1942年初めに新人募集がスタートし「陸軍女性補助部隊」(Women’s Army Auxiliary Corps)=「WAAC」設立法案が可決。そこから始まる戦う女性たちのファッション史!!「DRESSED FOR DUTY 最前線ファッション 戦う女性たち Part1」に続く第2弾!!
Text & Illustration/M.Kelly
Photo/U.S. ARMY, WPP Archives, Library of Congress, NARA
参考資料/ワークウエア、COMBATマガジン、FLYING(U.S. ARMY AIR FORCES ISSUE)
WAAC, WAC (Women’s Army Auxiliary Corps, Women’s Army Corps) / Winter Field Overcoat, Officers
陸軍女性補助部隊、陸軍女性部隊
海外へは秋になる前に赴いたために後送される冬期の衣料が遅れる問題が起こった。戦時下における海上輸送は困難だった。ガス・マスクなど装備を付けて乗船する将校のフィールド・コートは、コーバーティブル・カラーで深いダブル・ブレスト8釦3個掛けで、サイドに2個のスリット・ポケット。バックル付きオールアラウンド・ベルトで留める。
NNC (Navy Nurse Corps) / Summer Working Uniform, Officers
海軍看護部隊
夏期の真っ白な制服と同じ服務規則で着れるダブルブレストのワンピース・ドレスを1944年に採用した。ややブルーグレイ系の色でギャリソン・キャップと共にレーヨンやサマーウーステッド生地で作られた。クロスベルト付きスカートは前身にキック・プリーツをとった6枚ハギのニーレングスでセミフレアー。小さなブレスポケットがあり長袖のカフス・バンドをボタンで留めた。
WAVES (United States Naval Women’s Reserve) / Aviation Coverall
海軍女性予備隊
女性航空整備士たちのために明るいブルー色でコットン生地のワンピース・アビエイション・カバーオールが支給された。シングル・フロントでボタン留め。ピーター・パン・カラーに使いやすい大きな4個のポケットとペンシル・ポケット。ウエストのバンドは服に固定されていて前で結ぶ。裾にはサイズ調節用タブが付く。長袖が基本だがほとんど半袖にしている。また、ネイビー色のソックスが規則だったが白色のソックスを好んで履いた。
WAVES (United States Naval Women’s Reserve) / Summer Gray Working Uniform, Officers and Enlisted Personnel
海軍女性予備隊
1942年、陸軍同様に海軍でも女性による援助協力が始まり、各種事務職から専門職までの訓練を受け各ステーションに配属された。夏期の勤務服はグレーと白のストライプ柄でコットン・シアサッカー生地。通常勤務服は半袖でベルト付きシャツ・ドレスのシングル・フライ・フロント。ラウンド・カラーの下に黒色のタイを海軍伝統のスクエア・ノットで留める。将校は海軍章が彫られた黒色のプラスティック・シャンク・ボタンで留めるフロントになり黒色のハンドバック、パンプスとグローブを着用するのがルール。
ANC (Army Nurse Corps) / Hospital Uniform
陸軍女性部隊
茶色と白のストライプ柄でコットン・シアサッカー生地の病院内勤務服は1942年に採用された。幅の広い衿の付いたラペルがないタイロッケンのワープ・アラウンド・ワンピース。これに衿のないカーディガンスタイルのワンボタン・ジャケットがセットされた。同素材で紐留めのナース・キャップも用意された。更に、より機能的なシャツとスラックスで着られるバージョンも作られた。
USMCWR (United State Marine Corps Women’s Reserve) / Working Jacket and Hat
合衆国海兵女性予備隊
海兵隊でも海軍同様に作業服のことを素材がHBTに変わってもダンガリーと呼ぶ。スリー・ポケット・ジャケットとループ付きトラウザーズは、前合わせ以外100%男性用を置き換えたデザイン。海兵隊ステンシルが入ったポケットも左胸に付けた。同素材で海兵隊バッチを付けた独特のカーブデザインのギャリソン・キャップやディジー・メイ※(=ファティーグ・ハット)を合わせて被った。
※ディジー・メイ:1909年から始まったアメリカンコミックの女性キャラクターが被ったハット
