[編集部より]
「本好き」「本読み」じゃない人たちにも、実はあなたが興味のある情報がこの本に入っているんですよ、ということを伝えるため、その本の出版に携わった方に「この本はこんなにおもしろいんだ!」という熱のこもったテキストを寄稿いただいてます。そういう感じのブックレビューです。第5回は著述家・編集者の青山通さんに『推し活を20倍楽しむ オルタナ好きの僕がグループアイドル沼に嵌った15年と学んだ秘訣20』という本のレビューをしていただきました。推し活・・・興味ない、という人も騙されたと思って読んでみてください!
[先に編集部の感想のようなモノ]
「推し活」って何だ? → 理解できます!
生きる楽しさ → ぐいぐい感じます!
他人の幸せを喜べる? → そうなりたくなります!
それでは、「本モノReview」をお楽しみください。
第5回
「推し活」をきわめると、生きるヒントにまで昇華する!
文/青山通(著述家・編集者)
数年前、筆者がある女性グループアイドルを「箱推し注1」していたときのこと。メンバーの一人が、卒業直後に結婚を発表した。え、…それって在籍中から付き合っていたわけだよね? ファンは怒るだろうな…と思いつつネットを見て驚いた。そこには、「おめでとう!」「幸せに!」などなど、祝福のコメントがあふれかえっていたのである。
このことはしばし私のなかで謎だったのだが、今回ご紹介する書籍の制作過程で、疑問は氷解した。著者の中村辰之介氏によると、推す気持ちが高ずると、あたかも親しい親戚の子の結婚を喜ぶがごとく、「推し」の幸せを自分事として感じられるようになるのだと。
「推し」という行為は、自分本位な擬似恋愛のありようを超越し、なんとも崇高な次元に達していたのだ。
中村氏は、人生どん底の日にふと聴いたAKB48の曲をきっかけに、アイドルに沼落ちしていく。それまで彼は、オルタナティブロックを愛聴し、アイドルの音楽など軽蔑していたのだが、ひたすらポジティブな世界観に居心地の良さを感じてしまったのだ。当初はライブや握手会に行き、総選挙ともなればCDを大量に買い、コラボキャンペーンがあればカレーを食べまくる、そんな日々だった。それがある時から自らネットで批評を発信し始め、さらには自ら推しの活躍の場を作るために同人雑誌を発行したり、自治体にプレゼンに行くにまで至る。
やがて彼の心は、ただ推しの幸せを切望する真っ白なものに純化していった。
ある時かつての推しの出産を知った彼は、大阪の電車内で歓喜の涙を流し続けたのである。
本書は、そんな著者の15年のエピソードとそこから導かれた20の推し活ガイドを綴った書であり、それは、
「生きるヒント」にまで昇華されている。
同時代に推し活をしていた方や現役の方はもちろん、多くの方にこの物語を共有してもらえたら幸いである。
注1「箱推し」=アイドルグループの中の特定のひとりを応援するのではなく、グループ全体を応援すること(編集部注)。
【書名】推し活を20倍楽しむ オルタナ好きの僕がグループアイドル沼に嵌った15年と学んだ秘訣20
【著者名】中村辰之介(なかむら たつのすけ)
【定価】本体1600円+税
【出版社名】音楽之友社
【著者のプロフィール】
1983年、愛媛県宇和島市出身。奈良大学大学院文学部国文学科修士課程修了。現在、出身地で会社勤務。「栄、覚えていてくれ」名義でnote、ブログを中心に活動。クラウドファンディングにて自身の雑誌『かける人』を年1回のペースで発行。Kindle 電子書籍による著書に『推し事3.0宣言』、『黄昏の彼女たち~AIイラスト+人間俳句』、『持続可能な推し事~推しと金、ファンと金~』がある。
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