

東映が制作した特撮テレビドラマ『宇宙刑事シャイダー』(1984年)の放送40周年、そして新価格Blu-rayソフト(全3巻)の発売を記念したトークイベントが2024年9月29日、東京・池袋CLUB Mixaにて開催された。
『宇宙刑事シャイダー』とは、『宇宙刑事ギャバン』(1982年)、『宇宙刑事シャリバン』(1983年)に続く「宇宙刑事シリーズ」第3弾。全暗黒銀河の支配者を名乗る大帝王クビライ(声:飯塚昭三)が君臨する宇宙規模の犯罪組織「不思議界フーマ」の侵略から地球を守るため、銀河連邦警察から派遣された宇宙刑事シャイダー=沢村大(演:円谷浩)とアニー(演:森永奈緒美)の活躍が描かれる。
沢村大は、コンバットスーツをわずか1ミリ秒(0.001秒)で「焼結」し、宇宙刑事シャイダーとなる。シャイダーはビデオスクリーン照準で百発百中のビデオビームガンや、レーザーブレードから繰り出す必殺技・シャイダーブルーフラッシュで不思議獣を打ち倒す。巨大なフーマ戦艦には、2つの形態(シューティングフォーメーション、バトルフォーメーション)に変形する超次元戦闘母艦バビロス号が対抗する。
ステージには、『宇宙刑事シャイダー』および「宇宙刑事シリーズ」のメインキャストとスタッフが登場し、40年前にすべての関係者が全精力を注いで作り上げた特撮アクションヒーローの、今もなお鮮烈な思い出を語り合った。
取材・文/秋田英夫
●スタッフ・キャストが『シャイダー』の思い出をふりかえる
MCを務めるのは、『宇宙刑事シャイダー』第27話「デスマッチの魔島」にギルダー役でゲスト出演した俳優ウィリー・ドーシーさんの実子、副島淳さん。副島さんの呼び込みにより、シャイダーのアクション用スーツアクター・柴原孝典さんと、小道具・装飾スタッフの國米修市さんが登場した。


柴原さんはシャイダーの凄絶ともいえるスタント・アクションをふりかえって「マスクからの視界はよくなかったが、高いところからジャンプするときはそっちのほうが怖くない。マスクを着けていなかったら、もっと怖かったでしょうね」と、シャイダー・スーツを着てアクションをしている際の心境を打ち明けた。國米さんはアニーのビームガン(木製)やクビライを象ったペンダントといった当時の貴重な小道具類を持参し、つめかけたファンを感激させた。


激しいアクションがつきものだという特撮ヒーローの過酷な撮影現場で、キャストもスタッフもみな若い力を燃やして頑張った。思い出話に上るのは、惜しくも2001年に物故した沢村大役・円谷浩さんのこと。柴原さんは「円谷さんとは同年代で、すぐ仲良くなりました。アクションの経験がなかったのに、撮影の合間にアクション部のみんなと一緒に一生懸命練習していたのを思い出します。転がったり、倒れたりする撮影でも、嫌な顔をせず頑張っていました」と語り、國米さんも「ロケの合間に、トランポリンを踏んでジャンプする練習をしていた大ちゃん(円谷さん)の姿が印象的でした。後半になると、ジャンプのシーンは吹き替えではなく、ぜんぶ自分でやるようになっていた」と、努力と熱意でアクションの経験値を高めた円谷さんの人柄をふりかえった。

ここで、『宇宙刑事シャリバン』伊賀電を演じた渡洋史さんがステージに登場し、『宇宙刑事シャイダー』でプロデューサー補(第24話より)を務めた日笠淳さん(現:東映テレビ・プロダクション代表取締役)から寄せられたコメントを読み上げた。当時、新人プロデューサーとして『星雲仮面マシンマン』(1984年)についた日笠さんは、続いて『宇宙刑事シャイダー』を担当。チーフプロデューサー吉川進さんを補佐した。コメントでは、仮面ライダーでもスーパー戦隊でもない、斬新なヒーローを創造しようと意欲を燃やしたクリエイター諸氏の功績と、『宇宙刑事ギャバン』『宇宙刑事シャリバン』『宇宙刑事シャイダー』と、各作品それぞれに違った個性を与え、常に創意工夫を重ねてクオリティの高い作品を生み出した経緯が詳しく語られた。

続いて、宇宙刑事シリーズのキャスト陣が登場。『宇宙刑事ギャバン』からは、ホラーガールなどを演じた長門美雪さん、星野月子役の立花愛子さん、『宇宙刑事シャリバン』からは宇宙刑事シャリバン=伊賀電役の渡洋史さん、リリィ役の降矢由美子さん、そして『宇宙刑事シャイダー』から、アニー役の森永奈緒美さん、ギャル1役の名和けいこさん、ギャル2(二代目)役の大石麻衣さん、ギャル3役の川島芳美さん、ギャル4役の小島憲子さん、ギャル5役の直井理奈さん、そしてシリーズ3作すべてにレギュラー出演した大山小次郎役の鈴木正幸さん、マリーン役の名代杏子さんが現れ、ファンからの大きな歓声と拍手が巻き起こった。





