【モノ・マガジンTV】monoアーカイブス 第20回:偏愛のレッテル、Vintage Car

ビンテージなモノを愛でる嗜好は、その国や文化の成熟からうまれる。

時間の経ったモノに価値を認める人々の収集衝動、それは、個人的記憶をなぞることのみならず、自身が生まれる以前の、リアルタイムには体感する術のないあの頃への憧れを埋める脊髄反射である。

ただし、書画骨董はこの範疇とならない。いうなればビンテージ・モノとは、失われた量産品に対する、偏愛のレッテルである。

ビンテージカーは、十中八九、毎日の移動の脚ではない。ではない、というより、なりえない。その多くは走ること、操ることそのものにかなりの配慮を必要とする繊細な機械なのだ。

バッテリーは現在主流の12ボルトではなく6ボルトだから概してヘッドランプは暗く、ワイパーの動きは頼りない。むろんエアコンはないし、BOSEの7・1チャンネルサラウンドシステムは入っていない。換気はエアインテイクか窓を調整するだけだし、音楽はモノラルのラジオだ。ヘッドライトやワイパーが頼りないから、夜は走らない。雨天は絶対に車庫から出さない。移動の脚になどなりえない。

現在。とくにビンテージという価値が根づいた先進諸国においてクルマは、往年のような高級品ではなくなった。いや、目の玉が飛び出るほど高級なクルマもあるが、ユーズドカーなら驚くほど安く、稼働するクルマが買える。長年にわたって量産され、品質が向上し、耐久寿命が延びたため、クルマはオーナーを変え、世代を超え、長い命脈を保つようになった。

すると何が言えるかというと、一人や家族で複数台のクルマを所有することが可能となるのだ。だから、1年365日のうち350日は車庫にSTAYしているビンテージカーは、ミントコンディションを維持することのみに全力投球できる。

かつても今も、人がクルマを造りだす。だがビンテージカーは逆に、それを所有し愛好することによって、人と人をつなぐネットワークを作っている。

では、動画でお楽しみください!

mono Archives[モノ アーカイブス]とは

アーカイブスは記録をため込んでおく場所。そのくらいに考えていたのだけれどそうではなかった。古くさいイメージがあったのだれど、それもちがっていた。高尚で、縁遠いなどと、いくつもの思い込みを片づけてモノ目線で見たアーカイブスはナイスだった。モノそのものがアーカイブスだとわかったからだ。これほど面白い入れ物はないというワケで、これより動画版 mono archives[モノ アーカイブス]始動!

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