今年は巳年! 蛇といえばコイツだ! アルファロメオ ジュリア クアドリフォリオを乗ったゾ!

流行に乗りたくないオトナは注目のセダン!

 アルファロメオ。それはイタリアの情熱の名前でもある。創業時は「超」高級車メーカーとして名を馳せモータースポーツの歴史にも輝かしい記録を残してきた。日本ではクルマに興味のない人も名前だけは知っているというブランドでもある。ブランド名に「ファ」の子音を使い、しっかり「オ」の母音で名前が終わるなど日本的な美しい発音も忘れてはイケナイ。そのネーミングとクルマのスタイリングからファンの多いアルファロメオだが、現在は世の流れに沿うカタチでSUVを2種もラインナップ(2024年日本市場)。そんな現行ラインナップで唯一のセダンがジュリアになる。1962年のセダンに採用されたネーミングで2015年に復活した。そんな現行ジュリアの中でもホットモデルをご紹介なのだ。いいんですか、流行ってるからSUV一辺倒の選択で?

穴ぼこだらけのエクスタシー

 モデル名はジュリア・クアドリフォリオ(以下JQ)。一目見ただけでムムムっ、こいつはただモノではないゾ的オーラを発している。端正さにイタリア的「美」を織り交ぜたようなのがジュリアなのだが、このただモノではない感はどうだろう。想定されるドイツのライバルメーカーだって普通よりちょっとスポーティさなのだがJQは本気のベクトルが強く感じられる。いたずらに神輿のようなリアウィングもないのに。羊の皮を被ったオオカミのフレーズが言い得て妙なイデタチだ。

 4つ葉のクローバーが輝くフロントフェンダーには放熱や空力を考慮したサイドベント、ボンネットも同様でクルマに多数の穴ぼこが空いているだけでなんとなくコーフンしてしまう。加えて大きく張り出して見えるカーボンインサート付きのサイドスポイラーは、宇宙戦艦ヤマトに展開される安定翼のごとしでイスカンダルに行けそうなくらいだし、それでいてリアに設置されたスポイラーはこじんまりとしているのが奥ゆかしい。

スポーツ濃度40%増しのインテリア?

 インテリアは通常のジュリアと大きな変化はないが、2023年のマイナーチェンジで室内に奢られているカーボンファイバーの見せ方が新しくなり、「3D仕上げ」を採用。炭素繊維の織り目を立体的な表現に。

 また試乗車にはカスタマイズプログラムで選択できるようになったスパルコ製のスポーツカーボンシェルシートが装着されていた。単純な筆者はやっぱりイタ車はスパルコだよねぇと大きく頷いてしまった。唯一の不満はこのバケットシートを頼むとシートヒーターがつかないことくらい。なおシート調整は上下を除いて手動になっていた。このフロントシートは後ろから見てもレーシーでジツにカッコイイ。もちろんセダンであるからして後席の居住性は合格点以上だが、バケットタイプのフロントシート同様、すっぽりと体がはまるようなスタイルなのでSUV的な満場一致的に乗り降りのしやすさではないと感じた。

 8.8インチディスプレイのインフォテイメントシステムや前出のマイチェンで採用された12.3インチのデジタルメータークラスターといったデジタルは最近のお約束だが、時代に置いていかれる筆者にとってはエアコンや曇り止めといった一番使うであろうモノのスイッチは物理的で安心した。なおオーディオは音源に忠実で、応答性の高い音質が特長で、全席で臨場感を味わえるアメリカのプレミアムスピーカーブランド、ハーマン/カードンの900W出力のシステムが標準装備になっている。

エンジンにもウンチクあり!

