特撮ばんざい!第64回:超期待作ムービー『怪獣天国』スペシャル対談!蕨野友也さん×河崎実監督

バカ映画の巨匠・河崎実監督が、またまたとんでもない新作をぶち上げた! メインキャストは『ウルトラマンブレーザー』主演の蕨野友也さん。怪獣を愛する人たちに贈る河崎実最新作、映画『怪獣天国』は、2026年公開に向けて、ただいま製作支援クラウンドファンディングを絶賛展開中。

このたび「モノ・マガジンweb」で河崎実監督と蕨野友也さんの史上初のビッグ対談が実現した! 「怪獣」というワードに魂と魂が響き合うクロストーク。どんな話題が飛び出すか!

写真/鶴田智昭(WPP) 文/モノ・マガジン編集部

――『ウルトラマンブレーザー』『仮面ライダードライブ』に出演された蕨野友也さんが河崎監督の新作特撮映画『怪獣天国』にご出演ということで、SNSなどでもずいぶん話題になっています。蕨野さんは河崎監督の作品には、どんな印象を持たれていますか?

蕨野 実は、失礼ながら、僕自身は河崎監督の映画を拝見したことがないんです。お会いするのは今日、さきほどが初めてです。作品の打ち合わせだったんですね。もちろん監督が、ウルトラマンがお好きなことは存じ上げていました。『ウルトラマンブレーザー』もよく見てくださっていたということで、ありがたくお話をする中で、「あ、自分と似ているな」という感覚もありましたね。

――どんなお話をされたんでしょうか。

河崎 やばい話が出たらカットしてくださいね。

蕨野 アハハハ! いえ、自分は拝見したことがなくて申し訳ないのですが、うちのマネージャーの息子さんが河崎監督のファンで、それもとてもアツくて、マネージャー経由で「ぜひ監督からサインをいただいてください!」と言われて。


河崎 そうなんですよ。俺も蕨野さんの出演オファーで電話していたら、「監督、息子にサインを……!」と言われて(笑)。

蕨野 はい、だから、ますます監督と作品に興味が湧いたし、出演するのが楽しみで。それから『仮面ライダードライブ』で共演した大先輩の堀内正美さん。以前にNHKのドラマでもご一緒したんですが、そのドラマが終わってから、堀内さんに飲みに誘われたんですが、そのときに堀内さんが金色のタイツを着ておられたんです。「なんだろう?」って。

河崎 あ、それは俺のやつ(映画)です。『電エース ザ・ファイナル』だ(笑)。テアトル新宿で上映イベントがあって、たぶんその後ですよ、ハハハ!

蕨野 やっぱり! 今でも写真があるんです。金色のタイツを被った状態の堀内さん。あのときは堀内さんに、どういう顔して、どういう挨拶していいかわからなかったですね(笑)。


河崎 あれは堀内さんが俺の映画に出てくれた最初なんです。17年ぐらい前です。最近の『サイボーグ一心太助』にも出ていただいたんですけど、「蕨野くん、いいやつだから」って言われてましたよ。

『サイボーグ一心太助』の座談会で。堀内正美さんと河崎監督と、デザインを担当した漫画家の加藤礼次朗さん。

蕨野 ありがたいです。『ブレーザー』を始めるときも、堀内さんにお電話しました。「家族がすごい楽しみにしてるから、頑張ってくれ」と励ましていただいて、嬉しくて。

――さきほど「似ているな」と思われたというのは、どんなところですか。

河崎 たとえば、『ウルトラマンブレーザー』の田口清隆監督はすごい監督だけど、さっきも蕨野さんと『ブレーザー』がなんで面白かったかっていう話になってね。やっぱり、ウルトラマンを子供番組として、見てほしくないっていうことをね、蕨野さんが言われるわけですよ。

蕨野 そう、そうなんです。ストーリーもだし、軍隊的な仕草一つにしても、目線の合わせ方にしても、徹底的にこだわりましたしね。

河崎 俺もベクトルこそ多少は違ってもそうなんでね。やっぱり、特撮映画の持ち味というのは、SFで、ファンタジーで、現実離れした事件が起きることですよ。普通の恋愛ドラマなんかつまんねえじゃないですか。いやまあ、極論ですけどね(笑)。ただ、特撮って、現実じゃない絵空事だけど、いろいろ知恵を絞って、整合性がある世界観を作って、その中で人が感動できるお話を作れたら最高じゃないですか。蕨野さんも、『ブレーザー』で田口清隆監督と、そういう点で意気投合したって話をしたんですよね。

蕨野 そう、そうです。

河崎 俺もね、ちょっとベクトルは違うけど同じだし、この『怪獣天国』では、そういう作品をやるよって話をしたんですよ。台本もこれから作っていくんですけどね。


蕨野 まだ映画の詳しい内容はこれからなんですけど、この『怪獣天国』というタイトルは気になって、惹かれるものがあるんですよ。僕は特撮って、ファンの皆さんに比べたら、詳しいわけではないんですけど、『ブレーザー』という作品を終えて、怪獣の存在意義を意識するようになって。

