江戸時代のヒット作、日本文学科教授と一緒に読んでみた!【本モノReview:第6回】

[編集部より]
「本好き」「本読み」じゃない人たちにも、実はあなたが興味のある情報がこの本に入っているんですよ、ということを伝えるため、その本の出版に携わった方に「この本はこんなにおもしろいんだ!」という熱のこもったテキストを寄稿いただいてます。そういう感じのブックレビューです。第6回はライター・編集者で、この本の著者である山脇麻生さんに『すぐ読める!蔦屋重三郎と江戸の黄表紙』という本のレビューをしていただきました。ぜんぜん小難しくなくて、とっても楽しい本なんで、ぜひ手に取ってみてください!

[先に編集部の感想のようなモノ]
「黄表紙」って何だ?   → これが面白いんです!
くずし字読めません!   → 解説があるから大丈夫!
来年の大河、観たくなる? → もちろん!(って、そっちかよ!)

それでは、「本モノReview」をお楽しみください。

第6回

江戸時代のヒット作、日本文学科教授と一緒に読んでみた!

文/山脇麻生(ライター・編集者)

来年の大河の主役は、「江戸のメディア王」と呼ばれる蔦屋重三郎です。

彼がヒットさせた出版物は色々あって、吉原のガイドブック「吉原細見」をはじめ、当時めちゃ流行った「狂歌本」や「黄表紙」、喜多川歌麿や東洲斎写楽をプロデュースして「美人大首絵」や「役者大首絵」を描かせたのも重三郎です。

なかでも私がひきつけられたのが「黄表紙」です。ちょっとマンガっぽいんですよね。

絵自体もとぼけた味わいがあるし、千手観音が手のレンタル(!)を始める作品や、承認欲求の塊みたいな大店のぼんぼんが出てくる作品もあったりして、キャラクターも立ってる。

とはいえ、江戸時代に書かれたものですから、全編くずし字な訳です。パッと見、「読めねー」ってなると思うんですけど、じっと見ていくと判読できる平仮名も多くて、結構意味が取れるんですね。読むと、江戸のファッション誌的な側面があったり、社会風刺が効いていたり……みたいな絵以外の魅力も見えてきて、江戸も今もそんなに違わないのかなと思えたり。なんて聞くと、江戸の人が楽しんでいた「黄表紙」、ちょっと読んでみたいと思いませんか? 

そこで、江戸文学初心者の私が、

國學院大學文学部日本文学科の中村正明先生と一緒に「黄表紙」を読んでみた!

のが本作です。

いきなり本編ってのもアレなんで、第1章では蔦屋重三郎の出版人生と「黄表紙」が生まれた背景を、カラー資料を交えながらご紹介しています。

第2章から「黄表紙」を読んでいきますが、作品の下にはくずし字を現代のテキストに置き換えた翻字が付いていますのでご安心を。

第3章は「黄表紙」の名作や重三郎が作った狂歌を部分的に読んで楽しむ作品案内になっています。

重三郎の生涯を追った本は数あれど、彼が手掛けた本にスポットをあてた本は意外と少ないのかなと。

ぜひ、マンガを読むみたいに気軽に「黄表紙」を楽しんでもらえたらと思います。

【書名】すぐ読める!蔦屋重三郎と江戸の黄表紙
【著者】山脇麻生(やまわきまお)
【解説】中村正明(なかむらまさあき)
【定価】1700円+税
【出版社名】時事通信出版局

【著者のプロフィール】
大阪生まれ、兵庫育ち。ライター・編集者。京都精華大学マンガ学部新世代マンガコース非常勤講師。出版社でマンガ編集に携わり、2001年よりフリーランス。「朝日新聞」「本の雑誌」など各紙誌、Web媒体にコミック評および関連記事を寄稿するほか、講談や「まんが!100分de名著」シリーズ(扶桑社)の脚本などを手掛ける。

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