
インドネシア海兵隊員たちが、水陸両用車LVTP-7にて上陸。砂浜を一気に駆け抜けていく。同車両は元韓国海兵隊で使用していたものであり、35両が引き渡される計画である。
2024年8月26日から9月6日にかけて、インドネシアにおいて、多国間合同軍事演習「スーパーガルーダシールド24」が行われました。主催国であるインドネシア及びアメリカの他、日本、オーストラリア、シンガポール、イギリスの6カ国から訓練実施部隊が参加しました。この他、韓国やインドなどのオブザーバー参加国も合わせると参加国数は22カ国にもなります。
日本からは、第1空挺団と水陸機動団等が参加しました。その模様はこちら
その他の参加部隊は以下の通りとなります。
アメリカ:第25歩兵師団、第11空挺師団、第1海兵遠征軍(1MEF)
インドネシア:第2師団(TNI-AD:陸軍)・第2海兵歩兵旅団(TNI-AL:海兵隊)等
オーストラリア:第1師団第1旅団
イギリス:グルカ旅団
シンガポール:緊急即応部隊ADF

上陸直前に煙幕をたくLVTP-7。あたり一帯が白い煙に包まれた。その中を浜辺目指して突き進む。
「スーパーガルーダシールド24」の象徴的な訓練となったのが、9月5日に東ジャワ州の演習場で行われた多国間着上陸訓練です。
インドネシア海軍「マッカサル」級揚陸艦のネームシップ590「マッカサル」、シンガポール海軍「エンデュランス」級揚陸艦の2番艦L208「レゾリューション」、米海軍「サン・アントニオ」級ドック型輸送揚陸艦の4番艦LPD-20「グリーンベイ」といった各国の揚陸艦が洋上に集まりました。これら揚陸艦の護衛として、インドネシア海軍「ディポネゴロ」級コルベットの4番艦368「カイシエポ」の姿もありました。
各部隊の着上陸を前に、インドネシア空軍のF-16によるCAS(Close Air Support:近接航空支援)が行われました。これは、上陸地点近くにいる敵を空爆するためです。この火力支援に引き続き、「マッカサル」から、インドネシア海兵隊のBMP-3Fが進出してきました。浮上航行能力があるため、そのまま自力で浜辺を目指します。上陸すると、すぐさま上陸地点の警戒監視を行います。

多国間着上陸訓練において、中心的役割を務めたインドネシア海軍「マッカサル」級揚陸艦のネームシップ590「マッカサル」。
このBMP-3Fに守られるように、インドネシア海兵隊の水陸両用車LVTP-7が「マッカサル」を発進し、洋上を進んできました。上陸する直前に煙幕をたき、浜辺一帯が白い煙に包まれていきました。その煙が完全に消える前に、次々と上陸していきます。そして停車後、後部ハッチから、インドネシア海兵隊員が飛び出してきました。


浮航航行しながら上陸目標地点を目指すインドネシア海兵隊のBMP-3。ロシア製の歩兵戦闘車で、約70両を配備している。100㎜砲を主砲として、車内には最大9名の兵士を乗せることが出来る。
引き続き、揚陸艇LCUが浜辺へとビーチングすると、乗艦していたインドネシア海兵隊及び米海兵隊、シンガポール陸軍の兵士たちが、上陸していきます。
こうして、車両や舟艇で上陸を果たした各部隊は、一旦砂浜で体制を整えた後、隣接する演習場まで前進していきました。

慎重に歩みを進めるシンガポール陸軍兵士。シンガポール国産のアサルトライフルSAR21(Singapore Assault Rifle – 21st Century)を所持している。
実は、この着上陸に先駆け、まだ夜も明けきらぬ時間に、水陸機動団の偵察部隊が特殊複合型ボートCRRCで上陸していました。任務は上陸地点周辺の情報収集です。各国部隊は、日本の情報をもとに、無事に上陸できたわけです。
演習場では、敵役の兵士たちが陣地を構築しており、そちらを多国間で攻撃していきます。上陸部隊を増援するため、米海兵隊がMV-22Bオスプレイで部隊を送り込み、最後は見事敵陣地を制圧し、訓練は終了しました。

周辺を警戒するインドネシア海兵隊。隊員が手にしているのはインドネシア国産のアサルトライフルPindad SS2V4。FN FNCをライセンス生産したSS1の改良型として配備が開始された。
「スーパーガルーダシールド24」の最後を締めくくったのは、9月6日に行われた多国間戦闘射撃訓練CALFEXでした。
これは、一連の戦闘状況に沿ったシナリオで進む実弾射撃訓練です。敵兵または敵戦車・装甲車に見立てた標的を撃破しながら前進していきます。
口火を開いたのは、米海兵隊のHIMARSでした。全搭載弾数にあたる6発を連続で発射していきます。ちゃんと発射シーンが見えたのは1発目のみで、2発目以降は、車体が煙に包まれてしまいます。その煙の中から次々とロケット弾が飛び出していきました。
引き続き、インドネシア海兵隊の多連装ロケットシステムRM-70、インドネシア陸軍の多連装ロケットシステムASTROSⅡもそれぞれ連続射撃を行いました。

インドネシア陸軍に配備されている多連装ロケットシステムASTROSⅡによる連続射撃。ブラジルで開発され、2012年からインドネシアも配備を開始した。
敵陣地を面で制圧すると、各国の歩兵部隊が車両で前進してきました。その中には、水陸機動団特科大隊が乗車する高機動車も含まれていました。高機動車は、120㎜迫撃砲RTをけん引しており、停車すると、速やかに展開し、射撃を行いました。この他、インドネシア陸軍やイギリス陸軍の砲兵部隊もほぼ同じタイミングで各種りゅう弾砲の射撃を行っていきます。
こうして、多連装ロケット弾やりゅう弾砲及び迫撃砲といった長射程火砲等で、遠距離から敵を攻撃していき、敵の動きを封じ込めました。

ヘリボーン作戦を展開するため、低空で演習場を飛ぶ米陸軍のCH-47。中には第1空挺団の隊員たちが乗っていた。
間髪入れず、多国間歩兵部隊が前進していきます。敵と見立てた標的が現出すると、小銃や機関銃、携帯式ロケットやミサイル等でその都度撃破しては、さらに前進していきます。
最後は、米陸軍のCH-47やインドネシア陸・海兵隊のMi-17といったヘリコプターによるヘリボーン作戦が行われ、部隊を増強していきます。なお、CH-47には、米陸軍の他、第1空挺団も乗り込んでいました。
こうして見事敵を制圧し、訓練は終了しました。
「スーパーガルーダシールド」は毎年行われており、2025年についても5月頃に実施される計画です。

インドネシア陸軍の輸送ヘリMi-17。輸送任務の他、7.62㎜機関銃をドアガンとして装着し、ガンシップヘリとして戦闘任務も行う。