円谷浩さんとのフレッシュなコンビで活躍した森永さんは「ミニスカートだったので脚にサポーターを着けることができず、いつもヒザが傷だらけでした」と苦笑いとともに、当時の過酷な撮影現場をふりかえった。もっとも怖かったアクション・スタントの思い出として、森永さんは「いちばん怖かったのは、劇場版第1作でのターザン(ロープ渡り)でした。通常は下が海だったりするのですが、このときはアスファルトだったので、落ちたら危ないなって……」と、あまりにもハードなスタントをこなした日々について語った。

名代さんは「いつもコム長官と一緒に、宇宙船の中(セット)での収録が多かった」と回想。『宇宙刑事ギャバン』の後半では、母の病気見舞いのためバード星に帰ったミミーに代わり、ギャバンのパートナーとして地球に滞在したこともあった。鈴木さんは「健ちゃん(大葉さん)の、鳥のような身軽さには驚かされました。渡くんは当時19歳で、キラキラした輝きを放っていました。(円谷)浩はすごく勉強熱心。撮影の合間でも身体を動かし、アクションの練習をしていた。3人の主役の中でいちばんマジメでしたね」と、それぞれ違った魅力を放つ3人の宇宙刑事に思いをはせた。

名和さんはギャル軍団のリーダー格として、ヘスラー指揮官の補佐役をも務めた。大石さんは加納綾さんに代わって第10話からギャル2を演じたほか、『シャリバン』ではイガクリスタルを守る奥伊賀島の少女のひとりとして活躍した。『電撃戦隊チェンジマン』(1985年)でチェンジフェニックス=翼麻衣役に決まったため『シャイダー』は第35話までの登場となり、その後は矢島有美子さんがギャル2を引き継いだ。川島さんは、今回の主催を務めたイベント会社「プランチャイム」の代表でもある。
当時の思い出を訊かれた名和さんは「最初は『くの一・五人衆』だったんですけど、途中から『ギャル軍団』に名前が変わったんです。私だけ年齢が上なので、ギャルじゃないじゃん! と言われるかもしれないと思い、ショックでしたよ。でもみんなの若いエネルギーをもらって、ついていきました」と今も当時と変わりなく麗しい笑みを浮かべつつ、思い出を語った。また直井さんは「ギャル軍団はチームワークが良くて、芳美が『ギャル、昼!』って言えば、私が(昼食に)ついていく感じでした。そのころから芳美は仕切り屋でしたね」と、ギャル軍団の今も変わらぬ仲の良さ、絆の深さを語った。

●『宇宙刑事シャイダー』アクションショーがファンを魅了
トークに続いて、不思議獣パヤパヤを名乗る「パパイヤ鈴木」率いるフーマ軍団が乱入。会場の平和を守るため、伊賀電とアニー、そして宇宙刑事シャイダーがかけつけるというスペシャルアクションショーが行われ、客席を大いに沸かせた。不思議獣パヤパヤに指令を与える「ヘスラー指揮官」の声を久保和彦さんが久々に務めたことや、シャイダーのスーツアクターを『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE』(2012年/ギャバンスーツアクター)や『仮面ライダーセイバー』(2020年/仮面ライダーセイバースーツアクター)などで知られる浅井宏輔さんが演じていることも、特筆事項である。





伊賀電はスピーディなポーズを決めて、わずか1ミリ秒での「赤射蒸着」を試みたが、不思議時空の中では赤射ができず、ピンチに陥った。




シャイダーを援護するためにやってきたのは、頼もしい相棒アニー。得意のビームガンで敵を蹴散らすアニーの活躍は、シャイダーに反撃のチャンスをもたらした。



必殺技・シャイダーブルーフラッシュを決め、勝利するシャイダー。


戦いを終えた伊賀電(渡さん)は客席のファンに向かって「みんなの40年の思いがあったからこそ、俺たちは勝つことができた。もしも負けそうなとき、悲しいことがあったときは、俺たち宇宙刑事を応援していたころの自分を思い返してほしい」と熱いメッセージを届け、アクションショーをしめくくった。
最後に、『宇宙刑事シャイダー』をはじめ、数々の特撮ヒーロー作品、アニメ作品の主題歌を歌うシンガー・串田アキラさんからのスペシャルメッセージ(音声)が流された。串田さんは「こんどの宇宙刑事は『青いよ』と、コロムビアのディレクターから教えてもらったり、作曲の渡辺宙明先生とアレンジについて電話で話したり、いろんな思い出があります。あのとき、宇宙刑事は『未来』だなって思ったこと、忘れません!と、当時を回想。その言葉からは、ヒーローソングを歌っているときと同じく燃え上がるような生命力と、未来に向かって進む覇気のようなものが感じられた。




最後は出演者全員で『宇宙刑事シャイダー』主題歌を、つめかけたファンと一緒に熱唱した。

●Blu-ray発売情報
『宇宙刑事シャイダー』Blu-ray BOX1・BOX2・BOX3(完)は東映ビデオより、お求めになりやすい廉価版となって発売中。
価格は各巻1万2980円(税込)。
BOX1のDISC3には映像特典として、
キャスト座談会「35年目の同窓会‐わが青春のシャイダー」を収録。
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秋田英夫
あきた・ひでお フリーライター。『宇宙刑事大全』『宇宙刑事シリーズ公式読本METALLIC BIBLE』『上原正三シナリオ選集』など特撮書籍・ムックの執筆・編集に携わる。『宇宙刑事シャイダー』放送当時はオンエアを毎週ビデオに録画し、次の放送日が来るまで何度も再生して頭に叩き込むという、不思議界フーマの教育作戦のような生活を送っていました……。