お酒博士・橋口孝司の酒千夜 Vol.36  ウイスキー造りにも挑戦!160周年を迎える「千代むすび酒造」(鳥取県)

今回は、多彩な酒造りにチャレンジしている鳥取県の「千代むすび酒造」を紹介します。
ご縁があり、鳥取県境港での酒造りの現場を見せていただく機会があり、新たに手がけているウイスキー造りについても色々なお話を伺うことができました。

岡空晴夫代表取締役(写真左)と岡空総常務取締役(写真右)と一緒に


■“千代に八千代にご縁を結ぶ”酒造り

千代むすび酒造は1865年(江戸時代、慶応元年)、鳥取県境港市に創業しました。数回の移転や社屋の全倒壊などの苦難もありながら、現在に至るまで常に進化を続けている酒造会社です。

現在造っているお酒は、社名でもある日本酒「千代むすび」を中心に、いも焼酎、ジン、ウオッカ、ウイスキー、リキュールなど。他にも発酵の技術をいかして甘酒やスイーツなども作っています。

現在の岡空晴夫社長で5代目となり、2025年には創業160年を迎えます。

経営理念は「永久に変わることのない人と人の固い結び、絆」

「千代むすび」という名の通り“千代に八千代に皆様のご縁をむすぶ”ということをとても大切にしています。

人とのご縁を大事にすると同時に、酒造りの条件が揃った自然環境にも感謝し、原料には厳選した地元のものを中心に使用しています。鳥取県固有の酒造好適米「強力(ごうりき)」を復活させ強力を使った日本酒を造る、といった取り組みも行なっています。

そして、お酒の造りの第一は「美味しいこと」という考えから味にもこだわっています。千代むすびのお酒は【濃醇辛口=ふくよかな味わいで、飲み後スッキリの辛口】をコンセプトにしています。「みんなの幸せ 自然の恵みを 美味しく 楽しく 健康づくり」という理念に基づいた味を作り上げているのです。

■千代むずびのある『鳥取県堺港』とは

千代むすび酒造は、JR堺港駅から続く「水木しげるロード」にあります。駅前に本店、近くに岡空本店があり、岡空本店では千代むすび酒造の商品はもちろん、地元お土産品なども購入することができ、千代むすびのお酒とお酒に合うおつまみを楽しめる日本酒BAR「酒造角打ち」も併設しています。

堺港は「妖怪の町」としても有名で、堺港出身の漫画家水木しげるさんの代表作「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪のブロンズ像や、水木しげる記念館など観光スポットも楽しめます。山陰を代表する漁港でもあるので新鮮で美味しい海産物を楽しむこともできます。

■千代むずびのウイスキー造り

酒を造り続けてきた長い歴史の中で様々なチャレンジを続けてきた千代むすびは、常に新しい視点でチャレンジを続けてきました。日本酒から始まった酒造りは、焼酎やジン、リキュール、ウイスキーにも広がっています。

今回、私の専門でもあるウイスキー造りの現場を拝見し、貴重な原酒の数々もテイスティングさせていただきました。

2021年春から新たに始めた千代むすびの「ウイスキー造り」。今まで実績がある焼酎造りのノウハウをいかしながら、ウイスキーの熟成にはミズナラ樽など様々樽を使用したり、独自のこだわりをもったスタイルでウイスキー造りにチャレンジしています。ウイスキー造りを発案した5代目岡空晴夫社長は、今では一般社団法人日本ウイスキー文化振興協会評議員を務めウイスキーの世界でも積極的に活動しています。

私が千代むすびのウイスキー造りの現場を見て一番印象に残ったのは、社長をはじめ、6代目岡空聡常務やご家族、スタッフがみんなで力を合わせてウイスキーを研究し、造り、育てているということでした。みんなで数十種類のウイスキー原酒をテイスティングした時にも、たくさんの質問や意見が活発に飛び交っていました。

そして創業160周年となる2025年、いよいよ3年間の熟成を経た初めてのシングルモルトジャパニーズウイスキーが発売される予定とのこと。3代目当主岡空林太郎氏の名前を冠したウイスキーの発売がとても楽しみです。

