「これは、私たちの戦いです!
WAACに参加しましょう!」
「私たちは、戦闘外勤務で組織される
アメリカ陸軍の女性部隊です!」
このキャッチフレーズを掲げ
1942年初めに「WAAC」の
新人募集がスタートした。
女性議員エディスナース・ロジャーズは、
男性同様に「国のために何かができる!」
と立ち上がり議会に提出していた
「陸軍女性補助部隊」
(Women’s Army Auxiliary Corps)
=「WAAC」設立法案が可決した・・・
以下は、戦う女性たちのファッション史である。
Text & Illustration/M.Kelly
Photo/U.S. ARMY, WPP Archives, Library of Congress, NARA
参考資料/ワークウエア、COMBATマガジン、FLYING(U.S. ARMY AIR FORCES ISSUE)
WASP (Women Auxiliary Ferrying Squadron of Women Pilots) / Trainees Uniform, pilots
女性パイロット部隊(陸軍航空隊)
初めの女性見習いパイロットたちが飛行訓練校(WTFD)を卒業する頃に、公式の制服が決まった。カーキ色のギャリソン・キャップ、真っ白な開衿の半袖シャツとカーキ色のトラウザーズだった。胸にディズニーによる妖精フィフィネラのパッチを付けたA-2フライト・ジャケットを着ることができた。シャツは後のサンティアゴ・ブルーの制服が導入されるまで着られ「ゼネラル・ホワイト」の愛称で呼ばれた。
アメリカが参戦してわずか5ヵ月後の事だった。すでにイギリスでは女性部隊ATS(国防義勇補助部隊)が設立され事務職から管理職などに活動を開始していた。始めは屋内だけで働くためにユニフォームはジャケットとスカートだけだった。しかし、戦争の拡大に伴って女性たちの職種も増え対空砲兵隊まで配属された。もはやサービス・ユニフォームだけでは対応できなくなり戦闘服が支給された。すべて男性用だったためにうまく適合せず問題となり新たに女性用として作られることになった。
アメリカ軍はWAAC(陸軍女性補助部隊)を設立する前にATSを視察し服作りは陸軍補給部で始まった。基本的には男性用陸軍ユニフォームのイメージに類似する考え方だった。しかし、女性の為にユニフォームをデザインした事がなく多くの苦労を余儀なくされることになる。
最初に作られたサービス・ユニフォーム・ジャケットは4ツボタンでシングル・フロント、4個のポケットにバックル付きワイド・ベルト留め、スカートは6枚ハギのAライン・スタイルだった。ベルトは極端に締め付けて着る隊員が多くカッコ悪いので廃止になる。素材では不快感と洗濯すると縮むなど不評だらけだった。さらに女性の体型にパターンが合わず採寸データーも取らずにS、M、Lとサイズを作った。シューズに関しても同様でヒールをやや高くするなど初めから作り直された。
HBT素材の作業服もゆとりある大きさや使い込むと汚らしくなるのも不満だった。サービス・ハット、通称ホビー・ハットは洗濯がしずらく被らず持ち歩く場合にはケースに入れるなど取り扱いが面倒だった。このためギャリソン・キャップへの移行を早めることになる。こうして試行錯誤を繰り返しながら大戦中にも関わらず細部の改良や変更は終戦まで続けられた。
20世紀に入る前までには、女性たちがユニフォームを着る文化はないに等しかった。ユニフォームは常に戦いに備えた服であり男たちのものだった。女性を男仕立てのユニフォームに押しこむのがどれだけ困難だったか伝わってくる。体型が違うだけでは理由にならなかった。いかにして奇麗で凛々しい女性用ユニフォームを作る問題はこれらを乗り切ったからこそ解釈したのではないだろうか。
WAAC (Women’s Army Auxiliary Corps) /Summer Service Uniform, Officers
陸軍女性補助部隊
WAACが設立した時は、まだ軍としての地位がなかった為に陸軍章は付けられなかった。そこで同じ鷲を使ったデザインにしたが羽が短く見えることからウォーキング・ダックと呼ばれた。部隊章には知恵、勝利と技能をモットーにヘルメットを被ったギリシャの女神パラス・アテナが選ばれた。通称、ボビー・ハット※からなる夏期のベルト付き制服は明るいカーキ色に染められ女性のためにやや軽いコットン・ツイルで作られた。
※ボビー・ハット:初代WAACの監督官オベータ・カルブ・ホビーから付けられた名前
WAC (Women’s Army Corps) / Battle Dress (ETO Service Uniform), Officers and Enlisted Personnel
陸軍女性部隊
将校用のバトル・ドレス※は袖がストレート・スリーブでプレイドが付きより制服的なイメージになる。スカートもピンク色を合わせることができた。ギャリソン・キャップのパイピングは陸軍将校共通のゴールドとブラック。下士官はWAC部隊カラーのブルーとイエローになる。
※バトルドレス(ETOジャケット又はアイク・ジャケット)米軍正式名称はウールフィールド・ジャケットになる。
