
腕時計は時刻を知るだけの道具ではない。靴やネクタイと同じく装飾品であり、自らの趣味とセンスをアピールするための格好のアイテムだ。だから、ビジネススーツを着用するように腕時計を身に着けよう。そして選ぶなら、分別のある大人にふさわしい趣味のよいモノを……。そんな時計選びをお手伝い。
文/モノ・マガジン編集部


世界中にクロノグラフは数あれど、もっとも有名なモデルといえばオメガ「スピードマスター」がその筆頭に挙げられるだろう。
1957年に初代モデル「Ref.CK2915」が誕生するや、たちまち米空軍パイロットたちの人気となり、競って着用されるようになる。やがて、1965年には「Ref.ST105.003」をNASAが正式採用。すべての有人飛行計画に使われることになった。
だが、そもそもスピードマスターは宇宙飛行のために開発された時計ではない。それがなぜNASAの目にとまったのか? 第一は重力のない宇宙空間でも、ゼンマイを巻けば駆動する手巻き式であったこと。そして何より、「シーマスター」譲りの信頼性をNASAが評価したからに他ならない。ケース内部を水や塵、湿気から防御する「ナイアス耐高圧リュウズ」、ケースの気密性を守り、湿度変化や腐食に強い「Oリング」、そして強化ガラスとスチールリングを一体化させ、強い水圧が掛かっても変形しない風防ガラスの採用。
この3つのシーリング構造を継承したことにより、スピードマスターがほかのクロノグラフとは一線を画す存在になりえたと言っても過言ではない。事実、スピードマスターはアポロ計画を始めとする宇宙空間での100回を超えるミッションに参画し、つねに正確な時を刻み続けたのである。
このたびリリースされた「スピードマスター パイロット」は、その伝統を受け継ぎながら、マスター クロノメーター認定の自動巻きムーブメントを搭載した最新作だ。もしクロノグラフを探しているのなら、これを選んでまず間違いはない。

オメガ
スピードマスター パイロット
価格146万3000円 問オメガ ☎0570-000087
初代スピードマスターから着想を得て誕生した最新作。光の反射を防ぐブラッシュ仕上げのケースとマット仕上げのアルミリングを備えたベゼルを採用し、タキメータースケールには“ドット・オーバー90”(90の斜め上にドット)や“ドット・ダイアゴナル・トゥ70”(70の斜め下にドット)を配すなど、ファーストモデルの伝統を受け継いだ仕上がりになっている。マスタークロノメーター認定自動巻き/パワーリザーブ約60時間/アルミベゼル付きステンレススチール・ケース&ブレスレット/100m防水/ケース径40.85㎜

中央がオパリン仕上げのふたつのサブダイアルを文字盤にレイアウト。3時位置は航空機の燃料消費率の表示計から着想を得た60分計と12時間積算、9時位置は目標照準表示から着想を得たスモールセコンドだ。付け替え用NATOストラップと取り外し棒が付いた特製トラベルポーチも付属。
1957年
初代スピードマスター

ブロードアロー型の時針はファーストモデルを特徴づけるデザインのひとつ。シーマスターと同じ時針であることからも、もともとスピードマスターはシーマスターファミリーにカテゴライズされていたことが分かる。搭載する手巻きムーブメントは、当時クロノグラフとして最小の直径27㎜だった。