WASP (Women Auxiliary Ferrying Squadron of Women Pilots) / Santiago Blue Dress Uniform
女性パイロット部隊(陸軍航空隊)
1944年に正式な制服が採用された。サンティアゴ・ブルーに染められたベルト付きジャケットとスカートで女性部隊としては初めてのモダンなベレーが組み合わされた。白のシャツにブラック・タイでハンドバック、シューズもブラックとした。作業服としてバトルドレスとスラックスも同時に支給し、これに合うベース・ボールキャップも用意された。肩には陸軍航空隊パッチを付け胸には誇りあるWASPウイング章を付けた。
WAVES (United States Naval Women’s Reserve) / Navy Blue Working Uniform
海軍女性予備隊
夏期の通常勤務服は白の半袖シャツにネイビーブルーでウール生地のスカートとの組み合わせ。シャツの素材は肌触りのよいコットン・ギャバジンでタックインで着るシャツウエスト・スタイル。前身に2個のウエルト・ポケットがあるスカートは6枚ハギで膝丈のニーレングスでセミ・フレアーをサイドジップで留める。
WAVES (United States Naval Women’s Reserve) / Reserve Blue Woking Smock
海軍女性予備隊
仕事服として採用されたワン・ピースはA-ライン・シルエット。リザーブ・ブルー色で半袖、肩のダーツを取ったワープ・フロント・デザイン。衿はラウンド・エンド・ピークドラペルで裾をプラスティック・ボタンで留めてさらにタイ・ベルトを結ぶ。左脇には大きめのパッチ・ポケットが付く。素材は主にコットンまたはレーヨンを使った。背身には腕を動き易くするバイ・スイング・プリーツをとった仕立て。
WAAC, WAC (Women’s Army Auxiliary Corps, Women’s Army Corps) / Utility Coat, Enlisted Personnel
陸軍女性補助部隊、陸軍女性部隊
大戦中は軍全体に輸送路の確保が大優先だった。時として真冬の時期の防寒衣料は大きな遅れをとった。任地へ後送されたユーティリティ・コートは8釦3個掛けのダブル・ブレスレットでライナー付き。ガンフラップがあり2個のスラッシュ・ポケット。衿と袖にはストーム・タブ付きヘルメットごと被れる大きなパーカー・フードがセットされている。
WAAC, WAC (Women’s Army Auxiliary Corps, Women’s Army Corps) / Herringbone Twill Two Piece, Enlisted Personnel
陸軍女性補助部隊、陸軍女性部隊
作業服生地のコットン・ヘリンボン・ツィルはツーピース・モデルも作られた。胸に2個のボタン留めパッチ・アンド・フラップ・ポケット付きでストレート・スリーブのワークシャツ・タイプ。トラウザーズはベルトレスのボタン留めで、前身に同様にボタン留めパッチ・アンド・フラップポケットが付く。こちらもやはり繰り返し着ていくと不潔なイメージになるなど不評になり女性たちは次第と袖を通さなくなった。
NNC (Navy Nurse Corps) / Flight Nurses Uniform, officers
海軍看護部隊
傷病兵の空輸搬送のために同行するナースたちをフライング・ナースと呼んだ。機内作業服は首にしっかり留められるアングル・ジップ・アップ・フロント。三角形の革で補強したポケット、両サイドにポケットを持つスラックスとベイスボール・キャップで構成された。夏はやや灰色がかったグリーン色でコットン製、冬は男性用服地と同じグリーン色のウール生地で作られた。フライング・ナース・ウイング章は左胸に付けた。
ANC (Army Nurse Corps) / Winter Service Uniform, Officers
陸軍女性部隊
冬期用制服はスカート以外限りなく男性用陸軍服に近づけたデザインになる。ダーク・オリーブ・ドラブ色のバラシャ生地を使いピークド・ラペルでシングル・フロント。下のポケットだけはフラップレスのスリット・ポケット。バイザー・ハットは髪毛のふくらみを配慮したデザイン。小銭入れの財布付きハンドバッグ、グローブはすべて支給された。
WAC (Women’s Army Corps) / Field Jacket, Enlisted Personnel
陸軍女性部隊
飛行場内をジープで移動中の女性隊員は、HBTカバーオールの上に陸軍航空隊章パッチを付けた男性用M1941フィールド・ジャケット着ている。海兵隊では女性用に作られたがWACへの支給はなかった。当時の女性たちの髪型はパーマの全盛期だった。作業中にハットやキャップを被ることは多くの隊員たちの悩みのたねだった。とくに将校などは必要とされるルール以外被らなかった。