 JQのエンジンは2.9リッターのV6ターボ。3リッターではなく2.9リッターの排気量に、ん? と思ってしまうがジツはこの数値に深いわけがある。エンジンはアルファロメオ謹製と発表されているけれど、フェラーリが携わったという暗黙の了解事項がある。

 流麗なオープンモデル、フェラーリ・カリフォルニアTに搭載されるタイプF154型エンジンは3855ccV8(560PS、755Nm)。

 ちなみに、このエンジンのベースはマセラティ・クアトロポルテGTSに用意された3799ccV8ツインターボ。このパワーユニットの排気量を若干あげ、クランクシャフトをフェラーリのシングルプレーンに変更したモノ。

 そんなカリフォルニアTのエンジンのボア×ストロークは86.5×82mm。クルマの排気量はこのボア(シリンダーの内径面積)×ストローク(ピストン行程)×気筒数で求められる。シリンダーの内径面積は小学校で習う円の面積同様で、半径×半径×3.14。

 カリフォルニアTのボアは86.5なので半径はその半分。したがって43.25。そうすると内径面積は43.25×43.25×3.14の計算結果になり、それにストロークの行程をかけると1気筒あたりの排気量は482ccになる。カリフォルニアTは8気筒なので482cc×8で総排気量は約3856cc。このエンジンを6気筒化すると、2892ccの排気量になる、なるほど。JQはフェラーリとまったく同じボアストロークとバンク角を持つだけある。

 余談だが1970年代後半から2000年代前半にかけてアルファロメオに搭載された世界一官能的と評され、最後の自社単独開発のV6エンジン。これは見た目も美しく、6本のインマニに映るのはニヤけた自分の顔と相場が決まっているくらいフィーリングや音以外にも魅力あるのだが、この開発者がジュゼッペ・ブッソ。彼は後にフェラーリに移り、再びアルファロメオに戻ってきた。フェラーリの母がアルファロメオと言う逸話もあるがJQの母はフェラーリでもあるのかも。

走ればカンタービレ!

 ステアリングのスターターボタンを押してエンジン始動。始動時は拍子抜けするほど静か。始動時は少しだけ爆音的演出が流行っているけれどJQは唯我独尊。本モノは細かい演出はしないってことか。動き出すとまず感じたのはクリープ現象の強さとどことなく強い緊張感。血のにおいというか生きモノ感があるといえば伝わるだろうか。

 走り出せばアルファってこんなにボディ頑丈だっけ(失礼)? と思えるほどの剛性感。路面の追従性も良く乗り心地も悪くないし、2000rpmも回しておけば流す限りでは紳士的なセダンだ。

 かようにすべてに余裕があるのでD.N.Aモードでエコノミーに相当するAを選択。昔のジュリエッタやミトだとあからさまにパワーダウン感があったけれど、これだけパワフルなJQだとAでも十分街中で交通の流れをリードできる。むしろこのサイズで2.9リッターだからこんなモノとは絶対に感じないはず。なんせたった2550rpmで600Nmの最大トルクを発揮するのであって。Aで慣れた頃にNモードへ。う〜ん、このあたりは少しツキが良くなったかなくらいしか感じられない。もともとのレスポンス自体がいいからかもしれないけど。パワー感もさほどAもNも変わりはなし。

 Dにすると抜群のレスポンスと素敵なエンジン音が。サスもフィーリングが違う。筆者のような凡人が一般公道で安全にクルマの基本性格を確かめる時は広い駐車場で歩く速度くらいでハンドルを左右いっぱいに切りながら蛇行すること、とその昔スカイラインの父水野さんに教わった。それをJQで実践したらNもAもサスがしっかり沈み込んで揺れを吸収してくれ、Dだとロールを抑える傾向に。そしてJQにだけ設定された専用のRACEモード(以下Rモード)ではその速度域(と言っても徒歩並だけれど)まったくロールしなかった! このRモードはトラクションコントロールの介入は限定的で各制御はサーキットユース向けになる。そして何よりイタ車好きな皆様のためにエグゾーストシステムもダイナミックになり、エンジン音も楽しめるのだが、街中では使わないよなーと思ってしまう。なんせJQのスペックは510PS/600Nmもある上に生粋の後輪駆動。これが炸裂500馬力!! しかも制御なし! だとサーキットや腕に覚えのあるドライバーは超絶楽しそうだけれど、筆者は雨なら絶対に使わないと宣言できる。ステアリングもクイックだし。でもまっすぐだけの高速道路ならエンジン音に引っ張られてついぞ回してしまうのは間違いない。