WAC (Women’s Army Corps) / Herringbone Twill Fatigue and Leggings, Enlisted Personnel
陸軍女性部隊
カバーオールから始まった女性用作業服は、男性用グリーン色のコットン・ヘリンボン・ツィル生地を使った。しかし、女性たちからは着心地が悪く夏は暑く冬は寒い、しかも洗濯した際に乾きが遅いなど不評だった。とくに足に付けるレギンスとシューズは男性用の最小サイズを選んだとしても合わず女性たちの足を計測しそのデーターを元にいちから作り直された。
WAVES (United States Naval Women’s Reserve) / Navy Blue Woking Uniform
海軍女性予備隊
離着陸場管制塔で信号を送る隊員は、タイを付けた白のブラウスと前身に2個のウェルトポケットがある6枚ハギでネイビーブルー色のスカート。ブラックのオックスフォード・シューズはすべての冬期用勤務服に対応できた。この季節は陸軍同様にジャケットは着ない。服務規定のサマー・ブルーになる。
WAAC (Women’s Army Auxiliary Corps) / Winter Uniform, Enlisted Personnel
陸軍女性補助部隊
初期制服が女性たちからの要望を聞き入れられて何度か修正が加えられる中で、シャツに関しても問題が起きた。軍の仕立て屋は男物を縮小しただけで、まるでシャツをブラウスと呼び名を変えただけだった。陸軍布地色のオリーブ・ドラブには革のアクセサリーに関するカラーコーディネイトが決められていた。グローブ、ハンドバッグとシューズはゴールデン・タバコ・ブラウン色で統一した。
ANC (Army Nurse Corps) / Hospital Uniform, Officers
陸軍看護部隊
陸軍看護部隊としては第1次大戦では403名のナースがフランスに渡り英国軍を救護活動した。アメリカが参戦すると延べ1万名近くのナースが携わった。白のクレープ・ワンピース・ドレスはステンオバー・カラー、ボタン留めシングル・フロントでプリーツがないスカート。特徴的なダブル・カフスの袖口を持つ。1920年代から続くナース・スタイルは基本的に変わらない。
WAVES (United States Naval Women’s Reserve) / Navy Blue Shirts, Enlisted Personnel
海軍女性予備隊
1944年に議会は海外勤務に志願した女性隊員のために特別許可を承認した。期間は約1ヵ月としハワイに配属された。ネイビー・シャツにはリザーブ・ブルーのタイを合わせることがルールになっている。左腕に付けられるランク章および兵科章は男性兵士と同じになる。彼女はペティー・オフィサー3rd.クラス※、スペシャリスト”T”インストラクター・アンド・コントロールタワー・オペレイターになる。
※海軍3等兵曹技術下士官、管制官および教官職/T=所属する科章
WASP (Women Auxiliary Ferrying Squadron of Women Pilots) / Heavy Winter Shearing Flying Suit
女性パイロット部隊(陸軍航空隊)
時代的に女性が軍の航空機を操縦することはハードルが高かった。しかし、2人の女性パイロットは承認にこぎつけた。一般から採用された女性たちは延べ500時間の飛行訓練を開始した。高高度飛行には男性用B-3フライトジャケット、A-3トラウザーズ、B-3ヘルメットを着用した。A-6のオーバー・シューズだけは女性用に作られた。
WASP (Women Auxiliary Ferrying Squadron of Women Pilots) / Pinks and Greens Working Uniform
女性パイロット部隊(陸軍航空隊)
WASPは、二人の飛行経験豊富な民間女性パイロットが、ルーズ・ベルト大統領の妻に宛てた戦闘外任務の援助協力の手紙から始まった。日本との戦争が始まると急ピッチに女性パイロットの育成がスタートした。シャツは陸軍将校用ダーク・オリーブドラブ(グリーン)でこれにライト・オリーブドラブ(ピンク)トラウザーズを合わせたセパレーツ・スタイル。HS-38ラジオ・ヘッドセットはゴム・カップを外して使った。
USMCWR (United State Marine Corps Women’s Reserve) / Field Jacket, Enlisted Personnel
合衆国海兵女性予備隊
訓練を通して着られたのが男性用M1941フィールド・ジャケットの女性版になる。オリーブ・ドラブ色で素材は撥水加工されたコットン・ポプリンの表地、裏地にはフランネルが張られた。フロントはジッパーとボタン留めで2個のスラント・ポケットが付き袖口にはウォームストラップ。背身にはバイ・スイングとバックバンド付きでサイドにはサイズ調節用のタブが付く。バイザー・ハットは当時最高級のデザイナーに頼んだため4軍の中では飛び抜けて美しい曲線をもった仕上がりになった。
