仰天アイテム続々!日本一トンがった鋳造メーカー・キャステムの
”日本の新・ものづくり” #1

”日本の新・ものづくり” #1

手の指先サイズの「ミニチュアツール」に漫画「キン肉マン」ロビンマスクの等身大仮面など、金属を自由な形かつ超微細加工もイケる高い鋳造技術をベースに、完全に枠をとっぱらったユニークなアイテムを続々リリース。日本一トンがった鋳造メーカー・キャステムに垣間見る、素晴らしき日本の新・ものづくり。その極意哲学を東京・日本橋にあるコンセプトショップ「meta mate(メタマテ)」の金属雑貨コンシェルジュ・長瀬友行さんにうかがった。『monoマガジン』3・16号でその一部を濃縮紹介しているが、取材時の話があまりにも面白かったかったので、ここでは全5回にわたり、長瀬さんへのインタビュー全容を掲載する。今後、日本が向かうべき新しいものづくりのあり方とは?

”日本の新・ものづくり” #1

いい意味でものづくりへの敷居を低く

mono:自由すぎるものづくりはいつ頃からスタートしたのでしょうか?
長瀬:仕事自体はお客さまから図面をいただいて部品を製造するという、いわゆる普通の製造業です。ただ、キャステムの社長・戸田拓夫は紙飛行機の屋内滞空時間の世界記録保持者という顔を持っていて、社内にも紙飛行機を通じてものづくりの楽しさを伝えるメセナ事業があるなど、少しユニークな会社でした。そんな中、2013年に新しい技術を開発する部署ができ、時を同じくして小さい3Dプリンタが導入されたのです。まだ使い方がよくわからない3Dプリンタに対し、「遊びでもいいから使え!」と戸田社長が号令を出しました。でもほとんど誰も使わない。僕は、その時経理の仕事をしていたのですが、本当に誰でも使っていいの? じゃあ僕が……と使わせていただきました。個人的な話ですが、業界団体で全日本製造業コマ大戦という喧嘩コマの大会があり、それに出場していたので、経理の仕事が終わった放課後、無料のCADソフトで勉強して、コマを作って回してみたいなことやっていたんです。そこから「あ、本当に自由に作っていいんだな」という雰囲気が出てきて、「それならこんなモノも作れる?」といった感じで社内に自由な空気が浸透していったわけなんですよ。

mono:経理担当者がものづくりですか?
長瀬:その動きが評価されたのか、経理に向いていないと思われたのか、すぐ新規事業部へ異動になったんですけどね(笑)。当時の社内では「会社の機械で勝手に遊びやがって」とか、「アイツら何しているんだ」というような空気も正直ありました。コマ大戦の優勝者の手をその場で型取りして後日、金属化して優勝者にトロフィーとして贈るという企画を製造担当に無理言って作ってもらったりもいましたね。普通ならそんなモノを作るだけで怒られそうですが、それを作ってしまうのがキャステムの面白いところです。作るだけではなくてその後、僕の手も”金属化”して広島東洋カープさんに売り込みに行ったんですよ。選手の手型を取りませんか? と。で、最終的にOKが出て、貯金箱タイプの選手の手型を作ることになったのですが、当社は広島の企業なもので、社員がめちゃめちゃモチベーション上がるわけなんですよ。それまで何に使われるかわからない細かい部品を作り続けてきた会社なのに、急にカープ選手の手型を作る。こういうのを作るのって面白いよね、と。そこから思いついたものを作っていこうという想いが強くなっていきました。2014年あたりからですかね、ものづくりに対する敷居がいい意味で低くなったのは。ちなみに、その時の手型が今、「メタマテ」にも置いてありますが、著名人の一部や全身を金属でリアル商品化してしまう「ヒストリーメーカー」の始まりです。

”日本の新・ものづくり” #1

枠を完全にとっぱらいたい

mono:そもそもどういう会社なのですか?
長瀬:去年の2月で50周年を迎えました。1970年創業です。もともと広島・福山市にあるマルト製菓というお菓子屋さんから分家した会社で、お菓子を作る機械も当時は内製で作っていたのです。そこにロストワックス製法(※)を使っている部署がありましたが、やがて時代の流れとともにお菓子を作る機械も外から買った方がいい、ということになり、ロストワックスの部署を切り分けする形で、キャステムが誕生しました。


”日本の新・ものづくり” #1
”日本の新・ものづくり” #1
”日本の新・ものづくり” #1

※ロストワックス製法:アメリカで確立された鋳造技術であるロストワックスにキャステム独自のノウハウを加え、形状、材質、強度が自由自在に表現でき、なおかつ高い寸法精度と美しい鋳感が得られる、業界屈指の品質を誇る金属鋳造技術。

mono:今の社風は現在の戸田拓夫社長が作ったものですか?
長瀬:間違いなくそうですね。20年以上前、他社がこぞって中国に工場を出していた時期にフィリピンに工場を作ったり、メタルインジェクションモールディングという新しい製造方法を導入したり。とにかく挑戦してきました。戸田社長は普段から「社是に挑戦と書いてある会社ほど挑戦していない」と言っていて、理屈やキレイな言葉を並べてやった気になるのはダメだ、と。「とにかくやれ」の精神。ウチの社是は「もう半歩」ですが、現状に満足するなということですね。とはいえ、いきなり何でもモノを作ってOK! と言われても、普通の組織、とくにに歴史あるチームにはめ込むと当然、不協和音が出てきます。例えば、入社したてのスタッフがこういうものを作りたいと提案しても、上司の許可を得てからとか、途中段階で消えてしまうことが多い。そこで、キャステムの場合はアイアンファクトリーという新事業部を設置し、そこで新しいものづくりを進めていくというカタチをとりました。この組織のユニークなところはスタッフの上がすぐ社長で、新しいことをするのにメンドクサイ手続きは不要です。思いついたから作ってみました、と先に作って後で報告してしまうようなチーム。アイアンファクトリーの根底には枠をどれだけとっぱらえるか、というのがあります。この部署から漫画「キン肉マン」のステンレス1/1サイズ・ロビンマスクなどが誕生し、ライセンス事業が立ち上がるまでになっていきます。中には樹脂製の商品もあり、金属という枠までとっぱらっちゃいましたね(笑)  #2 へ続く


”日本の新・ものづくり” #1

profile
「meta mate」
金属雑貨コンシェルジュ
長瀬友行さん
1980年岡山県生まれ。2011年キャステム入社。経理、新事業部アイアンファクトリー、広報を経て現職。「ネタ系商品もたくさんやっていますが、日本の技術力の魅力を伝えていきたいですね」。

meta mate誠品生活日本橋店
東京都中央区日本橋室町3-2-1 COREDO 室町テラス2F
TEL/03-6910-3530 営/10:00〜21:00※時短営業中(11:00〜19:00)定休日/元旦のみ https://www.metamate.jp

キャステム https://www.castem.co.jp

  • 80’sをこよなく愛するグラサン男。モノづくりやライフスタイルに強いこだわりを持つ人々の熱血応援サポーター。みなさんの熱いハートと想いを写真と文でほどよくゆるくお届けします!

関連記事一覧