[編集部より]
「本好き」「本読み」じゃない人たちにも、実はあなたが興味のある情報がこの本に入っているんですよ、ということを伝えるため、その本の出版に携わった方に「この本はこんなにおもしろいんだ!」という熱のこもったテキストを寄稿いただいてます。そういう感じのブックレビューです。第3回はスタンダーズの内山利栄さんに『コンピュータ ノスタルジア』という本のレビューをしていただきました。「ヴィンテージ・コンピュータが放つ大胆なコンセプトとスタイル!」と帯にありますが、まさにその通りのとってもグラフィカルな読み物に仕上がっています。デザインを手がけた著者のひとり、長澤均さんはグラフィックデザイナーとして知られてる人ですから、さもありなん!
[先に編集部の感想のようなモノ]
コンピュータへの愛 → びんびん伝わってきます!
こだわり具合 → とても真似できません!
放たれている度 → まぶしいくらいです!
それでは、「本モノReview」をお楽しみください。
第3回
本の内側から、強い衝動がこぼれ落ちてくる!……
そんな本を作るには、自分も変わるしかなかった
文/内山利栄(スタンダーズ・編集者)
基本的に「たぎっている」ものを自分は好んでいます。
映画でも音楽でも小説でも、作者の衝動が溢れまくって、ここまでやってしまうのか!?みたいなものが非常に好きなのです。
とはいえ「編集者」の立場で、自分から、たぎっているものを作れるか?というとそれはかなり難しいです。会社に所属している編集者/サラリーマンの立場であり、会社から宣言される年間の売上目標は、相当にがんばらないと到底達成できないもの……必然的に「無難な本」をスケジュール通りに数多く出していく、という方向になりがちなのです。
ずっとその姿勢が染みついて離れなかった私ですが、ひょんなことから長澤均(パピエ・コレ)さんの本を担当することになり、その著者としてのスタンスにはだいぶ驚かされました。ほぼ毎日行われる、膨大なメールのやりとり、長時間の電話、ときには罵声も飛びかうオンラインMTG……ここ最近の自分の生活には完全に無縁なものでした。
こんなに大変な本とわかってたら、ぜったい引受けなかったよ〜!と文句を垂れながらも、なんとか長澤さんの要求に食らいつく……そんな日々が長く続きました。今思えば、長澤さんは、膨大な量のテキストを自分で書きながら、デザインもすべて自分ひとりで行い、レアな機器の撮影や、写真のAI処理なども延々とやっていたんですよね。自分の作業量の100倍ぐらいのことはやっていたのではないかと思います。
結果、完成したこの『コンピュータ ノスタルジア』は、200ページを超えている本なのに、誌面から
「もっとページが欲しいよ〜!」
と叫び声が聞こえてくるような、超高密度に文字と写真が詰め込まれた異形の物体になりました。デザインもまるで普通じゃなく、紹介するパソコンの写真の色に合わせて、配色が機種ごとにすべて変えられています。これは明らかに、たぎっている、といっていいでしょう。
熱い情熱に満ちた本は、作る側も熱い姿勢でいなければ作れない、
ということを身を持って知らされた……記憶に残る1冊となりました。ぜひご覧ください。
【書名】コンピュータ ノスタルジア
【著者名】長澤均 + テクノタク飯塚
【定価】本体2,600円+税
【版元名】スタンダーズ株式会社
【著者のプロフィール】
◎長澤 均(服飾史家/グラフィック・デザイナー)
美術展の宣材、装幀、CD デザインのかたわらファッション・カルチャー史に関して執筆。『Venus On Vinyl 美女ジャケの誘惑』(リットーミュージック)、『20世紀初頭のロマンティック・ファッション』(青幻舎)、『ポルノ・ムービーの映像美学』(彩流社)、『流行服─洒落者たちの栄光と没落の700年』(WPP)、『BIBA スウィンギン・ロンドン 1965-1974』(ブルース・インターアクションズ)、『パスト・フューチュラマ』(フィルムアー ト社)など9冊の著作がある。オンライン古書店〈mondo modern〉運営。
◎テクノタク飯塚(編集ライター)
フリーランス時代から『昭和40年男』編集部時代まで、レトロゲームやロボットなど、さまざまなテクノポップ的ガジェットを紹介する記事を手がけてきた編集ライター。「ロボットミュージアム in 名古屋」「サイバーダインスタジオ」 と2つの展示施設で歴史展示のディレクションも担当。編著書に『オムニボット・ファンブック』(毎日コミュニケーションズ)。
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