“クーペスタイルSUV”のスズキ・フロンクスに試乗して分かったのは「運転している自分がかっこよく見られるクルマ」だということ、というわけで早速レポるぜ!

クーペスタイルSUVとして話題のスズキ・フロンクス。スズキの世界戦略車として展開されるこの一台、気にならないというほうが無理というものだ。ベースとなる2WDに加え、日本独自の4WDにも試乗し、その第一印象をお伝えしよう。書き手は編集部、乗り手と写真はmono本誌でおなじみ写真家の織本知之さんである。

写真/織本知之 文/モノ・マガジン編集部

 フロンクス(フロンティア+クロスオーバーからの造語)は、インドで先行発売されて大ヒットを記録。その勢いのまま日本上陸となった一台である。括りとしてはSUVだが、より細かくは「クーペスタイルSUV」。一目見てわかるように、SUVらしく車体は持ち上がっているが、ルーフ部、とりわけセンターからリアにかけてグイっと下げられ、クーペスタイルを演出している。ルーフが下げられたものの、見た目ほど後席に窮屈さを与えないのは、さすがスモールカー作りに長けたスズキの車体設計である。

リアのルーフラインがなだらかに下がるクーペスタイルがフロンクスの特長。よってサイドからのフォルムがもっとも“フロンクスらしい”カタチといえる。

 フロンクスは元々インド市場向けに企画された車だが、今回日本で販売するにあたってローカライズを実施。その最大のものが、4WDの追加だ。無論インドでも雪がないわけではないが、日本と降雪の関係性は深く、より深刻だ。そこで、雪道、悪路、急坂などに対応する駆動モードをもたせた4WDを追加した。ほかに道路の継ぎ目やマンホールなど、小さな段差をしなやかにいなすサスセッティングとされたのも、日本仕様ならではだ。

4WD車のシフトノブ手前に配置された駆動モード切り替えスイッチ。2WDにはないスイッチだ。

 では、上質、独自性、存在感などのキーワードを与えられたデザインに目を向けよう。

「発表会時点での受注が9000台と大変好調なスタートとなり嬉しい限りです!」とは四輪デザイン部の加藤正浩さん。フロンクスの発売は10月16日だが、ティザーなど事前告知は7月から始まっており、その存在を段階的に、効果的にアピールできた格好だ。

 カタログでのメインカラーは「スプレンディッドシルバーパールメタリック」ですが、実際の受注内容はいかがですか?

「最多はホワイト2トーンで、ブラウン2トーン、ブラックと続きます。メインカラーのシルバーはボディの抑揚、陰影をもっともよく表現できる色ですので、是非実車でご確認いただきたいです!」と同デザイン部の江口奈津美さん。カラー担当ということもあり、言葉に力こぶの江口さんでした。

今回取材対応いただいたデザインチームのお二方。左がスズキ商品企画本部四輪デザイン部アイデア開発課係長の加藤正浩さん。右が同四輪デザイン部インテリア課の江口奈津美さん。

 ところで、とカメラマンの織本氏。「郵便ポストみたいな真っ赤とか、真っ青とか、そういうソリッドな色は検討されなかったのですか?」

「もちろんそれらもいい色ですが、フロンクスの上質などのキーワードを当てはめると、深みや陰影を表現できるメタリックカラーが適切と判断しました」と江口さん。

 なるほど、なるほど。

車体色はツートーン5色、モノトーン4色の計9色。

 さて、フロンクスの大きな特長と言っていいのが、他車ではオプション扱いされるような装備までまるっと、最初から搭載したワンパッケージで勝負している点である。駆動方式こそ二駆と四駆を選べるが、ミッションは6AT、エンジンは1500㏄。アクセサリーカタログをみても、いまどきは「〇〇スタイルエディション」といった提案がいくつもなされるが、フロンクスでは「UTILITY STYLE」と「UTILITY STYLE+CARRIER」の二種を厳選。ノーマルで勝負できる充実した内容だ、という自信の表れなのだろう。

シートヒーターやスマホを置くだけのワイヤレス充電器も標準装備。

 加藤さんと江口さんにカーデザイナーを目指した理由と、現在の愛車について聞いてみた。

「中村史郎さんが登場する日産のCMを見て、カーデザイナーってかっこいい! と感じて以降、カーデザインを専門的に勉強してきました。現在の愛車は3台で、ミニ・クラブマン、ジャガーFタイプ、そして日常的に乗っているのがJB23ジムニーです」。

歴代ジムニーで最もロングセラーとなった先代ですね!

「雨や雪など、タフな状況でも走れる、帰ってこられる安心感が得られる、スズキ・スモールカーの傑作だと思います!」

その通り! して、江口さんは?

「大学では農学部で実験や研究など行っていましたが、のちに色やテキスタイルに興味をもち、大学院で学び直してスズキに入社しました。愛車はクロスビーです。この車のカラーを担当したこともあり、思い入れもひとしお。乗りやすくてかわいいクルマですよ」

さながらハスラーのお兄さん的ポジションでファンの多い小型車ですね。思えばスズキはジムニーとエスクード、ジムニーとシエラ、アルトとイグニスなど、義兄弟的な展開がお得意です。

では乗りましょう。ハンドルを握るのはカメラ織本氏だ。二駆と四駆を乗り比べていかが?

「やはり、二駆の動きが軽いですね。スペックで約60㎏軽量なのは伊達じゃないっス。燃費も二駆で19㎞/L、四駆では17.8㎞/Lと軽さの恩恵があるし、値段も二駆が254万1000円、四駆だと273万9000円と差が出ます。暖かい房総暮らしのアタシなら二駆一択ですね。ただ「ラジオとエアコンだけで充分!」というアタシには、装備や装飾が多く感じたかな~」

まあそれは車両コンセプトに拠りますよね。ジムニーとかアルトワークスならそれもアリだと思うけど……。編集部としては「“お洒落で真面目な一台”をいいバランスで完成させたな!」という印象だ。

試乗している際、フロンクスはいくども道行く人の視線を奪ったのは本当の話。そのグッドデザインを、君もディーラーで要確認っ!

フロンクス
価格(2WD)254万1000円/(4WD)273万9000円。
スズキお客様相談室(電話)0120-402-253

  • 元・モノ・マガジン&モノ・マガジンWEB編集長。 1970年生まれ。日本おもちゃ大賞審査員。バイク遍歴とかオーディオ遍歴とか書いてくと大変なことになるので割愛。昭和の団地好き。好きなバンドはイエローマジックオーケストラとグラスバレー。好きな映画は『1999年の夏休み』。WEB同様、モノ・マガジン編集部が日々更新しているFacebook記事も、シェア、いいね!をお願いします。@monomagazine1982 でみつけてね!

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