実際に包丁を研いでみよう!
巣籠もり生活の新趣味に最適な「キミの知らない包丁研ぎの世界」シリーズ最終回はお待ちかね、包丁の研ぎ方についてご紹介。東京・浅草橋にある刃物・砥石・砥ぎの専門店「森平」代表の小黒章光さんに実践解説いただきます。動画も交えてご紹介しますので、最後まで必読です。
まずは研ぐ包丁と砥石、少々の水を用意し、まな板など安定した台の上に砥石を置く。今回は小黒さんが5年の歳月をかけて完成させたという鋼やステンレス包丁にも万能な森平オリジナルの人造砥石を使用。目の粗さによって500番から12000番まで6種類あるが、一般家庭で使う包丁を研ぐ場合は1000番が最適という。
砥石に水をかけ軽く濡らす。ちなみに、刃物の研ぎには水が必須だが、従来の人造砥石は水をその場で吸ってしまうため、研ぐ30分ほど前から水に浸しておくという下準備が必要だった。その点で、水を吸わない森平オリジナルの人造砥石は画期的な砥石なのだ。
研ぐ際の姿勢は砥石に対して真正面に立つのが鉄則。包丁に力が均等にかかることで、刃先と砥石の接着面の角度に集中することができるからだ。
砥石面に接地させた包丁の刃先を手前側から奥へ押し出し、続いて奥から手前側に引く作業は力を抜いて連続的に繰り返す。その際に砥石に対して包丁の角度は約45度、砥石に当てる刃先の角度は三徳包丁や牛刀等は約15度に固定するのがポイント。包丁を押し出すときには軽く力を入れるが、反対に包丁を引くときは力を入れないのがうまく研ぐコツだ。包丁を引く際に力を入れてしまうと、体にブレが生じやすくなることで、刃先の角度がぶれてしまい、均一な研ぎをキープするのができなくなるからだ。
刃先の長さから一度で全体を研ぐことはできないので、包丁の刃先を3等分ほどにブロック分けし、3回に分けて研いでいく。その際、研ぎを行う右手は砥石の真ん中に置き、体全体で浅くお辞儀をするような姿勢で行うのがポイント。1ブロックにつき、おおよそ20回以上は研いだ方がいいというが、具体的な研ぎ回数は包丁のコンディションや材質によって異なるという。
「あまり、目安の研ぎ回数というのは言うことができないのですよ。刃先に指を当てて軽い引っかかりを感じたらOK。バリ(かえり)と言って研いだ刃がめくれるように逆側に出てきたもので、両刃の場合はバリが出たら、反対面の研ぎに移ります」
これまでに数多の職人への指導、一般向けにはイベントでの実践を行ってきた研ぎの伝道師である小黒さんだが、いはく、職人の腕前になるのはさておき、家庭で使う包丁を研ぐ程度であれば比較的簡単に上達するという。
「みなさん、これまでやられたことがないから敷居が高く感じることもあるかもしれませんが、研ぎをするのは易しいですよ。大切なのはいい砥石を使うこと。毎日使う包丁であれば1週間に1回ぐらい、最低でも1ヶ月に1回は研いで使うと、包丁の切れ味が長持ちします。ただ、包丁を研いでいるうちに、自然と切れ味に敏感になっていくのですよ。だから、切れ味が鈍ったなと感じたら研ぐのが理想です。あとは、砥石を戸棚などにしまわずに必ずキッチンの片隅に置いておくこと。包丁のコンディションが気になった時にすぐ研げる環境にしておくことも大切です。野菜や肉、魚など、料理に使う食材はスパッと切った方がみずみずしく、美味しいものです。仕事柄、寿司屋さんなどに行くと板前さんが使っている包丁に目がいってしまうのですが、腕のいい料理人はいい包丁を使っていますからね。昔は包丁があれば仕事になるというように、その人が使っている包丁が履歴書代わりになる時代もありました。これは包丁に限りませんが、やはりいい仕事をするにはいい道具が必要なのです」
小黒章光さん
1933年(昭和8年)創業の「森平」の4代目。砥石への深い造詣と長年培った研ぎの技術でイベントでの実演販売、料理人をはじめプロ向けの講習会など、精力的に研ぎ技術の伝承を行っている。
SHOP DATA
森平
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