知る人ぞ知る局地的大スター・タブレット純の大傑作青春記、誕生!【本モノReview:第7回】

[編集部より]
「本好き」「本読み」じゃない人たちにも、実はあなたが興味のある情報がこの本に入っているんですよ、ということを伝えるため、その本の出版に携わった方に「この本はこんなにおもしろいんだ!」という熱のこもったテキストを寄稿いただいてます。そういう感じのブックレビューです。第7回は担当編集者の大嶺洋子さんに『ムクの祈り タブレット純自伝』という本のレビューをしていただきました。発売前から話題になっていた本で、ちょっと気になりますよね。

それでは、「本モノReview」をお楽しみください。

第7回

知る人ぞ知る局地的大スター・タブレット純の大傑作青春記、誕生!

文/大嶺洋子(編集者)

週に1度、忙しい時は2週に1度、約1年にわたってエピソードごとにガラケーで書いているという原稿が送られてきた。思いつくまま書いていると言っていたけれど、構成も何も完璧。タブレット純さんならではの独特な描写が文学的でもありえも言われぬ味わいで、かつユーモアがあちこちに隠れており、傑作の予感がいやましていった。

原稿の中盤を過ぎ、エピソードがどんどん壮絶になってゆくにつれ、本当に大事な原稿を預かっているのだというプレッシャーに戦慄が走った。

高校卒業後の8年間、客のほとんど来ない古本屋でアルバイトをしていて、ラジオを友としてレジ室に籠っていたというタブレット純さんが、その古本屋が倒産して道端に放り出される場面から話は始まる。

小学生の時からムード歌謡が好きで中古レコードを漁り小学校の卒業アルバムの好きな芸能人の欄に「マヒナスターズ」と書いていたとか、

中学生の時に50代の男を装ってGS研究家と文通をしていたとか、

後年、ひょんなことからそのマヒナスターズの一員になったとか、

マヒナをやめたあとは酒に溺れ、家賃2万7千円の風呂なしアパートでネズミの家族と住んでいたとか、

霊が3千体憑いていて取っても取っても取りきれないと除霊師に言われたとか……

とにかく驚くようなエピソードがとめどない。いじめられていた中学高校時代の描写には泣かされるけれど、小さな幸せがやってきたと思いきや、自ら踏みにじってしまうのもまた宿命か……。

けっこうなどん底に落ちながらもやっぱり歌に帰っていく場面では、安堵して思わずまた目頭が熱くなる。

歌手であり芸人であり、歌謡曲研究家でもある唯一無二の異能の人「タブレット純」。いわば時代の方向とは真反対の道を超マイペースで歩いているあぶなっかしいタブ純さんから、これからも目が離せない。

【書名】ムクの祈り タブレット純自伝
【著者】タブレット純(たぶれっと じゅん)
【定価】本体1,800円+税
【出版社名】株式会社リトルモア

【著者のプロフィール】
幼少時よりAMラジオを通じて古い歌謡曲に目覚め、思春期は中古レコードを蒐集しながら愛聴、研究に埋没する。高校卒業後は古本屋、介護職などの仕事をしていたが、27歳の時、「和田弘とマヒナスターズ」にボーカルで加入。以後2年間、和田弘氏逝去まで同グループにて活動した。グループ解散後は、都内のライブハウスにてネオ昭和歌謡、サブカル系のイベント出演の他、寄席・お笑いライブにも進出。ムード歌謡漫談という新ジャンルを確立し、異端な存在と言われながら、ライブ、ラジオ、寄席等々で活躍、人気を得る。2024年現在、テレビ、ラジオのレギュラー番組は「阿佐ヶ谷アパートメント」(NHK)、「タブレット純 音楽の黄金時代」(ラジオ日本)、「大竹まこと ゴールデンラジオ」(文化放送)ほか。著書に『タブレット純のムードコーラス聖地純礼』(山中企画)など。大沢悠里や永六輔、小沢昭一、吉田照美、徳光和夫といった、渋い人たちの声帯模写を得意とする。オリジナル曲に、「夜のペルシャ猫」「おしぼりをまるめたら」「東京パラダイス」「母よ」などがある。

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