河崎 ゲームキャラみたいに、ただ怪獣がやられるのは面白くないよね。『ブレーザー』はそうじゃないのがよかった。

蕨野 そうなんですよ。皆さんもご覧になって感じていただけたかもしれないですが、『ブレーザー』の怪獣って、ただ街を壊すだけの存在じゃないし、倒されるだけの敵でもないんですよ。僕らは作品の中で、いつも怪獣に何かしらテーマを掲げて、撮影をしてきた思いがあるんです。だから、この『怪獣天国』は、怪獣に何かしらのテーマがあって、このタイトルになっているんだろうなって。監督が何を思って『怪獣天国』とされたんだろうかと。そこも面白そうだな、楽しみだなと思っているんです。

河崎 なんでこの名前かっていうとね。ゴジラやウルトラマンの生みの親の円谷英二監督が、インタビューを受けるドキュメンタリーがあるわけ。これがおかしいんだけど、怪獣が円谷監督にインタビューしてるんですよ。俺の師匠の実相寺昭雄監督が撮った『現代の主役 ウルトラQのおやじ』っていうインタビューなんですけど。蕨野さんは知ってます?

蕨野 いえ、拝見してないですが、ユニークですね。実相寺監督は、お名前をお聞きしたことがあります。

河崎 見てくださいよ。最高だから。で、怪獣がインタビューする中で、「僕たちは、これからどうしたらいいですか?」って円谷監督に聞くんですよ。そしたら監督が「怪獣天国ができてもいいんじゃないかな」って言われるんですよね。『怪獣天国』は、そこから発想したタイトルなんです。


蕨野 そうだったんですか。タイトルだけとはいえ、すごいエンタメを円谷英二さんが考えてらっしゃった……。


河崎 それと『ウルトラマン』『ウルトラセブン』で怪獣ブームがあって、でもそれが終わって、円谷プロが厳しかったときに、今までの怪獣のスーツを全部引っ張り出して、怪獣が、ただ戦うだけの『ウルトラファイト』って作品があるんですよ。蕨野さんは知らないでしょう。

蕨野 はい、世代的にも知らないですが、タイトルは耳にしたことがあります。


河崎 とにかくそれがね、もうめっちゃめちゃなんです。もうカオスっていうか、抜群におかしいわけです。普通の特撮みたいに怪獣が出てきて、セット壊して戦って終わりという、段取り通りのものじゃなくて、プロレスに近いんだけど、ハプニング性もあってね、全く先が読めない(笑)。すごい低予算でね。それも言ってみたら「怪獣天国」。そういうのを、今回は、なんとか実現させたいって話なんです。

――『怪獣天国』は、怪獣は10体くらい出るそうですね。

蕨野 すごいですね。そんなたくさん。驚きです。


河崎 出ます。フィギュアメーカーのメディコムトイの怪獣とか、昭和のバラエティ番組に出てた、幻の怪獣って言われてる「テラインコグニータ」とかね。あと俺の映画をたくさん撮った愛知の幸田町、そこに今までの怪獣をたくさん集めてる場所があって、その怪獣たちも一挙に使おうという。

蕨野 幸田町は僕も行きました。大地真央さんのドラマ『最高のオバハン 中島ハルコ』の撮影で。人は親切だし、食べ物はうまいし、最高ですよね。あそこに怪獣がいるんですか。

――今まで多くの怪獣と戦ってこられた蕨野さんとしては、怪獣が10体以上出るということで、思われるところはありますか。


蕨野 やっぱり、先ほどもお話したんですけど、怪獣にストーリーを与えると、すごく話が広がるんですよね、出てきたから倒すっていうものではなくて。だから10体それぞれのキャラクターなども楽しみです。

『怪獣天国』に登場するラスボス怪獣・ビッグモンのデザイン画。


――今回の役柄というのはお聞きになられて。

蕨野 はい、シングルファーザーという。そこだけ聞いています。

河崎 中古レコード屋の店主って役なんです。で、昭和歌謡のレコードがたくさん出てくる。今、昭和歌謡ってブームでしょう。

蕨野 はい。そこも面白そうですよね。今、自宅にはレコードは1枚だけあって、『ブレーザー』の曲を作られたテクノボーイズさんの作品で、家宝です。レコードに関しては、自分の世代だとあまり縁がないんですけども、知らないだけに楽しみです。


河崎 そこもね、超面白いんで。この超貴重なレコードが何万円だとか、そういった業界のマニアックなネタも入れるので、相当楽しいと思いますよ、うん。


蕨野 レコード店の店主。シングルファーザー。これだけが今、頭の中にあるんですけど、どう広がっていくのかなと。いちばん気になるところではありますよね。『ブレーザー』でも父親役で、相当にこだわったところでもあるし、現実に子供を1人育てるって簡単なことではないのは身内を見て知っていますし。ちなみに何歳ぐらいの設定ですか?