WAC (Women’s Army Corps) / Summer Uniform, Enlisted Personnel
陸軍女性部隊
1944年に夏期制服が変更された。固いコットン・ツィル生地からソフトなトロピカル・ウーステッド生地に変わった。ショルダー・ライン、ボタン位置やポケットの仕立ても改良された。各軍共通してるのは女性用制服のポケットはまったく使えないためにハンドバッグを支給している。WACの場合は、小銭入れが付属するアーチ型のショルダーバックになる。左肩よりたすき掛けがルールだったが服のシワが問題になり一度左肩にかける事になるが、最終的に元に戻された。
WAAC, WAC (Women’s Army Auxiliary Corps, Women’s Army Corps) / Herringbone Twill Fatigue Uniform, Enlisted Personnel
陸軍女性補助部隊、陸軍女性部隊
海外勤務において後方支援と言えども攻撃されない保証はないため野営を含めた屋外訓練も受ける。ファティーグに身を包み完全装備をした女性隊員。ミュゼットバックにはメス・キット、レーション、予備ソックス、セーター、レインコートなど…。毒ガス攻撃への防衛としてM3ライトウエイト・ガスマスクとキャリング・ケースを携行する。女性用に改良されたWACシューズにレギンスを付ける。
WASP (Women Auxiliary Ferrying Squadron of Women Pilots) / Intermediate Flying Suit, Pilots or Nurse
女性パイロット部隊(陸軍航空隊)
陸軍航空隊は女性用飛行服を標準化したのは1943年6月だった。男性用のB-15ジャケットとA-11トラウザーズに似た女性用B-17ジャケットとA-13トラウザーズを組み合わせた。軍が決めた中間装備ゾーン用のものでウールの制服の上から着用するものとして作られた。ムートン襟で素材は防水、防腐加工したコットン綾織りで裏にはウールとアルパカの混紡を使った。
WAC (Women’s Army Corps) / Winter Service Uniform, Enlisted Personnel
陸軍女性部隊
冬期用防寒衣料は充分な暖かさを保つ肌着などを含む準備が遅れていた。すでに派兵先では暖房設備のない建物の中での作業やヒーターのない車の運転などで女性兵士たちからの緊急要請があった。WAC本部が陸軍の承認を取り服作りが始まった。基本的な考え方は男性兵士用と同じで服を重ねていく方法になった。各種厚手のアンダー・ウエアのうえにライナー、ジャケット、スラックスを組み合わせた。特別な織物のカシミレット素材を使った上部とゴム底の4バックル・オーバー・シューズが用意された。しかし、不足状態は続き寒冷地では男性用などが代用された。
WAAC, WAC (Women’s Army Auxiliary Corps, Women’s Army Corps) / Herringbone Twill Fatigue Uniform, Enlisted Personnel
陸軍女性補助部隊、陸軍女性部隊
カバーオールは車両関係をサポートする部隊にいち早く支給された。フライ・フロントのボタン留めでツール・ポケットは腿に2個でウエストバンドで留める。唯一男性用と違うのはトイレ用サービス・フラップが付けられたこと。パンク修理からメンテナンスまで幅広く使った。キャップ類はディジー・メイ・ハット、バイザー付きファティーグ・キャップやベースボール・キャップなどすべて男性用の小さなサイズを適用させた。
NNC (Navy Nurse Corps) / Summer Service Dress White and Blue, Officers
海軍看護部隊
真っ白な夏期用制服はゴールド海軍メタル3釦3個掛のシングル・フロントでウエスト・バンド・スタイル、ポケットは4個のパッチ・アンド・スカラップ・フラップでスカートは冬期と同じデザイン。ランク章は肩のショルダー・ボードになり、衿章のバッチはシャツの衿に留める。1944年からは将校のオフィサーズ・キャップは初期の顎紐は外しモヘア・バンを巻いた上に海軍章を付けることになった。さらに、冬期ドレス・ブルーのランク章は袖のストライプのみとなる。
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