 そしてステアリングはどのモードでもクイック。パワステが軽いせいもあるけれどクイック、ベリークイック、ハードクイックくらいと思えば間違いない。

 世の良識ある皆様は、んな性能、日本じゃいらん! と正論を仰せられる。確かにJQはニュルブルクリンクでは7分32秒を記録するほど。170以上のコーナーを持ち路面の悪いニュルならクルマにかかる負荷は大変なモノ。そんな過酷なコースでラップを刻められるのは優れた足回りや、どの速度域や回転域から踏んでもパワーを出してくれるエンジン、信頼できるブレーキ、などなどが必須項目。一般公道ではたどり着けないような限界域を持つクルマは、普段使いなら高い安全性につながるのだ。例えば緊急回避。高性能ブレーキやクルマの前後重量配分、懐の深い足回りでクルマの姿勢を乱すことなく回避したり、減速したりできる。豊かなパワーや有効な空力性能は高速巡航時では余裕につながり、その余裕は疲労軽減につながるのだ。

主役はあ・た・し

 セダンを謳いながらも乗れば4ドアのスポーツカーで、あぁ、アルファロメオの血統はここにあると映画のキャッチコピーのようだけれど事実なのだから仕方ない。それでいて街中では余裕綽々。組み合わされる8ATとの相性も良く、50km/hではすでに6速に。高速では80kmは8速で1000rpmを少し上回るくらいで、100kmは8速で約1500rpm。そこから速度をあげて120km/hは8速で約2000rpm、6速なら3000rpm。3速全開で120km/hでもある。この時の音と回転の伸びが超絶気持ち良くて無理やり低いギアを選んで加減速を繰り返したくなるのはアルファロメオの悲しき性か。この性のためか今回の試乗の燃費は400km近く走って高速6割、街中2割、山道1割、渋滞1割で8.6km/Lだった。

 余談だがDモード以上ならばフロントのスポイラーが100km/hを超えると高速安定性を高めるために自動的に下がる。下り幅は約5cmくらい、らしい。任意で作動できないのが残念だが。

 クネッタ道でも走るようならば大変気持ちいい。ダイレクト感溢れる操縦性と申しましょうか。積極的に曲がりたがるのだ。ドイツ車的全面絶対的高安全性走行とは違ったベクトルの楽しさ。まず彼らは理知的で冷静。イケイケで走っている時も何かしらの安心感に加えて、車内にはエンジン音などの演出もある。しかしJQは違う演出は若干あるかもしれないがどんなモードでも自分が主役感は間違いない。コーナー手前で大きめなパドルシフトでギアを落として加速をするとしっかり天然のエグゾーストノートが聞こえてくる。クルマの醍醐味ってコレだよねぇ、と思ってしまう。後輪にはステアリング特性に利のあるアルファロメオでいうところのQ2システム、つまりLSDも採用されている。

 JQは生粋の後輪駆動で前後重量配分は50:50。どこぞのゲルマンメーカー的な謳い文句だがガチなライバル勢はその辺りだろう。メルセデスAMGのCクラスやBMWのM3、アウディRS4などスーパーな性能を誇るけれど全輪駆動を採用しているし、モーターを使ったモデルもある。レクサスのIS500は後輪駆動だけど、国産というだけでなんとなくの安心感もある(?)しかしJQはクルマは運転してナンボを地で行く。これこそがJQの魅力だ。

 イタリア語でクルマは女性名詞「マッキナ」になる。昨今の豊満でグラマスなSUVもいいけれどみんな乗っているし、本当はセクシーなスポーツカーが欲しい。でも4人乗れないとなぁ、という営業先生に言われるままにドイツ製のスーパーセダンをご購入の皆様、クルマは自分で選ぶモノですよ〜!。この価格帯でヒトと被らず個性を楽しめるオトナでモノにこだわりを持ちたい皆様、JQは隠れたいいモノだった。え? お値段ですか? お値段は1387万円からです。価格を聞いた筆者はジュリアに傷心になったのだった。

アルファロメオ
ジュリア クアドリフォリオ

価格1387万円から
全長×全幅×全高4635×1865×1435(mm)
エンジン2891ccV6ツインターボ
最高出力510PS/6500rpm
最大トルク600Nm/2550rpm

アルファロメオ
ジュリア クアドリフォリオ
問 アルファコンタクト 0120-779-159

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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