河崎 小2ぐらいです。サンタクロースを信じてるぐらいの子供と父親の家に、人間大の怪獣がやってくるという話なんです。『快獣ブースカ』みたいな話だし、『ドラえもん』のようでもある。

蕨野 『ドラえもん』は、僕は大山のぶ代さん世代で。ああいう世界の中での役柄も楽しみですね。

河崎 ちなみに蕨野さんは、サンタクロースって、どう思っていましたか?

蕨野 僕はそもそも信じてなかったですね。父親は大工の棟梁なんで。そういった夢とか憧れみたいなものは縁が薄いほうでした。いや、プレゼントはもらいますが、サンタがどうこうという意識はなくて。でも、豆まきはするんです。3人兄弟なんですけど、鬼の面を被った父親に、全力で日頃の思いをぶっつけて(笑)。

河崎 学校では回りにサンタクロースが好きな子も多かったでしょう?

蕨野 もちろん、そういう人はそれでいいよって。自分は自分。なにかにつけ、同調圧力みたいなものに敏感なほうだったんですよ。教師だろうが誰だろうが、間違ってる人は間違ってると思っていましたし、学校ってクラスに30人とか40人いたら、1人が違うこと言うと変な空気になるじゃないですか。それはわかってるので、人や回りに合わせるっていうことはするんですけど、自分が他人とは、かなり違った性質ではないかって、かなり早くから気付いていて。内面ではそういったことに過剰なほど反応していたんです。


河崎 わかりますよ。俺もだからね。昔からぜんぜん、人と違うこと考えてるんですよ。頭のおかしいことばっかり(笑)。でも、同じように、やっぱり同調圧力を意識して、表に出さなかったよね。だから、一時期は、ものすごく暗くてね。信じられないって言われるんだけど、中学の頃とか、ものすごく暗かったですよね。でも、だんだんやっぱり、自分が思ってることを、表に出すようになっていくんですよ。特に監督になってからはね。だってほら、映画監督ってみんな、大体頭おかしいからさ。


蕨野 ハハハ、監督が大体? そうでしょうかねえ?


――その言い方は否定していませんね。

河崎 ハハハ、出る杭は打たれるけど、出過ぎた杭は打たれないんです。
俺なんかもう出過ぎちゃったからさ、もう誰も何も言ってくれないし、自分でバカ映画の巨匠って言っちゃってる。そしたらもう、楽しさしかないよね。俳優もそうでしょう。ウルトラマンの主役をやったら、永久にウルトラマンって言われる。そこは受け入れるしかない。

蕨野 はい。ヒーローと言われるものの宿命と言いますか。でも、それを背負って重荷になってるわけでもないですね。ずっと覚えてていただけるし、すごく分厚いジャンバーをいただいて着てるような感覚です。

河崎 でもまあ、これからでしょ、これから。


蕨野 いえ、もちろん先はわかりませんが、自分にできることは限られてるので。もちろんジャンパーを脱ぎたいとも思わないですし、ありがたいことです。


――本当に今日は、面白いお話をたくさんありがとうございます。最後に蕨野さんから『怪獣天国』への意気込みを伺えますか。

蕨野 どういった撮影現場でどういった雰囲気になるかわかりませんが、やはりものづくりなので、キャスト、スタッフ、やはり全員で一丸となって、この作品を作り上げていきたいなと。みんなのベクトルが一致してこそ面白くなると思うので。

過去、特撮作品をやらせていただきましたけど、自分たちが真剣に、ギリギリの限界を超えるか超えないかを突き詰めていった結果、お客様に刺さることが多かった気がしています。

個人的な意見ではありますが、この『怪獣天国』も一生懸命取り組んで、見る方に何かしら伝わる作品になればいいなと考えています。


蕨野友也 わらびの・ともや
1987年、大阪府出身、宮崎県育ち。『嫌われ松子の一生』『ごくせん 第3シリーズ』などのドラマや映画に出演後、『仮面ライダードライブ』(2014年)の敵幹部ハート役、『ウルトラマンブレーザー』(2023年)の主演・ヒルマ・ゲント役で特撮ファンを始め幅広い視聴者に支持を受ける。大地真央主演『最高のオバハン 中島ハルコ』では若杉役を好演。みやこんじょ大使、健康増進アンバサダーなどの活動も行う。

河崎実 かわさき・みのる 
1958年、東京都出身。映画監督。『地球防衛少女イコちゃん』(87年)で商業作品デビュー。以後、『いかレスラー』(04年)、『日本以外全部沈没』(06年)、『突撃!隣のUFO』(23年)など精力的に発表。一貫して特撮コメディ作品を作り続ける「バカ映画の巨匠」。

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