エンジンブレーキを使って減速したい時はシフトのツマミをLモードにしなくてはイケナイのだ。ただしこのLモードの出来は想像以上で減速していくとブリッピングをしながら1つずつギアが落ちる。この音が気持ちいいからいい、といえばいいのだけれど。

ジツは筆者、最初はスポーツモードの切り替えがわからずデフォルトモードで山越えしていたのだが、エクスペリエンススイッチをスターターの隣に発見。経験値? とRPGにはまっている筆者は当初触らなかったが、これが走行モード切り替えスイッチであった、否MINIとの素敵な経験値を上げるモノだ。そしてスポーツモードに相当する「ゴーカート」を筆頭に数種類用意される。ユニークなのは「ビビッド」。ディスプレイがレコード盤チックなデザインになり、手でこすると音がする仕掛けで気分はDJ。渋滞時の気分転換には良さそう。

燃費も想像以上だったことをご報告。100km/h巡航時の回転数は約2000rpm。高速を3時間近く流すと驚異の17.1km/Lを記録!

カントリーマンは豊富なモデル展開も魅力。長距離を頻繁にこなすユーザーならより高燃費が期待出来そうなディーゼルエンジン搭載車がオススメだし、ファミリーユースメーンだけれど一人でも楽しんでしまおう的ならば317PSを誇るジョンクーパーワークスもラインナップに控えている。クルマは上を見ればキリがないけど「いいモノ」で実用的なのが欲しい。そんな欲求にカントリーマンは答えてくれるのだ。もちろんブランドのこだわりもついてくる!

ミニ カントリーマン S ALL4

価格566万円〜
全長×全幅×全高4445×1845×1660(mm)
エンジン1998cc直4ターボ
最高出力204PS/5000rpm
最大トルク300Nm/1450-4500rpm
WLTCモード燃費13.1km/L

ミニ
カントリーマン
問 MINIカスタマー・インタラクション・センター 0120-3298-14

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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