
瀬戸内の美しい海辺の風景を臨むことができる、尾道市向島。
夏が終わり、だんだんと過ごしやすい気候になってきた。まさに秋は“行楽”の季節だ。そこで紹介したいのが、瀬戸内海の海と島々の景色が自慢の広島県「備後(びんご)」エリア。
海や山のある豊かで穏やかな風土で、平和への想いと復興を成し遂げたエネルギーが充満する広島県。今回は昔ながらの風光明媚な町「福山エリア」と、国内外のサイクリストにも人気を博す坂の町「尾道エリア」、さらに「三原エリア」にフォーカス!
ツアーに参加して、古民家をリノベーションした宿泊施設や、伝統の鍛造体験、クルージング、16人乗りサイクリングなど、ここでしかできない特別な体験を取材したので、前編・後編に分けて、たっぷりとお届けしよう!
まず訪れたのは、福山市にある築100年以上もの歴史ある古民家をリノベーションした宿泊施設「せとうち母家 Setouchi OMOYA」。眼の前に田園風景が広がる場所に佇み、室内は和モダンでしつらえた内装が広がり、プライベートウッドデッキ、半露天風呂があるなど、里山の時間を存分に満喫することができる。

Setouchi OMOYA
住所:広島県福山市熊野町丙900インクロッチェ 敷地内
電話: 084-959-0747

和のテイストを取り入れた、モダンな雰囲気を感じることができる「Setouchi OMOYA」の内装。
せとうち母家のキッチンでは、地元でとれた新鮮な魚を美味しく提供する“さすらいの料理人”こと原薗和也氏による、“瀬戸内さかな”を使った魚捌き体験と実食を、体験することもできる。瀬戸内海の中でもとりわけ広島の海は、波穏やかに浮かぶ大小の島々と複雑な沿岸線に沿って藻場や干潟が広がり「魚たちのゆりかご」と言われている。

“瀬戸内さかな”を使った魚捌き体験を行なう料理人の原薗和也氏。
穏やかな瀬戸内海に臨む備後圏域の沿岸4市である広島県三原市、尾道市、福山市、岡山県笠岡市で水揚げされた新鮮な水産物の中から漁師が選んだ、マダイやテンジクダイなど27種の水産物を「備後フィッシュ」と定め、四季折々新鮮な海の幸を堪能することができる。

瀬戸内海は美味しい魚の宝庫! 贅沢な海の幸いただきます!
次に、鞆の浦に古くから伝わる「鞆鍛冶(ともかじ)」と呼ばれる鍛冶技術を今に継承し、錨を作る技術である「鍛造」を体験できる施設「santo」を訪れた。
かつて福山市では、船や養殖いかだなどで使われる錨が盛んに製造されていたという。鞆の浦に古くから伝わる「鞆鍛冶」と呼ばれる鍛冶技術は、時代の流れとともに姿を消しつつある中で、伝統の鍛造技術を守り、広く後世の人々に知ってもらうことを目的にオープンしたのがこの「santo」だ。

santo(三暁)
住所:福山市鞆町後地26-30
鍛造とは、熱した金属を叩いて形を作る技術のことで、ここでは昔ながらの鍛造技術を用いてフライパン作りを体験することができる。「槌目」と呼ばれる鍛造技術は、ひとつひとつ職人がハンマーで叩いてフリーハンドで作られる。生じた槌目には全て個体差があり、世界でひとつだけのフライパンが完成するのだ。



昔ながらの鍛造道具を用いて、熱した鉄をうちつけてフライパン作りに挑戦!

(左から)「santo」にて、昔ながらの鍛造技術を今に伝えてくれる坊坂さんと羽原さん。
福山市鞆の浦で営む旅館「あぶと本館」が運営するクルージングツアーに参加。瀬戸内海のほぼ中央に位置する鞆の浦や阿伏兎観音、瀬戸内の美しい島々や橋、続く雄大な景色を海の上から楽しむことができる。宿泊者以外でも参加することができ、2つのクルージングコースがあるので、沼隈町・鞆の浦の見どころを海から訪れてみてはいかがだろう。


「あぶと本館」を起点にクルージングツアーに参加!瀬戸内海の美しい景色を海の上から臨むことができ、特別な時間を過ごすことができる。

旅館 あぶと本館
住所:広島県福山市沼隈町能登原阿伏兎1416-7
電話:084-987-0416(11:00〜15:00 /17:00〜22:00)
宿泊は、1943年に建てられた「県営上屋(うわや)2号倉庫」という名称の海運倉庫をリノベーションし、2014年3月にオープンした「ONOMICHI U2」内に併設する「HOTEL CYCLE」。「ONOMICHI U2」は、サイクリストフレンドリーな複合施設で、「まちの中のちいさなまち」をテーマに、ホテルやレストラン、バー、カフェ、ベーカリー、ライフスタイルショップ、自転車ショップがあるなど、多くの観光客やサイクリストから人気がある。

HOTEL CYCLE
住所:広島県尾道市西御所町5-11
電話:0848-210-550
建築デザインを手がけたのは、広島県出身の谷尻誠氏・吉田愛氏が率いる「SUPPOSE DESIGN OFFICE」。倉庫としての空間を活かしながら、尾道に馴染みのあるマテリアルを空間設計に用いた。

1階に受付やレストラン、サイクルショップが存在し、共有スペースには、サイクルマシーンもある。
「HOTEL CYCLE」の客室は、リラックスした時間を過ごせるように、自然素材を内装に用い、古民家の板張り、縁側をイメージした通路があるなど、ホテルの中には”尾道らしさ”を体験できる要素がたくさん詰まっている。自転車で宿泊するサイクリストのために、サイクルハンガーも備え付けてあるのも嬉しい。また、宿泊客はサイクルショップで自転車をレンタルすることもでき楽しめる。
後編はコチラ