寒い季節にオススメしたいのは、何といっても、魂がアツく燃える特撮サントラ鑑賞だ! ここでは2024年後半にリリースされた特撮サントラを紹介。好評だった前編から、大変お待たせしました!
文/トヨタトモヒサ
【前編はこちら】
特撮ばんざい!第55回:芸術の秋だ! 特撮音楽まつり
●『ゴジラVSメガロ』&『ゴジラVSガイガンレクス』オリジナル・サウンドトラック(ユニバーサル ミュージック)
UCCS-1386 価格2750円(税込)発売中
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白組の上西琢也監督によるショートフィルム2作品をセットにしたサントラ。『ゴジラVSメガロ』は、伊福部昭や眞鍋理一郎によるお馴染みの3曲を、国立音大出身の作編曲家の半田翼が大胆にアレンジ。これに冒頭のゴジラ進撃シーンで選曲された『ゴジラVSスペースゴジラ』から「Hyper Battle Area」の4曲が本編使用曲となる。またボーナストラックとして伊福部、眞鍋の原曲もそれぞれ収録。一方、『ゴジラVSガイガンレクス』は、伊福部、小六禮次郎と平成ゴジラシリーズからの選曲で基本賄われており、平成ゴジラ世代には堪らないものがある。同じガイガン作品の『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』も選曲だったことを思うと、シリーズの歴史を感じずにはいられない。クライマックスでは、既成曲としてベートーヴェンのピアノ・ソナタ「月光」から第3楽章が使われていたが、こちらはヴィルヘルム・ケンプ演奏のドイツ・グラモフォン音源で収録。なお、ゴジラフェスで公開された2作だが、現在はYoutubeの「Godzilla Channel」で観ることができる。
●「爆上戦隊ブンブンジャー Music Collection vol.3」(日本コロムビア)
COKM-45288 iTunes、レコチョク他で配信中。
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歴史あるスーパー戦隊シリーズも現在放送中の『爆上戦隊ブンブンジャー』で48作目。音楽面では、『秘密戦隊ゴレンジャー』を手掛けたレジェンド・故渡辺宙明を筆頭に、数多くの作曲家が担当してきたが、本作では作曲家二人体制を導入。池田善哉、横関公太の両名が個性を発揮して音楽面での確たるカラーを作り出している。現在配信中の最新サントラ「爆上戦隊ブンブンジャー Music Collection vol.3」は、第2回録音を中心とした内容で、振騎玄蕃の正体バレ回のための用意された「惑星ブレキの若旦那」(横関)、サンシータ―の感情を掘り下げる「負けたと思うまで俺達は負けてねぇ」(池田)、第34話で選曲されたワイルド・スピードのテーマ「宇宙よりデカい器のお方」(横関)など後半を盛り上げる楽曲の数々を聴くことができる。また「ブンブンレオレスキュー!出動!!」(池田)、「チャンピオンブンブンジャー!」(横関)などヒーローやロボの活躍には欠かせないテーマも必聴。その他、「爆上戦隊のテーマ」(※劇伴のメインテーマ)の心情アレンジ曲「俺がその夢を届ける」(横関)、サンシーターのコミカル曲「それいけズッコケ サンシーター」(池田)など第1回録音分から劇中での使用頻度の高い曲をセレクトして収録している。なお、第1回録音の主要な劇伴を収めた「Music Collection vol.1」、全曲フィルムスコアリングによる夏映画『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』の全曲を収録した「Music Collection vol.2」も配信中。
●渡辺岳夫 ドラマ音楽メモリアル(サウンドトラックラボラトリー)
STLC-058~059 価格3850円(税込)発売中
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特撮では、円谷プロの『緊急指令10-4・10-10』、『サンダーマスク』(※主題歌のみ)、東映の『ザ・カゲスター』と特撮作品でも知られる劇伴の巨匠・故渡辺岳夫の貴重なテレビドラマ音楽を収めたCD2枚組の作品集。今日であまり振り返られる機会のないタイトルが並ぶが、パリのスコラ・カントルムで学んだ渡辺は、フランスのムード音楽の影響を色濃く受けており、作品を知らずとも、良質のイージーリスニングとして浸ることがきる。そんな中、最もメジャーな作品が田宮二郎主演の『白い巨塔』で、ディスク一枚を本作のために割いている。またテレビの劇伴は、一度に音楽をまとめて録音する「溜め録り&選曲方式」が現在の主流だが、本作では台本をベースに渡辺が演出家と使用箇所を煮詰めた上で作曲されており、『白い巨塔』でも実践されたこの手法を本盤では「シンクロスコア」と定義。こうした考察も実に興味深く、付帯情報は解説書が付属するCDならではの大きなメリットである。
●『帝都物語』/『帝都大戦』オリジナル・サウンドトラック
UCCS-1384/5 価格3850円(税込)発売中
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2024年7月3日に発行された新一万円札。その肖像画としてあしらわれたのが近代日本経済の父・渋沢栄一である。そんな絶妙のタイミングで『帝都物語』と続編『帝都大戦』の二作品をCWしたサントラが発売。そう、『帝都物語』と言えば、カツシンこと勝新太郎が渋沢栄一を演じているのである。しかもジャケは嶋田久作が演じた加藤保憲ではなく、カツシン演じる渋沢であり、まさに新一万円札の発行を狙っての確信犯的な企画だろう。
さて、作曲家を見ていくと『帝都物語』は、ドイツでも活躍した現代音楽の作曲家の石井眞木が担当しており、一説によれば師匠の伊福部昭が断って石井眞木に依頼されたとも言われている。楽曲はシーン毎の作曲ではなく、「前奏曲」、「地脈」、「建設」、「破壊」、「モダニズム」、「闘い」、「祈り」の全7曲から成る交響組曲のスタイルを採っており、サントラとしても実に聴き応えがある。映画ではここから見事に選曲されており、これぞまさに「実相寺マジック」という他ない。なお、一部の曲ではワーグナーの「ラインの黄金」の前奏曲、J.シュトラウス「こうもり」が引用されているが、こうした辺りにも卓越したセンスを感じる。指揮は大友直人、演奏は新日本フィルハーモニー交響楽団による。CWの『帝都大戦』は前作に比べると、あまり注目される機会の少ない作品だが、上野耕路の音楽はなかなかの力作で、この機会にその魅力を是非再確認してもらいたい。2作ともデジタルリマスター、SHM-CDのフォーマット採用で当時盤よりも高音質を実現している。
取材・執筆
トヨタトモヒサ
フリーライター。WEBや雑誌、Blu-ray、CD、映画パンフなど、主に特撮界隈で活動中。企画・構成・執筆した「絶体絶命!ウルトラ怪獣 バトル・ミュージック・コレクション」(日本コロムビア)が発売中(写真)。趣味は日本人が手掛けたクラシック作品鑑賞と北海道旅行(魅力を伝える仕事がしたい)。