[編集部より]
「本好き」「本読み」じゃない人たちにも、実はあなたが興味のある情報がこの本に入っているんですよ、ということを伝えるため、その本の出版に携わった方に「この本はこんなにおもしろいんだ!」という熱のこもったテキストを寄稿いただいてます。そういう感じのブックレビューです。第4回は生きのびるブックスの田尻彩子さんに『LISTEN.』という本のレビューをしていただきました。政治とか経済とかじゃなく、音楽を通して世界を見つめ直そうという本でもあります。分厚いですけど、写真もた〜くさん載ってます。大自然、そこに生きる動物たちにはじまり、さまざまな民族の人たちが、唄って、笑って、飲んで、食べて、踊ってます! でもって、聴くこともできるっていうんですけど、どういうことなんでしょう?
[先に編集部の感想のようなモノ]
旅したくなり度 → 尻がむずむずします!
音の力 → むちゃくちゃ感じます!
本の存在感 → いい意味で、重ッ!
それでは、「本モノReview」をお楽しみください。
第4回
圧巻の600P越え!世界の音を「体感できる」特濃の一冊です
文/田尻彩子(生きのびるブックス・編集者)
著者の名前を見て、「え?あの?」と思った方、正解です。この本の著者は、俳優の山口智子さん。タイトルにもなっている「LISTEN.」とは、山口さんがライフワークとして取り組んでいる「世界中にある素晴らしい音を、映像アーカイブとして残す」プロジェクトのことです(目指すのは、1977年にボイジャーが宇宙に向けて放った「ゴールデンレコード」!)。
「音楽は、世界の唯一の共通語」と語る山口さんを含む、基本の撮影チームはわずか5人。旅程を組むのも、音楽家を探すのも、交渉するのも、撮影も、編集も、すべて自分たちの手で行っています。
「今の地球にある最高にカッコいい宝物を探したい」。
その情熱に突き動かされる旅は、出会いの感動と、ワクワクと、そして時々のドタバタに満ちています。山口さん本人の筆による描写は瑞々しく、まさに「旅しているように読める」本。
各ページに印刷された二次元バーコードを読み込めば、土地の美しい映像と音楽を堪能できる仕掛けもあり、まさに世界の音を「体感」できます。
ハンガリーの大草原を走る弦の音、
村祭りで朝まで続くダンスを彩る演奏、
ギリシアの酒場で奏でられるエレジー、
ジョージアの教会に鳴り響くポリフォニー、
パタゴニアのパンパ(平原)でガウチョが歌う即興詩、
雪の世界で交わされるイヌイットの喉歌、
宇宙にまで届きそうなインドの口承音楽・コナッコル…
ページを開けば次々と
特濃の「世界の音」が飛び出してきます。
悲しいニュースで世界を知ることが多い昨今ですが、美しいものや楽しいもの、かっこいいものを通して遠い国を知ること、それが喜びに満ちているということを、この本は思い出させてくれました。
636ページという分厚さに怯むかもしれませんが、少しでも旅や世界の文化に興味がある方なら、一生モノの一冊になるはずです!
「LISTEN.」プロジェクトのWEBサイト
これまでに撮影された映像のアーカイブや、
映画「LISTEN.」の公開情報などのニュースが掲載されています。
【書名】LISTEN.
【著者名】山口智子
【定価】本体4,000円+税
【出版社名】生きのびるブックス
【著者のプロフィール】
俳優。出演作品は1988年NHK連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」、「ダブルキッチン」、「スウィート・ホーム」、「29歳のクリスマス」、「王様のレストラン」、「ロングバケーション」、「ハロー張りネズミ」、「なつぞら」、 「監察医 朝顔」など。著書:『手紙の行方』、『反省文ハワイ』(ロッキング・オン)、『名も知らぬ遠き島より』(筑摩書房)、『掛けたくなる軸』(朝日新聞出版)ほか。
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