NNC (Navy Nurse Corps) / Indoor Uniform, White Hospital Dress, Officers
海軍看護部隊
屋内での勤務服、つまりホスピタル・ドレスになる。充分にプレスされた素材はコットン・ツィル生地でノッチド・ラペルのシングル・フロント。胸にはパッチポケットがあり袖はボタン留めのダブル・カフス。スカートにもポケットが付きボタンはすべて取り外しできるシャンク・ボタンになる。最後にスカートのウエスト・ベルトで留める。これに白のストッキング、ラバー・ソウルの白いオックスフォード・シューズを穿く。フック・アンド・アイで留める伝統あるケープはナースのシンボル。
WAVES (United States Naval Women’s Reserve) / Navy Blue Shirts and Slacks, Enlisted Personnel
海軍女性予備隊
ネイビーブルーのシャツはメインの勤務服になる。尖った衿で長袖のカフス・バンドは2個のボタンで留める。肩には3本のダーツがとられ女性のシルエットに合わせた仕立て。ランク章は左の腕にだけ付けられる。スラックスの要望に対して1943年に採用を認めた。バックル付きベルト、サイド・ポケットがあるゆったりとしたストレート・シルエット。
WAVES (United States Naval Women’s Reserve) / Overcoat, Officers
海軍女性予備隊
将校の為に用意された冬期オーバーコートはピークドラペルでダブルブレスト8釦3個掛け。ボタンはゴールド海軍メタルボタン。ネイビー・ブルー色で前身の切り返しに沿って左右にポケットがあり男性と同じランクを示す袖章とショルダーボードが付く。背身の切り返しには上下にマチを取り身体全体を動きやすくしている。
WAVES (United States Naval Women’s Reserve) / Dungaree Slacks and Chambray Shirts
海軍女性予備隊
作業服だったアビエイション・カバーオールの代わりとして半袖で胸ポケットの付いたシャンブレイ・シャツと男性用のダンガリー・トラウザーズが追加された。支給に関してはオプションとした。彼女たちはダンガリーのバンダナを作り髪留めとして頭に巻いた。主に航空整備士や訓練生が好んで着用した。
NNC (Navy Nurse Corps) / Summer White Outdoor Uniform, Officers
海軍看護部隊
海軍の看護部隊は1905年、20名のナースによってスタートした。彼女たちの最初の使命は、ワシントンD.C.に「海軍医療病院学校」を創設しナースを育てることから始まった。夏期の真っ白な制服は3個のゴールド海軍メタル・ボタンのシングル・フロント。4個のパッチ・アンド・スカラップ・フラップ・ポケット。男性用制服デザインからのウエスト・バンド。バイザーレス・サービス・ハットとランク章の付いたショルダー・ボード。海軍看護部隊章は錨の上にオークの葉とどんぐりをのせたもので、夏期はジャケットには付けずシャツの衿に付ける。
WAC (Women’s Army Corps) / Winter Service Uniform, Officers
陸軍女性部隊
1943年2月に合衆国陸軍はWAAC(陸軍女性補助部隊)をWAC(陸軍女性部隊)として正式に承認した。制服のジャケットもスラッシュ・ポケット以外すべて男性用と同じになりより軍服風になった。将校用ダーク・オリーブ・ドラブ色のジャケットはピンク・シャツ、タイとスカートで組み合わされる。当時、男性用ギャリソン・キャップは人気があり彼女らはキャップを支給されるとすぐに交換した。
ANC (Army Nurse Corps) / Beige Off Duty Dress, Officers
陸軍看護部隊
非公式な社交界行事に出席のためのシャツウエストタイプ・ドレスは初期より承認されていた。ダーク・ブルー色からオリーブ・ドラブ色、そして夏期用のベージュ色と変化した。着用もすでに勤務外ドレスとなった。暑いために素材は軽量でベージュ色に染めた平織りレーヨン生地を使用した。デザインも誇張したショルダー・ライン、イミテイション・ポケット、フレンチ風スリーブ・ラインにプレイドとエレガントに変化した。靴は少し洒落た茶のパンプスを履くことができた。
WASP (Women Auxiliary Ferrying Squadron of Women Pilots) / Service and Dress Uniform, Enlisted Personnel
女性パイロット部隊(陸軍航空隊)
女性パイロットたちは軍属のため公式な制服はなかった。リーダーであるジャッキー・コクランは地元のテーラーで制服を作った。グレッシュ・グリーン色で4個のポケットにベルトで留めるジャケットとトラウザーズのスタイル。同じ布地でギャリソン・キャップとスカートも作った。制服はすべて個人で購入された。部隊バッチは、ATC=陸軍航空輸送部隊章になる。
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