■千代むずびが造る新しいお酒たち

多種多彩なお酒を造っている千夜むすびの商品の中でも、私が注目した新しいスタイルのお酒を紹介します。日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど世界からの注目が集まる中で、新たな時代を感じさせるお酒たちです。

【JAS認証】千代むすび純米吟醸オーガニック NATURE

 2005年に有機酒類の認定工場としての認証を取得し、有機栽培の酒米を使用した日本酒造りを目指し、2024年10月に「JAS認証」を受けた「オーガニック純米吟醸NATURE」をリリースしました。

酒米は茨城県の農家との直接契約を結び、有機栽培の山田錦を使用しています。

スパークリング日本酒CHIYOMUSUBI AWA SAKE SORAH

瓶内2次発酵で酵母が自然につくり出した自然な泡、ほのかなお米の旨み、にごりのないクリアですっきりとした後味が特徴の発泡日本酒です。鳥取県産の酒造好適米を原料に、中国山系の湧き水を使って仕込んでおり、一般社団法人 awa酒協会によって、世界の乾杯酒を目指す”AWA SAKE”として認定された商品です。受賞歴も多数。

《受賞歴》
・Kura Master2023 プラチナ賞
・Kura Master 2020 金賞
・Kura Master 2021 金賞
・ミラノ酒チャレンジ2022 Double Gold受賞
・Kura Master 2023 プラチナ賞

*Kura Master=フランスの一流ホテルのトップソムリエが選ぶ品評会

※「AWA SAKE」とは?

一般社団法人awa酒協会によって認定された、二次発酵による自然な発泡の日本酒です。

2016年11月設立したスパークリング日本酒を醸す日本各地の蔵元で構成された一般社団法人によって厳格な品質基準と第三者機関での検査をクリアした銘柄を「AWA SAKE」と認定しています。

世界の顔を輝かせる乾杯酒として認められる「AWA SAKE」になることを目指しています。

*「AWA SAKE」は一般社団法人awa酒協会の登録商標です。

一般社団法人awa酒協会公式サイト

【2025年春発売予定ウイスキー】Chiyomusubi Japanese Whisky Single Malt 林太郎 3年

2021年春から40年間の蒸溜技術と経験をいかしたウイスキー造りを始め、思考錯誤しながらウイスキーと向き合い、3年間の熟成を経て千代むすび初のシングルモルトウイスキーとして発売される予定です。

※日本洋酒酒造組合による「ジャパニーズウイスキー」の定義に合致した商品です。

⚫︎千代むすび酒造
所在地:鳥取県境港市大正町131

公式サイト

  • 株式会社ホスピタリティバンク代表取締役 ホテルバーテンダーから料飲支配人、新規ホテル開業準備室長、運営などをてがけ26年間ホテルに勤務。2008年より株式会社ホスピタリティバンク代表取締役に就任。バー開業コンサルティングなどを手がけ酒類関連団体の顧問、理事を歴任し国内外で講演、セミナーを行っている。ウイスキーバープロデュース・運営(2017-2019)を行う。 シャンパーニュ騎士団「シュバリエ」、ベルギービールプロフェッサー、日本伝統濁酒学博士などの称号を持つ。 2015年からは「橋口孝司 燻製料理とお酒の教室」にてセミナーの開催や、ウイスキーを愉しむイベント「ザ・シークレットバー」も銀座と西麻布にて定期的に開催している。 「ディスティラリーパッケージ1992」を皮切りに、「ウイスキーの教科書」「カクテル&スピリッツの教科書」「本格焼酎名酒事典」「ビジネスエリートが身につける教養 ウイスキーの愉しみ方」などを執筆、「世界のウイスキー図鑑」「世界のベストウイスキー」「ハリウッドカクテル日本語版」などを監修。ウイスキー、カクテル、スピリッツを中心に酒類に関する執筆・監修は26冊以上。 Webでは、「たべぷろ」にて執筆(https://tabepro.jp/author/hashiguchi) 「江崎グリコ お酒の話」を監修(https://jp.glico.com/osake/index.html)
  • https://www.hospitality-bank.com/

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